グランピング

僕は1年半前からAmazonの配達をしている。
そこの仲の良い先輩達とグランピングに行った。

男の先輩3人と主催者の奥さんと女性2人の計7人でグランピングを楽しんだ。

ミニバン一台、7人パンパンで和歌山県白浜まで向かう。
僕は1番後輩だったので、2列目の真ん中に座らされた。
少ししんどかったが、思いのほか辛くなかった。

だが、途中で僕の後ろに座っていた女性が代わってくれることになった。
そして、席を代わり、気づいたことがあった。

僕と変わった女性は、2列目の左に座っていた先輩のことが好きだったことだ。
つまり、その先輩と近づけるため、僕と席を変わることで先輩と距離が近づけると目論んでいた。

また、後ろの女性と僕を繋げようと周りが目論んでいた。
僕と彼女は10歳も歳が離れている。さらに、10代の息子が2人いるバツイチだ。

正直、僕からすると好物件とはほど遠いものである。
しかし、尊敬する先輩達の期待を裏切ることは決してできない。
車内で僕はそんなことばかり考えていた。

ヴィラに到着し、乾杯の缶ビールを交わす。
僕の体がアルコールに侵食されていく内に、先輩に対する礼儀という名の枷が外れていくのが感じ取れた。

だが、それを止めることはできなかった。止めなくていいと思っていた。
楽しいという自我に任せて楽しんだ。

少し経って、主催者の誕生日だったので、そのお祝いをした。
誕生日プレゼントとケーキでサプライズをした。

至極喜んでいた。
サプライズは大成功を成した。
主催者の喜ぶ顔を見て、僕も自然と笑顔になる。

周りを見渡すと、笑顔と笑い声で溢れかえっていた。
少し寒い夜中、バーベキューの火、酔って赤面の顔、おしなべて暖色に包まれた。

少し暖かくなった空間でしばらく余韻に浸された。

グランピングも終盤になる。
主催者とタバコを吸っていた時のことだった。

僕はあと半年で就職する。
勤務地は大阪でみんなと少し離れてしまう。

そんな話をしている中、主催者がふと自分の過去について話してくれた。

僕は主催者の前職に愕然とした。
その職の人間は今まで主催者を合わせ、2人目だ。

だが、しっかり足を洗っているという。
僕は少ししてから、何もなかったかのように淡々と会話を進めた。

過去は過去、誰にも言えない過去は誰にでもある。

僕は嬉しかった。
相当な信頼関係が構築されていないと普通は話してくれないからだ。

偏見は不要、その人の本質を捉えられるかどうか。

僕はこの時、信頼関係の構築に偏見という不純物を取り除くことができた。

終幕

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