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利用規約の「変更」の記載方法は? GAFAの実例を比較してみた

利用規約の改定方法についてまとめます。利用規約はいつか変更するときのために、変更に関する条文を入れる必要があります。ところで規約に「変更する」と書いてあれば自由に変更できるのでしょうか? 利用規約の変更手続規定はどんな表現が適切なのでしょうか? 具体的事例として、GAFAの利用規約から「利用規約の変更」に関する条文だけを抜き出してみました。 

Googleの利用規約の変更に関する条文

Google は、次の場合に本規約およびサービス固有の追加規約を更新することがあります。(1)Google サービスの変更、または Google の業務上の変更(たとえば Google がサービス、機能、技術、価格、特典などを新しく追加、もしくは従来のものを削除した場合)を反映するため。(2)法律、規制、またはセキュリティ上の理由のため。(3)不正または危険な行為を防ぐため。

本規約またはサービス固有の追加規約に重大な変更を加える場合は、合理的な事前の通知を行い、ユーザーが大幅な変更について確認する機会を提供するものとします。ただし、(1)新サービスまたは新機能をリリースする場合、および(2)緊急時(進行中の不正行為を止める必要がある場合、法的要件に対応する必要がある場合など)は除きます。ユーザーは新しい規約に同意しない場合、自身のコンテンツを削除してサービスの利用を停止するものとします。また、ユーザーはGoogle アカウントを閉鎖することにより、いつでも Google との関係を終了させることもできます。

引用元:Google利用規約


Appleの利用規約の変更に関する条文

Appleは、その裁量により、随時本利用規約の一部を変更、修正、追加または削除する権利を有します。お客様の責任において本利用規約の変更に関する定期的なチェックを行ってください。変更後も引き続き本サイトを使用されたことにより、当該変更に関するお客様の同意があったものとみなします。お客様が本利用規約を遵守する限りにおいて、Appleは、お客様に、本サイトにアクセスし、本サイトを使用する個人的、非独占的、譲渡不可能かつ制限的な権利を付与します。

引用元:Appleウェブサイト利用規約


Facebookの利用規約の変更に関する条文

1.規約の改定
弊社は利用者やコミュニティによりよい製品を提供するために、サービス向上と新機能の開発に取り組み続けています。 それに伴い、随時本規約を改定して、弊社のサービスとその運用状況を正確に反映させることが必要となります。 弊社は、規定が適切でなくなった場合、または不備がある場合に、利用者の利益に鑑みて変更が相当である場合に限り、本規約を変更するものとします。
弊社は、本規約を変更する30日前までに(メールや弊社製品などを通じて)変更内容を利用者に通知し、変更後の規約が効力を生じる前に利用者が確認できる機会を提供します。ただし、変更が法律により必要とされる場合を除きます。 改訂された規約が効力を生じた場合、弊社製品の利用を継続する利用者は、改訂された規約に拘束されます。
弊社は、利用者に製品の利用を継続していただきたいと考えています。ただし、利用者が改定後の規約に同意せず、Facebookコミュニティからの退会を希望する場合、利用者はいつでもアカウントを削除できます。

引用元:Facebook利用規約


Amazonの利用規約の変更に関する条文

サイトの運営方針、変更、可分性
当サイトに掲載されている、価格などについての当サイトの運営方針をよくお読みください。これらの方針は、お客様のAmazon.co.jp のご利用も規制します。Amazon.co.jp は、当サイト、方針、利用規約をいつでも変更できる権利を保有します。この規約の一部が不正または無効である、何らかの理由で施行できない場合は、その規約は可分であるとみなされ、それ以外の規約の有効性および拘束力に影響を及ぼすことはありません。

引用元:Amazon利用規約


新民法には定型約款の変更についての規定がある

上記実例からもわかるとおり、将来の変更に備えて、利用規約(約款)には変更に関する条文を入れておくことが望ましいです。

民法改正で新たに「定型約款」が導入され、変更の手続きも規定が新設(民法548条の4)されました。これにより所定の要件を満たす定型約款の変更については、相手方の個別の同意を得ずに行うことができます。

(定型約款の変更)
第548条の4
1.定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2.定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3.第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
4.第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

変更の周知義務が規定された

上記条文より、変更の要件は、①利益変更(第1項1号)か、②合理的な変更(第1項2号)に限られ、かつ、手続要件(第2項)として効力発生時期を定める義務及び周知義務があります。

ようするに利用規約を作る際は、変更の合理性(第1項2号)のひとつという意味でも、変更の手続きについて規定しておく必要があります。そして、改正民法にある約款の変更手続きに沿うようにするには、①規約が変更されることがある旨とともに②変更の効力発生日を定めて周知する旨を合わせて定めておく必要があります。

つまり、規定例としては

≪当社の利用規約の変更について≫
1 当社は、本利用規約を変更する必要が生じた場合(具体的には〇〇の改訂など)には、民法の規定に基づき本利用規約を変更できるものとします。
2 当社は、本利用規約を変更する場合には、その効力発生日を定めるとともに、当該効力発生日までに、当社のホームページに掲載する方法その他の方法により以下の事項をユーザに対し周知いたします。
①本利用規約変更及び変更理由について
②変更箇所及び変更後の内容について
③効力発生日について

などとします。


まとめ:最も読みやすいのはGoogleの利用規約

規約の変更についてまとめましたが、個人的には、Googleの利用規約が一番読みやすかったです。規約変更のシチュエーションについても具体例が挙げられるなど、イメージしやすい工夫がされています。そして他の3社の事例と見比べてみると、定型文のような表現は一切みあたらず、それぞれがまったく独自の表現を採用していることがわかります。利用規約も、本来このようにオリジナルなものだということです。

利用規約の作成の際には、オリジナリティに気を配りつつ、将来の「変更」の規定も、適切に入れていきたいですね。


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