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武田若千
2020年8月18日 01:39
家の近所に、大きなガレージのある家がある。 夜、その前を通った時、ガレージのシャッターが半分くらい開いているのが見えた。 風のせいなのか、シャッターが、がしゃりと音を立てる。 音につられてそちらに目を向ける。月明かりで見えるガレージの中は空のようだ。 半分開いたシャッターの下から、手が見えた。 手は、シャッターの下端をつかんでいる。 もし人がいるとしたら、どうやってそこに取り付いてい
2020年8月17日 02:45
友達のもちだやいこちゃんは、牛をたくさん飼っているお家の子です。 畑がたくさんある中に、牛がいる広い場所があって、そこは太い針金で柵がしてあります。 針金には牛が逃げないように、ちょっぴり電気を流しているんだよ。そう言って、やいこちゃんは、人差し指と親指の先で針金をつまんで見せました。やいこちゃんの手が、ぴくんと跳ねます。 真似してつまんでみると、指先から胸のあたりまで、ずくん、と鈍い衝撃
2020年8月17日 02:08
オートロックもない古いマンションに住んでいます。 古いけれど造りはしっかりとしていて、近隣の音はあまり気になりませんし、住み込みの管理人さんがきちんとした方なので、おかしなセールスや勧誘などはほとんど訪れません。ゴミ出しの管理や共用部の掃除も行き届いています。屋上はありますが、入り口は厳重に施錠されていて、外部から来た人はもちろん住人も屋上へ出ることはできません。 先日のことです。インターフ
2020年8月17日 02:03
小さいわりに、深い森をたたえる山の頂上にわずかながら開けた場所がありまして、石塔が立っております。 頂上までは、ひとりで参りました。細く踏み固められた道を隠すように草が生い茂っているので、少々の心許なさを覚えましたが、なんとかここまで参りました。 塔と呼ぶにはあまり塔らしくもないのですが、他になんと呼べばよいのでしょう。 塔の一番上には仏像でもあったのだろうとうかがわせる、蓮弁のような台が
2020年8月17日 01:56
仲間と花見をした帰り道。 家までの道のりを少し遠回りすると、川沿いに桜並木がある。等間隔に植えられた桜は年々立派に枝葉を伸ばし、毎年見事な花を咲かせるのだ。 酔い覚ましにもなるしと、ひとり夜桜を眺めながら歩いていた。 十本ほど先に闇に際立って美しく、なまめかしいほどに白い花をつけた桜があった。見れば見るほど美しく、暗い空に映えている。 だんだんと近づいて行くと、手前の桜に比べて、一枚一枚