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電子契約に印紙はいるのか?

電子契約に印紙は不要です。このことは電子契約を導入する際の、メリットとして重視されるポイントのひとつです。なぜ電子契約に印紙が不要なのかを簡単に整理しておきます。「クラウドサイン」などをはじめとする電子契約導入の決め手になれば幸いです。


そもそも契約書に印紙を貼るのはなぜか?

契約書に印紙(収入印紙)を貼るのは、貼ることによって(正確には消印もすることで)印紙税という税金をおさめることになっているからです。つまり印紙税法によって「課税文書」というものが決められており、その納税手段として印紙を貼るのです。

税金ですから納税者がいるわけですが、印紙税の納税義務者は、契約書などの「課税文書」の「作成者」です(印紙税法第3条)。作成した人が印紙を貼ってくださいね、ということです。


契約書の作成者とは誰のことか

では「作成者」とは誰でしょうか? 契約書の場合は当事者双方が記名押印するのを「作成」と位置づけるため、すなわち「共同して作成する課税文書」ということになります。

よって、理論上は「双方」に印紙貼付けの義務が生じることになります。よく、契約書の印紙を売主と買主のどちらが負担すべきなのか、という疑問を持たれるケースがありますが、法的には「それぞれ」という結論になります。

仮に、「課税文書」である契約書に印紙を貼り忘れたり、貼っても消印を忘れると過怠税(ペナルティ)の対象となってしまいます。




意外に重い印紙の負担

電子契約のメリットとして、こうした印紙税が不要であることが挙げられます。たとえば「基本契約」などは原則として1通あたり4,000円の印紙がかかります。たかが4,000円といえども、締結のたびにかかるわけですから、100件、200件、と積み重なれば馬鹿にできない金額です。

また、一律の金額ならまだしも、印紙税法はかなり複雑なルールになっており、課税文書の種類だけで20種類もあります。「課税文書」という概念も重要で、契約書ではあっても課税されないとか、契約書というタイトルではないけれども課税される場合もあります。また、印紙の金額が、契約書の内容や記載金額によって異なることもあります。

こう複雑だと、新たに契約書を作成するたびに課税になるのかどうか(課税判断)や、いくらなのか(税額判断)という「迷い」が出るのですが、電子契約にするとこれらが無くなるので、心理的負担も軽くなるはずです。


そもそも電子契約とはなにか?

電子契約とは「電子ファイルで契約するしくみ」です。つまり媒体(手段)として、従来は「紙」であった契約書を「電子ファイル」におきかえたものです。「電子契約」のことをあえて電子契約「」とはいわないのは、前提として書面ではないからなのです。

そして印紙税法は、用紙等に記載することを課税文書の作成と定義づけています。

印紙税法基本通達第44条
 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。  


なぜ電子契約だと印紙が要らないのか?

「電子ファイル」は「データ」であり、そして、法律の定義からいうと、「紙」に記載するのでなければ印紙税法上の課税文書の「作成」にはあたらないため、印紙税の対象にならないといえます。ようするに電子契約は紙ではなく「データ」だから、課税文書の定義から外れてしまう、というわけです。

以上から、電子契約には印紙(印紙税の納付)が不要であるといえます。


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