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映画『すばらしき世界』

こんにちは、2020年の映画「すばらしき世界」を見ました。
役所広司さんっておそろしい俳優さんですね、三上にしか見えなかった。あまり日本の映画見ないので「渇き」ぶりに役所さんの出ているものを見た気がします。渇きでも狂った父親役で、本当にむかついてむかついてしばらく大嫌いでした。笑 演技のことはよくわかりませんが、映画の物語の中の人にしか見えないのでうまい俳優さんなんだろうっていうことだけはわかりました。

映画は三上(役所広司さん)が刑務所から出所するところから始まり、出所後にどう暮らしていくのかというところに焦点を当てたお話でした。養護施設で育ち、小さいころからヤクザの一員になり少年院も何度も入っていて、大人になってからの刑務所に13年。中年・初老になってから刑務所から出ても行く当てもないし、仕事もないので生活に困りますよね。
刑期を終えたからと言って、生活がうまくいくわけではなくて、そこからも生きていくために努力をしないといけない。みんなが社会の中に溶け込めるように人と関わり、仕事をしてお金を稼ぐことをしないといけないですが、一度犯罪を犯して社会のレールから外れると、戻ってくるのが難しい。

三上自体は人に悪さをしてやろうという目的を持っている極悪人というわけではなく、自分の正義と違うことを見たときに苛立ちやすく、感情のコントロールが出来ない。加えて、喧嘩が強いためコントロールできない感情のまま暴力行為をして結果として人を傷つけてしまう。感情のコントロールを学んで、その強さと正義感をいいように使える場があればよかったのになあ。
リンチをされている人を助けたりしていて、本当の極悪人には見えないんだけど、やり方が悪いというか、自分自体が損してしまっている。助けているんだけど、やりすぎというかベストなやり方ではない。

私が一番印象的だったのは、なんとか周りに助けられて、やっと介護施設の仕事を見つけられたシーン。仕事にも慣れて、周りともうまくやって過ごしている中で、施設職員の少年が、他の職員に殴られているシーンを見てしまう。今までの三上だったら止めに入って、殴っているやつをめちゃくちゃに攻撃してしまうところ。やっと見つけた仕事なんだから、事件を起こしてはいけないって葛藤して葛藤して、見て見ぬふりをする。
、、これっていいことなんだか、悪いことなんだかわからない。見て見ぬふりは悪いことのような気がするけど、いじめられている人を助けたら、今度は自分がターゲットになって悪い状況になるっていう集団の悪いところ。どうしたらいいかわからない、社会の問題がうまく描かれていた。なんかもうどうしようもない。
そのイジメていた職員も悪いのかと思いきや、少年が仕事を放棄して、入居者さんが危ない目にあっていたので、それを注意していたとのこと。注意の仕方は問題あるだろと思うけど、意味もなく少年を殴っていたわけではなかったので、まだよかった。

そのあと。いじめられていた少年は知的障害があるんだけど、そのことをみんなでバカにして、仕草の真似をして笑っている。三上はそんなことはしたくないけど、そこに迎合するしかこの職場でうまくやっていくことはできないから、受け入れる。
辛いよな。自分が不利な状況にならないようにするために、いじめに一部加担しないといけない状況になる。程度の違いはあれど、よくあることのような気がする。自分のことは守れたけど、罪悪感が。

最後はハッピーエンドに向かっているように思える中でも外はどんどん雨が強くなっていく。あれ、なんか不穏な感じしない、、?と思っていたら最後のシーン!で終わりです。

全体的に面白い!!という内容ではないけど、みてよかったな、と思える映画でした。ひとそれぞれ色んな状況に置かれている人が共同生活している社会だと再認識したし、人の人生を覗けるので映画はやっぱりおもしろい。

ただ、最後の悪いシーンの匂わせを雨で表現するっていうのはいつまでやるの、、?使い古されすぎてて。今まで本当の社会の中の一部に三上の生活があるようなリアリティあったけど、雨からのバッドエンドの流れで映画のフィクション感が出てしまってたな。晴れてても悪いことは起きるしその逆もある。晴れなんだか曇りなんだかの、表現しにくい普通の日、のほうが唐突なことを表現出来る気がしたなあ。

では。


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