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2020年 民法改正と新たな契約書のポイント【支払条項編】

民法改正をふまえた契約書のポイントについて網羅的な情報を知りたいですか? 本記事では民法改正の概要説明と、契約書のポイントを解説します。
これから契約書を作る方や、ミスが無いようにチェックしたい方は必見です。
 

2020年 民法改正と新たな契約書のポイント【支払条項編】
 

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士、竹永大です。

 

突然ですが質問です。

あなたはある業務を外部の業者に委託することにしました。その契約書に

「本契約が中途解約された場合、委託料の価格及び支払方法は、別途、当事者協議の上で確認し決定される。」

 

と書いてあったら、あなたならサインしますか? 

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答えは、間違いではないけれど、このままだとちょっとサインしにくい表現です。なぜそう言えるのか? 

支払に関する条文は売主にとっても、買主にとっても大事な部分です。民法改正の知識をもあわせて、判断できるようにしておきましょう。 

シンプルだけど油断できない支払条項
 

支払条項はほとんどすべてのビジネス契約書に登場します。例えば以下のような条文です。

 

(委託料及びその支払方法)第〇条 甲は乙に対し、本件業務の対価として、各個別契約で定めた委託料を当該個別契約で定めた方法で支払う。 

 

 シンプルなものが多いですが、支払義務があることを確認し、金額を定める条項であるため、油断せずきちんと目を光らせるべきです。

  

お金が入ってくる条項
 

支払条項はようするにお金が入ってくる(または出ていく)ことを表す条項です。まずは「金額」があっているか、「振込先」の指定を間違えていないか、表示された金額に「消費税」を含むのかどうか、「手数料」はどちらが負担するのかを正確に確認することが重要です。

・振込先は間違ってないか?

・税金は含まれるのか、別途かかるのか

・手数料負担はあるのか、どちらが負担するのか

・その他、なにかの費用負担が見落とされていないか

 

また、お金というのは入ってくる(または出ていく)「タイミング」も重要です。継続的な契約の場合、どの期間の売上をいつ請求すべきなのか、契約書を読み返して確認することがよくあります。その際に記載が不明確だと不便ですから、契約書から締め日や支払期日が確認できるかどうかもよくたしかめましょう。

 

仕事が途中になった場合、報酬はもらえなくて当然か?
 

ここまでは「契約書のチェック」というよりも、たんなる間違い探しに近い読み方でした。そこで、もう少し踏み込んで、支払に関連する民法改正のポイントもみておきましょう。

 

継続的な契約の中でよく問題となるケースに、途中で契約が終了してしまった場合の報酬という問題があります。ようするに仕事が途中になってしまった場合、報酬はもらえるのかどうか? という論点です。(頼まれた仕事の契約が中途で終了した場合の報酬請求権)

 

「どちらとも言えそう」なこの問題ですが、これまでの民法には、仕事が未完成のうちに契約が終了した場合に請負人が報酬を請求できるのかどうかについて、はっきりとは書いてありませんでした。(ただし判例では、割合的報酬請求権は認められていました。)

 

背景として、民法では「請負契約」の報酬は「仕事の完成」に対する対価とされています。それをあてはめれば、「仕事が完成していないならば報酬も請求できない」という結論になりそうです。

 

しかし、中断されてしまった仕事の報酬について、全く払わないとするのも無理が出てきます。途中までの仕事によってもある程度買主が得をしていることがあるからです。

 

通常、建設工事やシステム開発の途中で契約が中断したら、請負人側からはそれまでの負担を理由に報酬を「払ってくれ」と要求するのが普通でしょう。ただ法律上、発注したユーザ側は、請負契約の「未完成」を理由に「払いたくない」といえることになり、争いになります。

 

新民法で割合的報酬請求権が認められた
 

そこで新民法では「割合的な報酬請求権」が認められました(改正民法634条)。つまり法律上も、途中までの仕事の「部分」によって注文者にもメリットがある場合は、報酬を支払わないといけない、とされたわけです。理屈としては当然というか、筋は通っていますよね。

 

具体的には「請負が仕事の完成前に解除された場合(請負人の責に帰すべき事由による場合を含む)には、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分について注文者が利益を受けるときは、その部分の仕事の完成とみなし、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる」(民法第634条)とされました。

 

また、準委任契約の場合にも、委任が履行の中途で終了したとき(受任者の責に帰すべき事由による場合を含む)には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる(民法第648条)とされていますから、いわゆる業務委託契約全般に、この理屈があてはまってきます。

 

仕事の途中で契約解除となっても、請け負った側は応分の報酬がもらえることが、民法上明確になったといえます。

 

現実にうまくあてはまるのか?
 

ただし現実のビジネスにおいて、この場合の報酬の計算は複雑です。契約した仕事が完了前に中断することは、仕事のクオリティに満足ができない委託者(ユーザ)が怒って、途中で契約破棄を申し出るなど、なにかしらのトラブルが起きたからかもしれないからです。

 

つまり当事者間の関係は決して平穏ではないはずで、おそらく金額的な部分ではかなりも揉めてしまうと予想されます。新民法が、割合に応じた報酬を請求できると定めたとしても、どの範囲が新民法にいうところの「可分な部分」で、何が注文者の「利益」なのか、「割合」はどう評価すべきなのか、などはケースバイケースだからです。

 

だったら契約書はどうあるべきなのでしょうか?
 

こうした背景をあたまにいれながら、ここで冒頭の一文をもう一度見てみましょう。 

「本契約が中途解約された場合、委託料の価格及び支払方法は、別途、当事者協議の上で確認し決定される。」

契約が途中で終わりになっちゃった場合の報酬は、具体的な金額について「協議」をして決めようね、という意味のことが書いてありますよね。

でも契約書に「協議の上」とあったとしても、報酬をめぐり険悪になっていることも予想されます。そうなると協議ができればいいほうで、金額の確定は難航すると思われます。 

そこでやはり中途で契約が終了してしまった場合に、そもそも報酬が請求できるのかできないのか、できるとしたらいくら(どのように算出した金額を)請求できるのかを、あらかじめ契約書で明確化しておくべきです。

中途で契約が終了しても割合的報酬請求を主張できるという新民法が確認できたわけですから、一歩踏み込んで、その報酬の算定基準などをあらかじめ合意しておき、契約書に記載することが得策です。

(たとえば)「既に納入済みの部分についてはその報酬を請求できる」とか「報酬とは別に費用の負担をしている場合には、これを請求できる」と、はっきり書いておくということです。

 

割合的報酬請求をできなくする場合も規定が必要
 

ここまでは受託者、受注者の立場で考えてきましたが、逆に、委託者、注文者の立場からは最初からそのような中途で終了した場合の報酬請求が「できない」と規定することも、可能です。 

ただ、中途で終了した場合の報酬請求を否定する場合には、新民法のルールを変更することになりますから、契約書に「既に履行された部分といえども報酬を請求できない」のように、明確に規定する必要があります。

実際、仕事の内容に不満だったら途中で契約を解除するかもしれないから、そうできるように既履行部分の報酬などを無視して解除できるように規定するケースが出てくるかもしれません。解除する側にとって強いメリットがある規定になります。対する売主側としては、なんとしても削除したい条文になります。 

 

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