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コンサルティング契約の打ち切りかた【こちらが申し出る際の文例/商用利用可能】

打ち切られる側の気持ちや実体験もふまえて、正しい契約の打ち切り方を解説します。

継続的なお取引を、自社の事情でストップせざるを得ない状況になることがあります。たとえば自社の経営について、コンサルティングを依頼していたり、アドバイザー契約を結んでいたが、自社側の都合(経費削減など)で、そのコンサルティング契約を打ち切らせていただきたい(解除したい)場合などです。

契約の打ち切りを申し出るのは、心苦しいものであると同時に、法的には契約を期間中に終了させてしまうことなので、本来は一方的にすることはできません。契約は守るのが原則であり、打ち切り(解約)には相手方の合意が必要となります。

厳密にいえば相手にも合意しない(契約の期間が残っていることを主張する)選択肢があるのであり、下手をするともめてしまうかもしれません。丁寧に対応しなければリスクを大きくしてしまいます。


理想は直接の面談

原則として契約の「打ち切り」は、当事者同士が直接会って、面談によってお伝えするのが礼儀だと思います。打ち切られる側としては、メール等で通知されるだけですと、なんだか簡単に済まされたような印象が強くなります。

よって、理想としてはアポイントをお願いして面談することになります。場所も、こちらが相手方の事務所などに出向くことを前提にしたほうがよいでしょう。また、すくなくとも一週間以上は余裕をもって日程調整することで、相手も用件をなんとなく察しつつ心の準備もできます。突然おしかけて一方的に通告したような雰囲気にならないように配慮したいところです。

打ち切られる側も、わざわざ出向いていただいたとなれば、悪い気はしません。また、事情を丁寧に説明していただくと、話を受け入れやすくなります。また、面談当日に解約するのではなく、2カ月程度の猶予期間をもたせるのも重要です。このため、打ち切りを決めたら早めに動くことが必要になってきます。

想定シナリオとしては、たとえば以下のような話の流れとなります。面談前にイメージしておくとよいと思います。

解約ご説明の流れ
・長きにわたりご助言をいただき、ご尽力をいただいてきたことは感謝している
・このところの社会情勢の影響下で、弊社としてもできる限りの対応をしているが、残念ながらいまだ先行きが不透明である
・ついては、誠に遺憾ながら契約の方を○月(2カ月程度先)までにて、一応の終了とさせていただきたい
・もちろん、その他の面では今後ともよろしくお付き合いを願いたい


面談ができない場合の文例

面談によるのがベストなのですが、契約の内容などによっては、単純にそこまでの対応ができないとか、昨今の特殊事情を考えると直接会うことがリスクになるという面もあります。そこで、せめて文書で通知する場合も出てくるかもしれません。丁寧に、かつミスのない対応を目指したいものです。

文書の送り方も、郵送が望ましいですが、やむを得ずメールで伝えることになる場合でも、できれば文書(添付ファイル)を添えたいところです。

文例としては以下のようになります。
参考になさってください。

                       令和○年○月○日
株式会社○○○○
代表取締役
○○○○様
                      株式会社○○○○
                     代表取締役○○○○

           コンサルティング契約の件

拝啓 残暑の候、貴社におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃は大変お世話になっております。

さて、弊社とのコンサルティング契約(○○年○○月○○日締結)において、○○様には貴重なご助言の数々を頂戴してまいりましたこと、感謝しております。これまで大変ご尽力をいただいてきましたところ、誠に申し上げにくいのですが、この○○月をもちまして同契約をご解約させていただきたくお願い申し上げます。

この度の世界的な感染症の流行が影響し、弊社としましても大変厳しい状況にさらされることとなり、恥ずかしながら今もって見通しがたっているとはいいきれません。もちろん弊社の努力不足には違いなく、手前どもの都合ばかりで恐縮なのですが、通常ではありえないこのようなお願いを申し上げる次第です。勝手ながら、何卒ご容赦を賜りましてご承諾いただけますと助かります。

末筆ではございますが、貴社のご発展と皆さまのご健勝を心よりお祈り申し上げます。
                               敬具


解約合意書を作成する

口頭やこちらからの文書で、話はスムーズにいったとしても、そこで終わりでいいのでしょうか? ただ伝えただけですと、相手が特にYesともNoともいわなかったときに、果たして契約が無事に解除できたのかどうかという心配が残ります。

もちろん、そこまでしなくても解決する場合がほとんどだとは思います。しかし、後日の無用なトラブルを避ける意味では、双方合意のもとで契約を終了したことを、確認できるような証拠が残った方が安心です。そこで必要に応じて、解約合意書を作成しましょう。

記載内容はごく簡単なものでも構いません。当事者の権利関係と、契約の終了についての合意があったと確認できることが、メインの目的です。


解約合意書のひな型


             解約合意書

(コンサルタント)○○○○(以下、「甲」といいます。)と、(弊社)○○○○株式会社(以下、「乙」といいます。)とは、甲乙間の令和○○年○○月○○日付コンサルティング契約(以下、「原契約」といいます。)の解約について、本日、下記の通り合意しました(以下、「解約合意」といいます。)。

1. 甲及び乙は、双方の合意により、令和○○年○○月○○日(以下、「解約日」といいます。)をもって原契約を解約し、将来に向かい終了させるものとします。
2. 解約日以後も、原契約所定の秘密保持義務は存続します。甲は、乙の営業に関して提供を受けた秘密及びノウハウ等を、第三者に開示してはならないものとします。
3.甲は、本書による解約合意の存在及び内容を、第三者に開示しないものとします。
以上、解約合意を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名して互いに1通を保管します。

令和○○年○○月○○日



約定解除との違いに注意しましょう

以上が、契約の打ち切りの伝え方となります。注意点としては、今回のケースは契約であらかじめ規定してある場合の「約定解除」とは明確に違いますので、これとは区別してください。

約定解除とは、契約に基づいて解除することですので、契約書に解約方法が定めてあり、それに従って解約できる場合には、自社からの一方的な意思表示のみで解約が可能です。

いずれにしても適切な方法で、スムーズに対応したいですね。


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