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ウェブサービスの利用規約をつくってみよう!【ひな型/商用利用可能】

会員制のオンラインサービスを開始するので、その利用規約をつくりたい。民法改正に対応して、免責もしっかり定めておきたい。

オンラインサービス提供のための、利用規約のひな形です。 民法改正に対応した利用規約のつくりかたとして、ひな形と解説を公開します。これからウェブサイトの利用規約をつくりたい方は必見です。「ひな型は?」「Web利用規約をつくるときの注意点は?」などの疑問にこたえます。

利用規約の意味

利用規約を設定するのは、ユーザからの信頼性の意味もありますが、ウェブサービスを提供する上でのルールを決めておき、運営を安定させるためです。たとえばサービスの申し込み後に解約を申し出たユーザがいたとして、キャンセル料が発生するのかしないのかは非常に重要なポイントです。具体的にどんなルールが必要かを、以下に箇条書きにします。

注意点は不当条項のリスク

2006年の消費者契約法改正により、適格消費者団体による差止請求の制度ができました。これは適格消費者団体が消費者に代わって、約款の条項の無効などを指摘したり、是正勧告をしたり、訴訟により約款の使用差止等を求められるものです。

実際に、ソーシャルゲームサービスの企業が、ゲームの「利用規約」のなかにあった「一切損害を賠償しません」という条項が「不当条項」にあたるとして、適格消費者団体から差止請求訴訟を起こされて、一部ですが企業側が負けたという事例もあります。

消費者契約法では「事業者の損害賠償責任の全部を免除する規定は無効(第8条1項1号・3号)」と定められているため、いわゆるBtoC取引(事業者と消費者との契約)で、事業者の債務不履行等による損害賠償責任を全部免責する条項は不当条項とされることがあります。

利用規約に書くべきことまとめ

以上をふまえて、利用規約に書いておくべきことはなんでしょうか? 項目をリストアップしておきます。

定義
・「パスワード」「アカウント」等の定義
・特有の用語がある場合その定義

商品サービスの内容
・顧客や利用者の権利、具体的サービス内容
・契約成立時期、商品・サービスの提供時期

購入や利用の条件
・申込方法、基準
・認証、パスワード、登録方法
・代金、利用料、手数料、支払方法、時期
・決済方法や手順

禁止事項
・法令違反行為、公序良俗等に反する行為
・リバースエンジニアリングやシステムに悪影響を与える行為
・第三者の権利侵害行為、不当な表現(暴力、脅迫、虚偽、詐欺、毀損、差別的、反社会的等)の禁止
・違反に対するペナルティ、事業者側の取り得る対応
商品・サービスの停止、中止、廃止
・システムがダウンした場合等における中止、停止
・不可抗力、廃止の場合の払い戻しなどの対応

解除
・事業者側から解除できる場合
・ユーザから解除できる場合
(BtoC取引の場合に、民法上の解除権を制限する条項、事業者側の債務不履行により生じる消費者の解除権を放棄させる条項、事業者が解除権の有無を決定する条項は、消費者契約法により無効になることに注意する。)

免責
・消費者契約法にてらして有効な免責の範囲に注意すること。
・事業者の損害賠償責任の全部を免除する規定は無効(消費者契約法8条1項1号・3号)。
・事業者に故意・重過失がある場合には、責任の一部限定規定も無効(同法8条1項2号・4号)

違約金等
・ユーザが支払う違約金または損害賠償の予定等
(BtoC取引の場合には消費者契約法9条1号により、解除に伴う違約金の額が平均的な損害の額を超える場にその超過部分は無効になることに注意する。)

個人情報
・個人情報の取扱いが生じるときはその規定(別途、利用規約とは独立したプライバシーポリシーを設けることが一般的)

反社勢力の排除
・いわゆる反社条項

期間
・自動更新等

準拠法と裁判管轄
・準拠法は日本法とする
・専属的合意管轄の定め

規約の変更
・将来変更することがある旨
・変更を実施する条件、変更するための手続き(民法第548条の4に基づく定型約款の変更)(「定型約款」の変更の手続きは、不利益となり得る変更については①契約をした目的に反せず、②変更が合理的なものであるときに利用できることに注意する。)

その他
 ・業法等を満たすための条項
・秘密保持条項
・知的財産の帰属等に関する条項

附則
・効力発生日や、改定の適用時期等

利用規約のポイント

先に検討しておきたいことメモ
・サービス内容など含めた用語の定義
・ユーザに禁止したいことはなにか
・サービスの中止や廃止について
・退会や利用契約の解除について
・事業者の免責について(特に消費者契約法に配慮)
・個人情報(プライバシーポリシー)を別途作成しておく

場合によって追加する項目

ビジネスの内容によって追加したほうがよい項目
・違約金等があるときはその規定(特に消費者契約法に配慮)
・利用料金等があるときはその規定
・契約期間があるときはその規定
・秘密保持や知的財産権について必要があるときはその規定
・業法等に応じたものがあるときはその規定

共通項目

定型的な項目
・譲渡禁止
・管轄裁判所、準拠法
・反社会的勢力
・規約の変更について
・附則

利用規約のひな形

具体的な、ウェブ利用規約の例をつくっておきましたので、コピーして活用してください。

この利用規約(以下、「本規約」といいます。)は、株式会社〇〇〇〇(以下、「当社」といいます。)が管理及び運営するウェブサイト(◯◯◯◯.com)上でユーザに提供するオンラインサービス(以下、「本サービス」といいます。)のご利用に関して、以下の通り定めます。

第〇条(定義)
1.本規約において「ユーザ」とは、本規約の内容を全て確認し了承した上で、当社が本サービスで提供する情報(画像、テキスト、動画、情報等のコンテンツを含むものとし、以下、情報等と総称します。)を検索、閲覧または利用する個人をいうものとします。なお、「ユーザ」には下記で定義する「会員」が含まれるものとします。
2.本規約において「会員」とは、本規約を了承した上で、本規約所定の手続きによる会員登録を完了した個人をいうものとします。

第〇条(適用関係)
1.本規約は、当社が運営する本サービス及び情報等のご利用に関して、すべてのユーザに適用され、ユーザに遵守していただく規約を定めたものです。
2.当社は本サービスに関し、本規約のほか、当社が別途定める、ご利用にあたってのルール等(以下、「個別規定」といいます。)を定めることがあります。これら個別規定はその名称のいかんに関わらず、本規約の一部を構成するものとします。
3.本規約の規定が前条の個別規定の規定と矛盾する場合には、個別規定において特段の定めのない限り、当該個別規定が優先されるものとします。

第〇条(会員登録手続き)
1.本サービスにおいては、会員登録希望者が本規約に同意の上、当社の定める方法によって会員登録を申請し、当社がこれを承諾した後、専用ページにて会員登録のためのフォーマットに必要な情報をデータ入力して当社に送信することにより、会員登録が完了するものとします。ただし、当社は、会員登録希望者が本規約に同意の上、Gmailなどの外部サービスの認証システムを経由する方法によって会員登録を申請した場合、当社がこれを承諾する方法によっても会員登録を完了することができるものとします。
2.会員登録に必要な情報の内容は以下のとおりです。
①ユーザの氏名
②ユーザの生年月日
③ユーザの住所
④ユーザのメールアドレス
⑤その他本サービス利用のために必要な情報
3.当社は、会員登録の申請者に以下の事由があると判断した場合、会員登録の申請を承認しないことがあり、その理由については一切の開示義務を負わないものとします。
①会員登録の申請に際して虚偽の事項を届け出た場合
②本規約に違反したことがある者からの申請である場合
③その他、当社が会員登録を相当でないと判断した場合


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