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人間中心設計は自己満足設計?地球中心という視点もあり得そうな予感がある話

近年、人間中心設計が注目を集めています。これは、人間の視点を中心にデザインされた製品やサービスが増えていることを意味しています。しかし、人間中心設計には欠点があります。また、地球温暖化や環境破壊といった問題が深刻化する中で、ポスト人間中心設計の思想である「環境中心」や「生命中心」が登場しました。今回は、そういった思想のひとつである「地球中心設計」について考えてみたいと思います。

Takramの田川さんとGoodPatchの土屋対談記事で紹介されていたことでこの言葉を知りました。

田川:そう思います。ちょうどいい例があります。今、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでは、卒業展シーズンに合わせてさまざまなイベントが開催されており、僕もトークイベントに登壇する予定があります。そこへ学生から事前に質問が寄せられるのですが、5つくらいある質問のうち、2つが「Planet Centered Design(=地球のためのデザイン)」に関するものでした。
「Human Centered Design」という概念は以前からありましが、サステナビリティの重要性が高まるに伴い、最近は「Planet Centered Designが大事だ」と言われるようになってきています。
学生から寄せられた質問も興味深くて。たとえば「あなたがデザインしたものが何らかの形で地球にダメージを与えていることを自覚したときに、あなたはどうしますか?」といったもの。とても難しい質問ですよね。

人間中心デザインから「地球中心デザイン」へ
https://www.cultibase.jp/articles/7825

人間中心設計とは?

人間中心設計は、製品やサービスを、ユーザーのニーズや行動に基づいて設計する方法論のことです。つまり、ユーザーの利用体験を向上させるために、彼らのニーズや欲求、環境、文化、認知的能力、身体的特性などを考慮しながら設計を行います。これにより、製品やサービスの使いやすさや親和性を高め、ユーザーの満足度や快適性を向上させることができます。

人間中心設計は、ユーザーを中心に据えた設計手法として、広く製品やサービスの開発や改善に利用されています。例えば、スマートフォンやタブレット端末など、私たちが日常的に利用している製品は、人間中心設計に基づいて設計されたものが多くあります。また、ビジネスや公共サービス分野においても、ユーザーのニーズに合わせたサービス提供や、設備の配置などに人間中心設計が利用されています。

人間中心設計の利点は、ユーザーの利用体験を向上させることによって、商品やサービスの品質を高めることができることです。それによって、顧客満足度を向上させ、商品やサービスの売り上げを伸ばすことができます。また、ユーザーが快適に使える製品やサービスを提供することで、ブランド価値の向上にもつながります。

人間中心設計の3つの欠点

人間中心設計には欠点があります。ひとつは、人間の利益が優先されることです。人間中心設計では、人間の利益が優先されるため、地球温暖化や環境破壊などの問題が深刻化することがあります。例えば、自動車は人間が便利に移動するために開発されましたが、その結果、大気汚染や温室効果ガスの排出などの問題が生じています。

また、人間中心設計では、差別や偏見が生じることもあります。例えば、車椅子の利用者が多い場所での段差や障害物があると、車椅子の利用者が不便を感じることになります。これは、人間中心設計が健常者を中心にデザインされているため、車椅子の利用者にとって不便な状況が生じてしまうからです。環境の中で人間のセグメントをする限りにおいては、誰かにとって良いデザインは他の人にとってはバッドデザインにもなり得てしまうことを肝に銘じておく必要があります。

人間中心設計では、環境や動物などの自然について考慮されることが少ないという欠点があります。人間が利益を享受するために自然破壊を進めることがあり、地球環境の悪化を引き起こす原因となります。

「環境中心」「生命中心」というポスト人間中心設計の思想

そこで、人間中心設計に対して、ポスト人間中心設計の思想として「環境中心」と「生命中心」が登場しました。環境中心とは、自然環境を中心に考え、デザインを行うことを指します。生命中心とは、人間だけでなく、地球上のすべての生命体を考慮に入れたデザインを行うことを指します。

これらの思想により、人間中心設計の欠点を補完することができます。環境中心や生命中心でデザインされた製品やサービスは、地球環境や動物たちを考慮したものになります。例えば、自転車や電気自動車は、環境にやさしい移動手段として注目を集めています。

サスティナビリティーがなぜ大切なのか?

サスティナビリティーとは、持続可能な社会を実現するための考え方で、地球環境や人間の社会的・経済的な持続可能性を考慮した活動を指します。

地球環境の悪化が進む中で、サスティナビリティーはますます重要となっています。サステイナビリティ(持続可能性)は、地球環境や社会、経済に関して、現在の世代のニーズを満たすだけでなく、将来の世代にも同様のニーズを満たせるように、資源や環境を効果的に活用するための取り組みです。持続可能な社会を実現するためには、地球環境の保護や資源の節約、社会的・経済的な発展を調和させる必要があります。地球温暖化や自然災害などの問題が深刻化する現代社会において、サステイナビリティはますます重要となっています。持続可能な社会を目指すために、私たちは環境問題を意識し、サステイナブルな行動を取ることが求められています。

「地球中心設計」Planet Centered Design

そして、環境中心や生命中心を超えた、より広い視野でのデザイン思想として、「地球中心設計」があります。地球中心設計とは、地球全体を考慮に入れたデザインを行うことを指します。

地球中心設計では、地球上のあらゆるものを一体的に考えることができます。人間の生活だけでなく、動物や植物、地球環境にも考慮したデザインを行うことで、より持続可能な社会を実現することができます。地球中心設計を実現するためには、以下のようなアプローチが必要となります。

まず、地球上のあらゆるものを考慮するためには、専門的な知識が必要です。例えば、環境問題や動物の生態などに詳しい専門家の協力が必要となります。また、地球上のあらゆるものを一体的に考えるためには、国境を越えた協力が必要となります。

さらに、地球中心設計を実現するためには、デザインのプロセス自体を変える必要があります。例えば、サステイナブルな素材の使用や、リサイクルに配慮したデザインを行うことが必要となります。また、デザインのプロセスにおいて、地球環境や動物たちの生態系を考慮したシミュレーションを行うことも有効な手段となります。

地球中心設計の取り組みとして、世界的に注目されているのが「クラドル・トゥ・クラドル」(Cradle to Cradle)というデザイン思想です。クラドル・トゥ・クラドルは、製品が廃棄物となった際に再利用可能な素材に戻るようなデザインを行うことを目的としています。このデザイン思想により、廃棄物を減らすことができるだけでなく、資源の再利用を促すことができます。

「ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle)」とは、循環型のプロダクト・デザインをし、再利用できない廃棄物を一切出さないモノづくりをするという考え方。モノがライフサイクルの最終段階を迎えたとき、ごみとして処分せず、資源としてほかのモノの生産に活かそうというものである。

循環型のモノづくりを説く「ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle)」の考え方

以上のように、地球中心設計は、持続可能な社会を実現するために必要なデザイン思想となっています。今後、環境中心や生命中心のデザイン思想をさらに進化させ、地球中心設計を実現することが求められます。我々が暮らす地球環境を守り、持続可能な未来を実現するために、デザインの力を最大限に活用していきましょう。

サーキュラーエコノミー これからの生態系

地球中心設計の実現に向けて、注目されているのがサーキュラーエコノミーです。従来の線形経済では、資源を使い捨てにしていましたが、サーキュラーエコノミーは、廃棄物を資源として再利用する循環型の経済システムを提唱しています。

サーキュラーエコノミーでは、製品の寿命を延ばし、素材を再利用することで、廃棄物を最小限に抑えることができます。また、リサイクルや再生可能エネルギーの導入により、環境に負荷をかけることを減らすことができます。

サーキュラーエコノミーの取り組みは、世界的に広がっています。例えば、オランダのアムステルダムでは、廃棄物を最小限に抑えるため、市民に自転車や公共交通機関の利用を促す取り組みを行っています。ゴミ箱のリデザインプロジェクトなどもユニークな取り組みです。

日産自動車は、自動車のバッテリーを再生しているプロジェクトを実施しています。このプロジェクトは、電気自動車用のバッテリーを再生することで、使用済みのバッテリーを再利用し、新しいバッテリーの製造コストを削減することを目的としています。このプロジェクトによって、使用済みの電気自動車用バッテリーの再利用率が最大80%まで向上することが期待されています。


サーキュラーデザイナーが出来ること

サーキュラーエコノミーを実現するためには、デザイナーの力が不可欠です。デザインのプロセス自体を変えることで、サーキュラーエコノミーの実現に貢献することができます。

例えば、サステイナブルな素材の使用や、廃棄物を最小限に抑えるデザインの提案を行うことができます。また、製品の寿命を延ばすための修理サービスや、パーツの交換などの提案を行うことも有効です。さらに、消費者が製品を長く使い続けるためのデザインを行うことも重要です。

デザイナーは、サーキュラーエコノミーを実現するために、以下のようなことに取り組むことができます。

・サステイナブルな素材の使用 ・リサイクルや再生可能エネルギーの導入 ・廃棄物を最小限に抑えるデザインの検討
・製品の寿命を延ばすデザインの提案
・修理サービスやパーツの交換などの提案
・消費者が製品を長く使い続けるためのデザインの提案

サーキュラーデザインによって、製品のライフサイクル全体を考え、地球環境に負荷をかけないようなデザインを実現することができます。このような取り組みが広がることで、より持続可能な社会の実現につながると言えます。

地球中心設計は、人間中心設計の欠点を補完し、地球環境を保護するための設計思想です。人間中心設計ではなく、環境中心や生命中心の視点からデザインすることで、より持続可能な社会の実現につながると言えます。

サスティナビリティーが重要である理由や、サーキュラーエコノミーやサーキュラーデザインといった地球中心設計を実現するための取り組みについて説明しました。これからの社会に求められるのは、地球環境を考慮したデザイン思考や、サステイナブルなライフスタイルの実践です。私たちは、今後ますます地球環境に配慮した設計思想に取り組むことが求められます。

8.まとめ

人間中心設計の考え方は、製品やサービスを使う人の視点からデザインを行い、使いやすさや快適さを追求するというものでした。その結果、消費者が求める製品を提供することができるようになり、製品の販売やブランドの価値向上につながりました。

しかし、人間中心設計には欠点もあり、大量生産や廃棄による環境負荷が増大しました。そのため、人間中心設計の欠点を補完し、より環境に配慮したデザイン思考が求められるようになりました。これまでのデザイン思考には、環境や生物多様性を重視する視点が欠けていたため、それらを取り入れた新しいデザイン思考が求められるようになりつつあります。

環境中心設計は、地球環境を考慮したデザイン思考であり、サステイナビリティーの観点から製品のライフサイクル全体を考慮するというものです。また、生命中心設計は、生物多様性を重視したデザイン思考であり、製品の開発や使用において、生物多様性を守ることを目指します。

デザインは、今後ますます環境と共存するために欠かせないものになっています。人間中心設計から始まり、環境中心や生命中心といった新しいデザイン思想が提唱され、現在は地球中心設計というコンセプトが注目され、人間が地球の一部であり、地球の生態系を破壊しないように設計しなければなりません。

デザイナーは、サーキュラーエコノミーやサーキュラーデザインなどの新しい概念を取り入れることで、環境に配慮した製品やシステムを作り出すことができます。デザインにおいては、生産工程から廃棄までを考慮した循環型の製品を作り出すことが重要です。将来の地球を考える上で、環境に配慮した製品やシステムを作り出すことが求められ、それによって地球の生態系を保護し、人間が持続可能な未来を生きるための環境を作り出すことができます。デザイナーとして、地球中心設計の理念を念頭に置いて、サーキュラーエコノミーやサーキュラーデザインなどの新しい概念を取り入れ、地球と共存するデザインを模索していくことが大切です。





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