契約書に印紙を貼るべき? 今度こそ分かる【印紙の悩み パターンで完全理解】

「○○契約書なんですが、収入印紙は貼るんでしょうか?」
「貼るとしたらいくらなんでしょうか?」
このご質問が、非常に多いです。
そしてこれは、即座に答えることが非常に難しい質問です。

そもそも収入印紙ってどうしたら判断できるのでしょうか。最初はいきなり印紙税額一覧表をあたるより、まず基本的な考え方を知るほうが、実は近道かもしれません。印紙税は紙の書類作成に対する税なので、近年普及がすすむ「電子契約」なら不要なのですが、とはいえまだ「紙の契約書」を使う場面は残っていますし、貼り忘れてしまうとペナルティもあります。印紙が必要かどうかやその金額は、適切に判断したいですよね。

消印を忘れるとペナルティ

というわけで、契約書に貼る印紙の判断方法について説明します。


契約書のタイトルで判断してはいけない

まず基本中の基本として、印紙は契約書の「タイトル」ではなく「内容」によって判断します。契約書のタイトルだけでは、印紙を貼るかどうかは判断できません。

契約書などの文書の「内容」が、印紙税法に定める「課税文書」であれば、原則として印紙を貼ることになります。

どんな書類にいくらの印紙を貼るのかについて、いわばガイドマップの役割を果たすのが「印紙税額一覧表」です。(印紙税額一覧表は、国税庁のホームページからダウンロードできます。)

h30-印紙税額一覧表-11

この一覧表をみると、印紙税法上の課税文書(印紙を貼るべき文書)は「第1号」から「第20号」まで(20種類も)あることがわかります。この20種類の文書のうち、どれかに該当すれば原則として「課税文書(=印紙を貼る文書)」です。逆にいえばそれ以外のもの(一覧表に書いてない文書)は「課税文書」ではありませんから、印紙を貼る必要はありません。

ところではじめから20種類全部を覚えるのは大変ですし、20種類のなかには契約書ではない課税文書も含まれています。今回は契約書の印紙を検討したいので、よく使われる契約書に該当する課税文書だけに絞って説明します。

まずはこの3種類を覚えよう

主要な範囲はどの部分かですが、「第1号文書、第2号文書、第7号文書」の3つを挙げたいと思います。

なぜこの3つなのでしょうか。
契約実務ではこれらがまるでメインキャラクターのようによく登場するからです。印紙税額一覧表にある20種類の課税文書のなかでも「ビジネスでよく使われる契約書」が、この3種類の課税文書に集中しています。

たとえば「不動産売買契約書」や「土地の賃貸借契約書」、「消費貸借契約書」、「請負契約書」、「基本契約書」といったおなじみの契約書がこの3つの課税文書に詰まっています。いわゆる「業務委託契約書」も、内容的には「請負契約」や「譲渡契約」を含んでいるため、やはりこの3種類のどれかに該当する事がよくあります。よって、この主役級の3種類の課税文書をまず理解することは、非常に実践的だと思われます。

補足:ちなみに、あまり主要な契約書とは思えないのでここでは説明しませんが、ほかにも契約書にあたる課税文書として、「合併契約書又は吸収分割契約書が該当する第5号文書、信託行為に関する契約書が該当する第12号文書、債務の保証に関する契約書が該当する第13号文書、金銭又は有価証券の寄託に関する契約書が該当する第14号文書、債権譲渡又は債務引受けに関する契約書が該当する第15号文書」があります。以下に箇条書きにしておきますので、一応第1号、第2号、第7号文書の他にも、「契約書」にあてはまるものがあるということは知っておいてください。

1号、2号、7号文書「以外」にも、課税文書になる「契約書」としては以下があります
・合併契約書又は吸収分割契約書=第5号文書
・信託行為に関する契約書=第12号文書
・債務の保証に関する契約書が=第13号文書
・金銭又は有価証券の寄託に関する契約書=第14号文書
・債権譲渡又は債務引受けに関する契約書=第15号文書

というわけで、「1号、2号、7号文書」の3種類の文書について説明します。まず、各号の文書と契約書との対応を、冒頭でお話した「印紙税額一覧表」でざっくりと確認すると、以下の通りです。

第1号、第2号、第7号文書をざっくりいうと
・第1号の1文書=不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
・第1号の2文書=土地の賃貸権の設定等に関する契約書
・第1号の3文書=消費貸借に関する契約書
・第1号の4文書=運送に関する契約書
・第2号文書=請負に関する契約書
・第7号文書=継続的取引の基本となる契約書

(1号の1文書の「無体財産権」とは特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号及び著作権のことをいいます。)

第1号文書はどういう文書か

では第1号文書をもっと具体的に説明します。

■第1号文書は4種類 / 渡す、貸す、運ぶ

第1号文書は、4種類あります。
「1号の1」が不動産や無体財産権又は営業の譲渡に関する契約書、
「1号の2」が土地の賃貸権の設定等に関する契約書、
「1号の3」が消費貸借契約(お金を貸す契約)、そして
「1号の4」が運送に関する契約書(運ぶ契約)を指しています。

第1号文書は、不動産や権利や営業を「譲渡したり」土地やお金を「貸したり」なにかを「運んだり」と、物理的にモノや権利が「動く」ときの契約とイメージすると覚えやすいと思います。

ちなみに第1号の1文書のところに「無体財産権」という言葉が出てきますが、無体財産権とはこの場合「特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号及び著作権」のことです。たとえば「著作権」の譲渡はビジネス契約で頻繁にでてくる、重要な契約のひとつですので、ぜひ覚えておきたいところです。

■課税事項と重要事項の記載があるかどうか

では、たとえば売買契約書とか譲渡契約書というタイトルの契約書なら、無条件に「第1号文書」だ、ということになるのでしょうか? 結果的にそうである場合もありますが、前述のとおり課税文書かどうか(印紙を貼るかどうか)は文書のタイトルではなくあくまで「内容」で決まりますので、次の要件を確認してから結論してください。

第1号文書かどうかの「要件」は、その契約書に契約成立事実(=「課税事項」)の記載があり、当事者間でその「課税事項」を証明する目的で作成された文書であって、「重要事項」の記載があることです。

単純化するとこうなります↓

要件を分かりやすさ重視でまとめると、

①第1号文書の「課税事項」が書いてあるし、
②それ(課税事項)を証明するために作成されているし、
③第1号文書の「重要事項」が書いてある

=第1号文書である

①と②の要件は小難しく書いてありますが、ようするに第1号の「契約書であるかどうか」です。「課税事項」とは証明の対象となっている事実のことであり、この場合は第1号文書の一覧表に載っている契約書が証明しようとする事実、つまり譲渡なら譲渡、消費貸借なら消費貸借の契約が成立した事実のことです。第1号文書は印紙税額一覧表によれば以下の種類の契約書なので、ということは、以下の事項に関する契約が成立した事実が課税事項だといえます。

第1号文書の種類
■不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
(不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書など
(注)無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号及び著作権をいいます。)

■地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
(土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など)

■消費貸借に関する契約書
(金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など)

■運送に関する契約書(傭船契約書を含む。)
(運送契約書、貨物運送引受書など
(注)運送に関する契約書には、傭船契約書を含み、乗車券、乗船券、航空券及び送り状は含まれません。)

■重要事項の記載がないと課税文書にならない

次に「重要事項」とは、第1号文書や第2号文書といった「契約書」において「この内容の記載がないと課税文書にならない」とされている事項のことです。つまり、契約書の記載内容の具体的基準です。

具体的な事項は契約の種類によって異なりますから、「印紙税法基本通達 別表第二」にある「重要な事項の一覧表」を参照する必要があります。

たとえば第1号の3文書(消費貸借契約書)の「重要事項」は次の通りです。

第1号の3文書(消費貸借契約書)の「重要事項」
(1) 目的物の内容
(2) 目的物の引渡方法又は引渡期日
(3) 契約金額(数量)
(4) 利率又は利息金額
(5) 契約金額(数量)又は利息金額の返還(支払)方法又は返還(支払)期日
(6) 契約期間
(7) 契約に付される停止条件又は解除条件
(8) 債務不履行の場合の損害賠償の方法

判断したい契約書にこれらの「重要事項」のうち、どれかひとつでも記載があれば、その号の重要事項の記載があると判断します。(重要事項は上記のなかのどれかひとつでOKです。全部書かれていないといけないわけではありません。)

上記の「重要事項」のうちひとつも書かれていないようでは、もはや契約書とはいえないと思います。一般的なビジネス契約書であればほぼ間違いなく「重要事項」は書かれているはずなので、ここはそれほど手間取ることはないと思います。

■あてはまっていても非課税の場合もある

課税文書に該当しても、例外的に非課税となる場合があります。

印紙税額一覧表でわかりますが、第1号文書の場合、記載された契約金額が1万円未満の場合には非課税となっています(つまり、記載された契約金額が1万円未満なら印紙税が課税されません。)。

ただし、第1号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。このように課税文書には2種類重ねて該当することがあるので、注意が必要です。

■いくらの印紙を貼るのか

以上の検討を経て「第1号文書にあてはまる」と判断できたら、印紙を貼ることになります。第1号文書の印紙の額は、契約金額によるので、一覧表で確認してその区分に応じた金額とします。

第1号文書の印紙税額
記載された契約金額が1万円未満は非課税※ 
10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1千円
100万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

※ 第1号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。

第2号文書はどういう文書か

同じように、第2号文書も説明します。


■第2号文書は請負 / 完成させる

第2号文書は「請負」の契約書です。請負とは、当事者の一方(請負人)がある「仕事の完成」を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約です。何かを「完成」させたり「結果」を出すための契約とイメージして覚えるとよいと思います。

たとえば建設工事は、建築物を「完成」させることを発注者に対して約束する取引ですので、典型的な請負契約となります。警備、機械保守、清掃などのサービスも「無形的な結果を目的とするもの」であれば原則として請負契約となります。サービスは無形の役務であり、特定の物品をおさめるわけではありませんが、対象となるものを「そのサービスの結果としてある一定の状態にする」というゴールがありますから、「請負」契約と判断します。

第2号文書の種類=請負に関する契約書
■工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など
(注) 請負には、職業野球の選手、映画(演劇)の俳優(監督・演出家・プロデューサー)、プロボクサー、プロレスラー、音楽家、舞踊家、テレビジョン放送の演技者(演出家、プロデューサー)が、その者としての役務の提供を約することを内容とする契約を含みます。

こうした契約書は第2号文書に該当します。そして第2号文書の印紙税額も、第1号文書と同じく、契約金額によって変わります。よって、その都度一覧表で確認して貼ります。

第2号文書の印紙税額
記載された契約金額が1万円未満は非課税※ 
100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1千円
300万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

※ 第2号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第2号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。

■委任契約なら印紙を貼らなくてよいのか

第2号文書は請負契約ですが、「請負」とよく似た契約に、「委任」があります。前述の通り、請負は仕事の完成や物事の結果を目的としています。一方で委任は民法上、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することを内容とする契約」です。つまり法律行為が目的といえます。

また、ビジネスの実態上は法律行為に限られず、ありとあらゆる事実行為(事務処理やさまざまなサービス業務)が委任契約の目的とされるので、これらも「準委任」と呼ばれ、性質上は委任契約とほぼ同一に扱われています。委任は、簡単にいえば「完成」させるとかではなく相手に頼んだ「事務処理」自体を目的とする契約です。

「委任契約」は印紙税額一覧表にありませんから、課税文書ではありません。そのため契約書の内容を良く確認したうえで、委任契約の成立のみを証明する書類であれば、印紙を貼る必要はありません。逆に、タイトルや当事者の認識がどうあれ、第2号文書(請負)の課税事項が含まれていれば、第2号文書として課税となることがあります。課税判断は、あくまでも文書の内容で決まることを忘れないでください。

第7号文書はどういう文書か

ではいよいよ3つ目の、第7号文書を説明します。

■第7号文書はややこしい / 5要件を確認しよう

ここまでで、どのような契約書に印紙を貼らなければならないのかが概ね分かったと思います。第1号文書は不動産等を渡したり、土地等を貸したり、物を運搬したりする契約書、第2号文書は請負契約書ということでした。

第7号文書の要件は、「売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負」の契約について「継続して行うため作成される契約書」です。

「売買、・・・又は請負」契約を「継続して行う」ということですから、売買契約はもちろんのこと、契約の種類が第1号の「譲渡、運送」でも第2号の「請負」でも、この第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当することがあります。このように第7号文書は契約の継続性を要件としているため、幅広い契約書が該当する課税文書です。

正しく判断できるように、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の課税要件を、もっと具体的にみていきましょう。印紙税法施行令には第7号文書の課税要件が以下のように書かれています。

第7号文書の課税要件(印紙税法施行令第26条より)
特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(課税物件表第17号文書の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する2以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)。

難しく書かれていますが、ようするに5つの要件が挙がっていまして、この5要件の「すべて」を満たすものが「第7号文書」なのだ、と言っているのです。そこで、第7号文書の判断にあたっては、対象としている契約書がこれら5要件のすべてにちゃんと該当するかどうかを、慎重に見極める必要があります。

5つの要件(すべてにあてはまると第7号文書)
①営業者の間における契約であること
②売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負のいずれかの取引に関する契約であること
③2以上の取引を継続して行うための契約であること
④2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうちの1以上の事項を定める契約であること
⑤電気又はガスの供給に関する契約でないこと

5要件は非常に大切です。業務委託契約で期間の長いもの、仕入れなどの継続的な取引契約、なんらかの基本契約書などの印紙を判断する際には、この5要件を上から順にチェックしながら読むようにして、確認してみてください。

■補足説明/①「営業者の間」の意味

5要件のうち、特に分かりにくそうなところ(①と③)だけ、説明を足しておきます。

まず、①の「営業者の間における契約」というのは、いわゆる商取引であることの要件です。「営業者」の間における契約が要件なのですから、逆に、「営業に関しない者」がする契約は第7号文書の対象外といえます。また、営業者の「間」とは、当事者の「双方」が営業者であることを意味しますので、どちらか一方が営業に関しない者である場合も、やはり対象外となります。

この「営業者」という概念がいまいちピンとこない方は、以下の箇条書き部分を読むと、イメージできると思います。

「営業者」の範囲
営業とは、「営利を目的として同種の行為を反復継続して行うこと」とされています。

営業にあたる

・株式会社などの営利法人の行為
・協同組合など会社以外の法人の行為で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることになっている法人の場合の、出資者以外の者との行為

営業にあたらない
・公益社団法人・公益財団法人などの公益法人の行為
・一般社団法人・一般財団法人で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができないものの行為
・公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的として設立されている場合(公益法人、NPO法人)
・人格のない社団の行為で、公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的として設立されている場合(人格のない社団が作成する受取書でも、収益事業に関して作成するものは、営業になります。)
・協同組合など会社以外の法人の行為で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることになっている法人の場合の、出資者との行為

個人の場合

個人は「商人」としての行為は営業になり、事業を離れた私的日常生活に関するものは営業になりません。なお、店舗などの設備がない農業、林業又は漁業を行っている者が自分の生産物を販売する行為や医師、歯科医師、弁護士、公認会計士などの行為は、一般に営業に当たらないとされています

会社同士で行われる、企業間の取引契約であればたいていは「営業者」の取引といえますが、法人にもいろいろな種類があることや、国は商人ではないこと、また法人ではなく「個人」の場合は商人にあたることとあたらないことがある点に注意してください。

一つ例を挙げれば、一般的な「会社」と「国」とが契約をした場合のように、当事者の一方(国)が営業者ではないときは、一番目の要件にはあてはまりませんから第7号文書ではない、と判断できます。

■補足説明/③「2以上の取引を継続」の意味

3番目の要件の意味についても補足します。「2以上の取引を継続して行うための契約」という要件です。これは、ひとつの契約のなかで2回以上の取引のある契約であることと、単発ではなく継続の取引契約であることの両方を意味します。

この3番目の要件には、「2以上の取引」という要件と、「継続して」という要件の、ふたつの基準が含まれていますから、注意して該当性の確認をする必要があります。

3番目の要件を2つに分解すると

・「2以上の取引」
=単発ではなく2回以上取引することが契約されているか。たとえば原材料の仕入の契約なら、一定期間に継続的に(何度も)仕入れることが予定される契約がよくあります。契約書にも、「継続的に仕入れる」といった意味の記載があれば該当します。

・「継続して」=上の要件と似ていますが、回数ではなく期間の継続性という要件です。よって契約書に契約期間の定めがないか、契約期間が3か月を超えるか、3か月以内でも更新の定めがある場合に該当します。

逆にいえば、単発の取引を定めていることが明らかだったり、契約期間が3か月以内で更新も定めていない契約書は、この要件を欠くため第7号文書には該当しません。

■第7号文書の印紙税額は4千円

第7号文書だと判断できた場合は、印紙税額はシンプルに、一通につき4千円となります。第1号文書や第2号文書のように、契約金額に応じて税額が変わることはありません。(そのかわり印紙税額が一律に4千円となるため、高いと感じるという方も多いです。)

知っておきたい「両方にあてはまる」パターン

さて、ここまでで3種類の説明は終わりです。ただ、すべての契約書が第1号か、2号、7号のどれかにすんなりあてはまってくれたら楽なのですが、実際は迷うこともあります。たとえば第1号や第2号にあたる文書が、同時に第7号文書にもあたる、つまり文書の所属が重複することがあります。

7号文書は「売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負のいずれかの取引に関する契約」にあたはまりますから、第1号文書(譲渡や運送など)や、第2号文書(請負)が、重なって所属することがあるわけです。

■第7号文書と第1号や第2号文書が重複した場合

では、重なったときは何号文書になるのか? ですが、それについては「通則3のイ」というルールで定められています。「通則3のイ」は少し難しい規定なのですが、この部分の結論だけいうと「第1号文書または第2号文書と、第7号文書に重複して該当する文書は、契約金額の記載がある場合には第1号文書または第2号文書とし、契約金額の記載が無い場合には第7号文書に該当する」となります。ようするに記載金額があるかどうかで分けています。

第1号または第2号文書 + 第7号文書 重複する場合は
記載金額のあるものは第1号又は第2号文書に該当する
記載金額のないものは第7号文書に該当する

さらにわかりやすくいえば、

第1号文書+第7号文書+記載金額あり = 第1号文書
第2号文書+第7号文書+記載金額あり = 第2号文書
第1号文書+第7号文書+記載金額なし = 第7号文書
第2号文書+第7号文書+記載金額なし = 第7号文書

ということですね。

■記載金額のありなし判別法

ところで、ある契約書に「記載金額」が書いてあるとか書いてないというのはどうやって判断するのでしょうか? 記載金額が「無い」とは、契約金額の記載がないか、金額の一部が書いてあっても具体的に計算ができないような記載方法になっていることをいいます。

たとえば「運送料金は1トンあたり千円とする」と書いてあった場合には、1トンあたり千円という「単価」はわかりますが、最終的にいくら支払うかは分かりません。契約によって証明されるべき金額が計算できないため、記載金額が無いものと判断します。

逆に、「料金は月額1万円とする。尚、契約期間は1年間とする。」と書いてあったら、単価と期間をかけて契約金額が計算できますので、記載金額がある契約書と判断します。

■記載金額が複雑な場合の注意点

実は記載金額には複雑なルールがあります。それは、業務ごとの報酬を分けて記載するなど、契約書によって契約金額の表現方法が違うことがあるためと、種類の違う契約(売買と請負など)のそれぞれに契約金額があるような場合に、「記載金額」がどう計算されるのかを定めるためです。そこで、記載金額の計算がわからないときは、印紙税法基本通達24条という規定を参照して、その都度つきとめるようにしましょう。

■譲渡(第1号)と請負(第2号)が重複するパターン

第7号文書と重複するパターンをみてきましたが、もうひとつ頻出するパターンがあります。それが、たとえば請負契約のなかに著作権の譲渡の内容が含まれるなど、一つの契約書の中に、第1号文書と第2号文書の課税事項が含まれる場合です。

この場合は、どちらの号の文書になるのでしょうか?

通則等によれば、第1号文書と第2号文書とに該当する文書は第1号文書に所属します。ただし、第1号文書と第2号文書とに該当する文書で、それぞれの課税事項ごとの契約金額を区分することができ、かつ、第2号文書についての契約金額が第1号文書についての契約金額を超えるものは第2号文書とします。

つまりどういうことかというと、原則としては第1号と第2号の両方に該当する契約書は、第1号文書とみなします。よって、印紙も第1号文書の税額がかかります。例外は、契約金額が分けて書いてあって、請負の金額のほうが高い場合です。このときは第2号文書に決定します。たとえば契約書のなかで「譲渡にかかる金額を10万円、請負にかかる金額を50万円、あわせて60万円を支払う」のように記載していた場合は、課税事項ごとの契約金額を区分することができ、かつ、第2号文書についての契約金額の方が第1号文書についての契約金額を超えていますから、第2号文書に所属を決定するのです。

以上で、3種類の課税文書の概要がつかめたと思います。ビジネス契約書の多くが該当する3種類ですので、重複した場合とあわせてパターンを理解し、必要に応じて印紙税額一覧表と基本通達を参照すれば、適切に対応できるはずです。

まとめ

・契約書には印紙を貼る場合と貼らない場合があり、基本は印紙税額一覧表をみて、該当する契約書かどうかを探すことで判断できます。

・印紙税額一覧表には20種類の課税文書がありますが、第1号文書、第2号文書、第7号文書の3種類をまず理解すれば、多くのビジネス契約書の課税判断ができるようになります。

・第7号文書のようにさまざまな種類の契約書が該当する課税文書や、第1号と第2号の両方にあてはまる契約書などがあるため、基本通達や通則を参照しなければならない場合があります。

・実務上の頻出パターンは、第7号文書と第1号または第2号文書が重複する場合です。この場合は記載金額がある場合には第1号または第2号文書であり、記載金額が無い場合には第7号文書となります。

追伸

契約書のひな型をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。


もしこの記事が少しでも「役に立ったな」「有益だな」と思っていただけましたら、サポートをご検討いただけますと大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。