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マンガリッツァ豚を体験してきました

「食べる国宝」、と聞いて何それ、と思う人は多いと思う。宝は食べるものではない。だがそれが家畜なら話は違ってくる。それがハンガリー原産のマンガリッツァ豚だ。

日本で唯一マンガリッツァ豚を生産している、株式会社丸勝の梶原一生専務取締役にマンガリッツァ豚を紹介してもらった。彼はニュージーランドで学び日本青年会議所の副会頭も務める異色のキャリアを持つ。

そもそもマンガリッツァ豚とは?

ハンガリーと聞いて何を思い浮かべるだろうか?美しいブダペストの街や音楽を思い浮かべる人もいれば、ヨーロッパということはわかるけど、全然知らない、という人も多いと思う。

私の中ではハンガリーといえば、メシのうまいところ、というイメージである。オーストリア=ハンガリー帝国があったことから宮廷料理的なものもうまいし、オスマン帝国の時代もあったので、トルコ料理的なテイストもある。まさに様々な食文化の結節点であることから、味の種類が多くて美味しい。

そんなハンガリーが、「あまりにうまい!」ということで国宝に指定し保護しているのがハンガリー固有種のマンガリッツァ豚である。細かい説明はwikipediaに譲るとして、品種改良されまくっている豚としては相当に古い血統の豚ということである。

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美味しいの?

御託はいいから味はどうなの?ということで、マンガリッツア豚を使ったハンガリー料理を頂きに十勝ヒルズのFarm Restaurant Vizに連れて行ってもらう。実はここも株式会社丸勝が運営している。

ゴルフ場か?と思うぐらい長いアプローチを通ってたどり着くレストランVizに入ると、美しいエゾジカのシャンデリアが飾られている。全て本物の角だそうである。ここでは、ハンガリーのシェフが地元十勝の食材を使って腕を振るっている。東京でもなかなか美味しいハンガリー料理店は見当たらないというのに、帯広でハンガリー料理?と思ったが、梶原氏によれば北海道とハンガリーは緯度が同じぐらいで風土もよく似ており北海道の作物によく合うそうだ。

丸勝では、マンガリッツア豚を生産するにあたって、なんと餌の原料から料理まで全てプロデュースする「オールイン・オールアウト」という考え方を取っているという。理屈はわかるけど、「そこまでするか?普通」という感じである。期待に胸が高鳴る。ちなみに丸勝の作るマンガリッツア豚の正式名称は「十勝ロイヤルマンガリッツァ豚」というらしい。

ヘッドシェフ ガライ・アダム氏の作るフルコースは全品紹介してもおかしくない味と豪華さであったが、長くなるので3品だけ紹介する。

マンガリッツア豚のラードのパテ

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一つ目は料理ではなく、パンにつけるためのパテである。これがマンガリッツア豚のラード(脂身)でできている。まずこれがヤバい。マンガリッツア豚のラードは通常の豚と違い、融点が26度~28度と低い(通常は35度~40度)。つまり舌の上でとろける。トロトロである。私の妻は常日頃バターを食べるためにパンを添える食べ方を愛好していて、いつもちょっと引いていたのだが、このパテはまさにパテにパンを添えて食べたい一品である。

ソリャンカ(東欧のスープ)

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2品目はスープである、このスープを口に入れて一口目に感じることは「ぬるい!」ということである。冷製スープというわけでもなく、ぬるい。おおよそ25,6度といったところで、「冷めてるの?」と言いたくなるが、もちろんこれは狙っている。なぜぬるいのか、それは前記のようにマンガリッツア豚のラードの融点が低いからである。スープが熱いと溶けてしまう。写真にある半透明の刺身のようなものがラードである。これをすくって飲むと、スパイスのきいたスープの香りが鼻に抜け、ついでラードの甘さが口いっぱいに広がる。実に幸せである。

マンガリッツア豚ロースとハンガリーパスタ

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3品目はお待ちかねの豚ロースである。美しいピンクの肉と少々控えめな脂身が美しい。聞けばマンガリッツア豚の脂身は融点が低いため調理が難しく、高熱でしっかり焼いてしまうとパサパサになってしまうため、卸す先を選んでいるそうだ。さすがにフラッグシップレストランだけあって、お手本の調理である。

まずソースをつけずにかじってみると、ジューシーだけれども全くしつこくない。何しろいわゆる「豚臭さ」が全然ないことに驚く。「豚臭さ」がない理由は、マンガリッツア豚の特性に加え、十勝ロイヤルマンガリッツア豚は動物性のエサを全く食べさせていないからだそうである。

続いて濃厚なソースと合わせていただく。ハンガリー風のスパイスが香る少しエキゾチックなソースにあっさりした豚ロースがぴったりと合う。さらに、小麦粉を小さくこねて作ったハンガリーパスタと合わせると、ソースを良く吸ったパスタが肉をかむたびにソースを口の中に供給してくれるのでかみしめるほどにうまい。

おまけ:ハンガリーワイン

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美味しいハンガリー料理に合わせるのは、もちろんハンガリーワイン。日本では全く有名ではないが、ハンガリーも貴腐ワイン「トカイ」をはじめとして、評価の高いワインを作る所である。

注がれると香りはやや重めだが、口に含むと意外に重くない。梶原氏によれば、「ハンガリーワインは香りと味が一致しない面白さがある」とのことである。確かに意外性があって面白い。しかも後を引かないので、食事にぴったりと合う。やはりハンガリーはおいしい。

続く

翌日は十勝ロイヤルマンガリッツア豚の養豚場にお伺いした。長くなったので、次回に続く

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