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猫とリンの話
7月3日
朝、散歩に行こうと玄関の上がり框に腰掛けて靴を履いていたら、リンがあっという間に膝の上へ登ってきて妙に嬉しそうな顔でそのまま立っている。
安定が悪いので体が揺れるが、バランスを取りながらしばらくそのまま動こうとしない。何か訴えたいことでもあるのだろうか。
なんだい? と声に出し聞いてはみたものの、何を伝えようとしているのかさっぱり分からない。仕方がないので、そのままの体勢でリンの首輪に散歩用のリードをつけた。
リンが玄関戸の方を見るのでつられてそちらを見ると、玄関戸の磨りガラスに座っている猫らしい影が見えた。
どうやら玄関先に何かいると訴えていたようだった。
リンを下ろして玄関戸を開くと、驚いたような顔で猫が文字通り飛び上がった。玄関の中で人の気配がすれば大抵の猫は気がつくと思うのだが、寝ぼけていたのかも知れない。
そう思って見送ると、猫の尻尾が異様に長いのに気がついた。
尾の長い猫はよく見かけるが、その長い尾にもう一本長い尾を付け加えたくらいある。目の錯覚か、それとも何かそういう風に見える形状のものが結びつけられてでもいるのだろうかと思ったが、確かめる間もなく猫はそのまま脇の庭の木戸を潜って行ってしまった。
リンは、猫が座っていた辺りの匂いを嗅いでいる。どこの猫だろうと呟くと、リンは僕の顔を見上げて生真面目そうな顔をしていた。
昼休みにカネダさんがまた文庫本を持ってきてくれた。夜、その本を読んでいると妹から電話が掛かってきた。明日は午前九時くらいにこちらに来るという連絡だった。
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