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ステファノが欲しかったもの

オーストラリアは若者が集まる国

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ただ旅を楽しみに来ている若者もいれば


仕事を求めて
移住するつもりで来ている若者もたくさんいる


私の周りのイタリア人には
移住目的の人が多かった

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この時のイタリアの若年層の失業率は
40%を超えていて多くの若者が働けていなかったという


私の友人ステファノも
職を求めて渡豪した一人だった

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オーストラリアにワーホリで来ている場合、農業などの仕事で88日間働けば
オーストラリアに2年間滞在する権利が得られる

ステファノはその2年間でなんとか仕事を探そうとしていた

移住の糸口を探していた

オーストラリアの空港に降り立ったその足で
ファームの仕事を斡旋してくれるバックパッカーに向かったらしい

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私がステファノに出会ったのはそのバックパッカーでだ


ステファノはオーストラリアについて数日しか経っておらず
英語を話すのにとても苦労していた

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私も英語がまだ得意ではなかったし、お互いに意思疎通ができないこともあった


でもイタリア語とか、ジェスチャーで言いたいことを伝えようとしてくれて
とても魅力的な人だった


そして私たちは仲良くなった

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ステファノと話していて
とても印象的だったことがある


それはステファノのこれからについて
聞いた時のことだ


「ステファノはオーストラリアで何か
この仕事やりたいとか、夢みたいなのってあるの?」

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「僕は」

「父親が羨ましいんだ。
父親みたいな人生を送りたい」

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はて

それはお父さんのことを尊敬しているって事なのだろうか?

そう聞くと、尊敬とはまた違うと言う

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「父親は美しくて素敵な女性とずっと一緒に過ごした」

「…それはお母さんのこと?」

「そう」


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「美しい人を見つけ出したい
それが一番の大事なことだ」






男の人に、こんなストレートな意見を
真正面から言われた今までなかったから少し驚いた




まず母親のことを美しいと言えること


他人に面と向かって
美しい女性と出会いたいと言えること



そしてステファノの言う「美しい」とは
ただ単に美貌があるとかそれだけじゃないということは分かった


これはステファノの純粋さだった

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そうだ
他の何よりも
素敵な人と一緒に生きること

それが人生最大の目的になりうる



ステファノは
自身が一番求めているものを知っていた





ステファノは Facebook などの SNSは
一切やっていなくて連絡が取れないかもと思ったのだが
別れ際にメールアドレスを書いた紙を渡してくれた

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一年半後


「これは私からのサービス。デザート何がいい?この中から何でも選んで」

あるお店に私は招待された

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とてもきびきびと動き、常に明るくハツラツとした顔をしているウェイトレスさんが私を担当してくれ、優しく話しかけてくれる


ここはステファノが指定したお店だ



ステファノは仕事が終わるのが遅くなったようで、私はデザートを食べ終わってしまった


遅れてきたステファノとはカフェの外のビーチで少しお話することにした

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ステファノは今、建築の仕事をやっていて給料も十分もらっていると嬉しそうに言っていた

イタリアの生活とは全然違うと

オーストラリアの今の生活が誇らしそうだった



話しているうち、先ほどのウェイトレスさんがお店を出てきて私たちに混ざる




1年半は長かった
本当に久しぶりな感じがした

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たったの1年半なのにね


でも私にとってもステファノにとっても
1年半の間にいろんなことがあったから



別れ際
私とステファノは再会を心から喜んで、ハグをした





ステファノとその素敵な女性は手をつないで海岸線を歩いて帰っていく

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私はとても嬉しい気持ちで
二人の姿をずっと見送っていた


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