あの夜、ベイカー・ストリートで。(読書と旅に纏わるごく個人的なエッセイ)
大人になった今でこそ学ぶのがとても楽しいが、むかしから勉強が好きなわけではなかった。とくに化学や物理は壊滅的だった。英語もぱっとしない。でも国語だけは大好きだった。
それはやはり、母親がちいさいころから本を与えてくれていたからだと思う。母親は毎年わたしの誕生日に、本をプレゼントしてくれていた。いつも対象年齢よりも少し上の本っていうのがミソで、はじめは「こんなむずかしい本はとても最後まで読みきれない」と思うのだけど、いつのまにかスイスイ読めるようになっているのが不思議だった。