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テンプレート契約書作成術

最近、起業が身近になった理由を考えていて、ようやくピンとくるこたえに思い当たりました。要するに環境が整ったおかげで「お手本」が増えたからだと思います。本記事では、お手本、すなわちテンプレート化された契約書の使い方と、注意点をお伝えします。

誰でも起業できる理由

思えば昔は起業するのも一大事でした。なにしろ、最低でも資本金を1千万ほど用意して会社を設立していたわけです。それも何人もの専門家に依頼をしてようやく登記を終えていました。それから名刺やパンフレットつくるのにもなんだかんだ含めると、1か月かかるなんてことはざらでした。とにかく手続きのすべてがいちいち大ごとで、時間がかかりました。

今や、会社設立も手続きだけに限れば苦労はしません。やはり環境がかわったおかげです。いまや情報化がすすみ、たいていの書類は作り方を調べることができるからです。つまり「お手本、テンプレート」が豊富なのです。非常にありがたいことです。お手本をみつけて、みようみまねでやればいいのですから。


契約書もテンプレート化された

本題ですが、契約書もたいていはテンプレート化されています。誰もが書式を参考にして作成するので、オリジナリティのある文章は減って、パーツの組み合わせのようになっています。もちろんその弊害も多少はありますが、メリットも多く、以前より効率化していることは間違いありません。書式例を参考にして契約書をつくる流れは今後かわらないでしょう。なぜなら圧倒的に便利で安心だからです。


テンプレートは不利になることがある

テンプレートを使えば、ビジネスは速くなります。いちいち契約書の具体的な文章を考える時間がかかりませんし、項目の不足に悩む必要もありません。ビジネス契約書の多くは、テンプレートを使えば大きく間違うことはありません。ただし、テンプレートに書いてあることに多少は影響されてしまうので、注意が必要です。というより、最初から自分に有利なテンプレートを選んで使うようにしましょう。

ちなみに僕のnote記事で「〇〇契約書をつくってみよう」というシリーズは、「売主の立場」で作られた書式の紹介になっています。なので、あなたが売主としてなにかビジネスをする際は、そのまま参考にしていただける内容です。あとこれは付け加えておきたいのですが、普通のひな型サイトに載っている契約書は、いかにも教科書的であり、毒にも薬にもならない無味乾燥で中立的なものばかりですが、僕のは違います。15年の経験から編み出した、実際に使われているビジネスの実例から抽出したものですし、売主にとって有利かつ受け入れられやすいという実践的な内容ですから、ビジネスをする際の貴重なノウハウになっています。


どんな契約書を使えばよいかわからない場合

さて、テンプレート(ひな型)を使えといわれても、最初はどんな場合にどんな契約書を検索してよいかわからないかもしれません。まずは以下に挙げるパターンで検索して、読んでみるのがおすすめです。

ビジネスカテゴリーと書式の対応
・商品を完成させて引き渡す →請負契約(業務委託)
・サービスの提供を行う →委任契約(業務委託)
・ノウハウや権利の許諾 →ライセンス契約、フランチャイズ契約
・物を販売する→売買契約、販売店契約
・代わりに販売する→代理店契約
・約束のみ(対価なし) →NDA、誓約書、合意書
・不動産や物を貸す→賃貸借契約
・お金を貸す→金銭消費貸借契約、債務承認弁済契約


テンプレートの内容だけでいいのだろうか

テンプレートが無事に選べたとしても、その内容が本当に十分なのかどうか不安になると思います。ビジネス契約書のテンプレート(ひな型)には、「一般的に」その契約において必要な条項が含まれています。よって、ひな型をそのまま使っていれば、とりあえず合格点はとれるわけです。

たとえば業務委託契約をしていて、料金を決めたとしたら、契約書の該当する項目を探して、料金は「〇〇円とする」のように空欄になっているところに、具体的な金額を書き込めばよいだけです。また、もし支払いが遅れた場合にはペナルティとして遅延損害金をとりたいなと思ったときは、やはり遅延損害金の項目を探して、遅延損害金は「〇%とする」といった空欄になっているところに、具体的な数字を打ち込みます。このように、通常は先回りしてひな型が用意している項目をなぞるように、空欄記入方式でやっていけばたいていの契約書は完成するのです。

ただ、契約書にはひとつの絶対的な正解があるわけではないし、書き足そうと思えばいくらでも足せるけれど、商売の都合上あえてシンプルにしておく、といった計算もはたらきます。そもそも「唯一の解答」を追いかけられるものではありません。さらに、あなたもご心配のように、イレギュラーな条件があって、テンプレートにも自分がつくりたい条件が含まれていないときもやはりあります。それが取引条件ならば、書き足す必要があります。実際に、イレギュラーな約束事を契約書の末尾に特約として加筆することはよくあることです。どんなにテンプレートが優れていても、多少の作文能力は、要求されます。

特約条項は書き足すしかない
たとえば販売店に販売ノルマを課して、10個以上は売らなければいけないことにしたとか、もし10個売れなかった場合はさらにそこから半年のうちに5個以上売れないときは契約を解除することもあり得るだとか、あるいは頑張ってそれ以上売れるようだったら契約を継続するし、もし期待以上に20個とか売れた場合にはご褒美として報酬が上乗せされる・・・みたいな、取引上のアイデアがあったとしますと、普通の契約書のひな型にはそうは書いてないでしょうから、自分で書かなければなりません。この場合は対価の条文に追記するか、長くなるようなら別の「特約」を加えるとよいでしょう。


相手の契約書にサインしていいのだろうか

よくご相談いただくのが、自分で作った契約書ではなくて、相手がサインしてほしいと言ってきたとき(相手方の契約書)に、果たしてそのままサインしてもいいのかどうかです。これはもちろんよく読んだうえで判断しなければなりません。相手を信用しているからといっても、契約書にサインするかどうかは別問題です。ちょっとでも気になる点があれば、遠慮なく相手方に質問すればよいのです。

ポイントは、お金におきかえて考えること。契約書の条文は、お金が出ていくものと入ってくるもの、どちらでもないものに分けて考えます。自分からお金が出ていく条文には特に注意しましょう。支払条項、損害賠償条項などですね。あとは解除条項は、お金は払わないかもしれませんが時間的なコストにつながることがあるので、広い意味でこれもお金に関する条項です。

イメージとして、お金が出ていくかどうかに注意しよう
支払条項=売上に直結、または支出に直結します
費用負担=支払うものが抜けてないか確認します(経費負担など)
損害賠償条項=あなたが損害を賠償させられるケースは想定できますか?
解除条項=時は金なり。いつでもやめたいときにやめられる? また、相手はどうでしょう?


それでも迷ったらテンプレートを変えてみよう

ひな型、テンプレートは多数あります。どうしても迷うときは、他のテンプレートも探して、差を比較してみると思わぬ発見があります。僕はよく、複数のテンプレートをみつけてきて、条文の対照表をつくって比較していました。だいたい3つくらいのテンプレートを比較していけば、共通項がはっきりして、自分の状況にあった契約書がみつかります。


少しイメージできましたか? 契約書でビジネスを守る方法には、まだまだコツがあるので、引き続きこのnoteで解説していきたいと思っています。よかったらまた見に来てください。

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