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印紙の不思議 #3 業務委託契約書に印紙を貼るかどうかの判断②

契約書の「基礎」を確認するための記事です。契約書についてこれから詳しくなりたい方はぜひ読んでください。重要なポイントが「一気に」学べます。

契約書の基礎を短時間で身につけたい人のために

「契約書に貼る収入印紙の判断方法がわからない」「収入印紙が自分で判断できるようになりたいがどう学んでいいかわからない」

といった疑問にこたえます。

請負契約には印紙を貼るが・・・

前回は業務委託契約書に印紙を貼るのかどうかの判断方法について検討しましたが、業務委託契約書が請負契約だった場合の話でした。

業務委託契約が常に請負契約とは限らないため、もう少し具体的なケースも解説します。

たとえば、業務委託契約や、取引基本契約、保守契約、メンテナンス契約、代理店契約などのタイトルで契約書がつくられていて、印紙を貼るのかどうか迷った場合の考え方です。

業務委託契約や、取引基本契約、保守契約、メンテナンス契約、代理店契約などには印紙を貼るのか?

これもまずは印紙税額一覧表をみましょう。そしてやはり契約書のタイトルではなく、内容から判断することになります。上記のようなタイトルの契約書では、継続的な取引を行うことが非常に多いです。単純に売買契約をするとか、不動産の賃貸をするとかではなく、なんらかの取引を継続するものです。

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そして、一覧表には「7号文書」として、「継続的取引の基本となる契約書」というものがあります。これに該当すると印紙を貼ることになります。

7号に該当すると印紙税額は一通4000円!

印紙税額一覧表の第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」に該当すると、印紙税額は1通につき4,000円です。結構高い! ので、過怠税のことも考えると、これに該当するかしないかは大問題です。印紙税法施行令26条には7号の定義も詳しく書いてありますが、少し難しいのでかみ砕いて説明します。

7号文書の要件

先に要件をみましょう。

(1)売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書
(2)代理店契約書などのように、両当事者(営業者には限りません。)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定める契約書
(3)その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの(例) 銀行取引約定書、信用取引口座約定約諾書、保険特約書など

となっています。ただし、これらの契約書に記載された契約期間が3か月以内であり、かつ、更新の定めのないものは除かれます。ちょっと難しいですね。

これって7号文書? 調べ方

少し細かいので、印紙税法施行令26条の要件を簡単に分解します。

7号文書には①「売買、売買の委託、運送、運送の取扱い、請負のいずれかの取引」を②「営業者間で」③「複数取引を継続的」行う場合、期間については④「契約期間の定めがないか、契約期間が3か月を超えるか、3か月以内でも更新の定めがある」もので、⑤「目的物の種類、取扱数量、単価、支払方法、損害賠償の方法、再販売価格のうちいずれか一つ以上の事項を定めている」契約書が該当します。(注:代理店契約は、営業者の要件が外れています。)

①「売買、売買の委託、運送、運送の取扱い、請負のいずれかの取引」②「営業者間」
③「複数取引を継続的」
④「契約期間の定めがないか、契約期間が3か月を超えるか、3か月以内でも更新の定めがある」
⑤「目的物の種類、取扱数量、単価、支払方法、損害賠償の方法、再販売価格のうちいずれか一つ以上の事項を定めている」

逆に言えばこれらの要件を満たさない場合は、少なくとも「第7号文書」ではありません。迷ったときは、がんばって要件をひとつひとつ点検して、判断してください。

たとえば「営業者間」の取引でなければならないので、当事者の両方または一方が営業者ではない者(個人、国など)であれば、この要件を満たしませんから、第7号文書にあたらないこととなります。

あるいはスポットの契約、単発的な取引では取引の複数性や継続性がありませんからやはり要件を満たしません。このように根気よく要件とてらしあわせてみてください。

クイズ

次の説明はただしいですか?

取引基本契約書を作成したが、目的物の種類、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のすべてを記載してあるわけではないので、印紙は貼らなくてもよい。

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