ヨネヤの話
6月19日
今朝も散歩をした。
遠目にカンダさんと会ったので、軽く会釈を交わした。
昼休みに昨日一緒に飲みに行ったヨネヤが今日も飲みに行かないかと誘ってきた。僕は別に構わないのだが、ヨネヤの嫁さんに悪いような気がする。
ヨネヤの嫁さんのチカコさんとは、高校で同じクラスになったことがあるのでなんとなく性格は知っていた。明るく屈託のない性格で、クラス委員を勤めた。クラスをまとめるのが上手かった。
ヨネヤとは会社に入ってから知り合ったのだが、彼が家で同僚の話をしたらチカコさんが僕のことを憶えていたようだった。高校の卒業アルバムまで見てしまったらしい。なんとなく気が合って、歳も同じなのでよく飲みに行くようになった。
別に飲みに行かなくてもいいんだけど、と言葉を濁すのでよくよく聞いてみるとチカコさんと喧嘩をしたらしい。結局また、飲みに行くことになった。
飲んでいたら、喧嘩の理由が分かった。
聞いてみると実に些細なことがきっかけで、靴下を裏返しにしたまま洗濯機に入れるなとか、別にいいじゃないかとかいうのが、そもそもの発端らしい。
駄目だと言われてつい反発してしまったが、あんなにちゃんと家事をしてくれるのに大人げない態度だったと反省している。裏を返せば仲の良い夫婦なのだなと思った。
ヨネヤは珍しく酔っ払い、店を出ると僕に向かって、チカコごめん。などと言っているのでそれなら本人に言うように勧めた。早速電話をして謝っていたので、そのまま帰るのかと思ったら、電話を切るなり僕の家に泊めてくれと言う。
なんだかよく分からないが、そのまま僕の家に連れて行った。
ヨネヤは、居間に入って窓際に居たサカエダさんを見ると、あれは誰だと言う。この前、友達が来た時一緒に来た人だと説明すると、ふうんという気のない返事が返ってきた。
それから生真面目に、どうもこんばんは、などと挨拶をしている。サカエダさんは気にした様子もなく、にこにこと頷いた。
ヨネヤは居間のソファで寝てしまったので、チカコさんに連絡を入れた。
今夜は家に泊めて明日にはちゃんと帰すからと言うと、ごめん、よろしくね。と言われた。
声が柔らかかったので、たぶんヨネヤ夫妻は仲直りできたのだろう。少し安心した。
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