第11回全世代型社会保障検討会議
第11回全世代型社会保障検討会議では、一定所得以上の高齢者に医療費の窓口負担割合を2割にする議論が行われている。ここでは、健康保険組合連合会から衝撃的な資料が出ている。
なんと、この12年間で高齢者医療拠出金は1兆1千億円増えており、保険給付費、事業費と合わせると、2兆円近く増えている。結果、保険料収入も一人当たり30%以上も増えなければならなくなっている。現役世代の膨大な負担増によって健康保険制度が維持されていることが明らかになっている。
結果として、起こっていることは給付と負担のアンバランスである。
もちろん現役世代は病気になりにくく、高齢者世代は病気になりやすいので、ある程度のアンバランスは仕方がないといえる。現役世代もそのうち高齢者世代になるわけで、若いうちに負担して、高齢者になって恩恵を受けるというのはおかしい話ではない。しかし、問題はこのシステムが持続可能なのか?という話である。
2020年から2025年のたった5年で、この12年間で増えた額を超える1兆8千億円が増加し、今後現役世代の負担は毎年3000~4000億円増加するということである。現役世代1人当たり3千円~4千円の負担増となる。一人当たりでみると小さく見えるが、例えば国民健康保険であれば軽減世帯は半数以上であり、年金受給者はほとんど満額の保険料を支払っていない。つまり、一部の現役世代、特に給与所得者(サラリーマン)の負担は大幅に増加せざるを得ないことになる。
このため、一定所得以上の高齢者に医療費の窓口負担割合を2割にする、という議論になるわけだが、厚生労働大臣の資料によれば、単身世帯で年収200万円以上の人を2割に引き上げても、財政効果は2290億円しかないという。
ということはこの政策は単なる緩和策であって、毎年3000億円~4000億円増える負担は、やはり現役世代か税金あるいは将来の税金である国債で負担しなければならないということである。
現役世代だけでなく広く薄く負担する消費税に比べて、健康保険料は直接所得を奪っていく。本当に健康保険制度が持続可能なのか、高齢者世代でも払える人には払ってもらうべきではないのか、現役世代は厳しく問うていかなければならない。