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『仮面ライダークウガ』第9話感想

第9話 兄妹(きょうだい) (その1)

 第7・8話は、クウガとしては新しい変身形態、グロンギたちとしては新しい敵たち、主人公サイドには彼らをサポートする人たちが加わりました。
 また、物語も五代や一条刑事、桜子さんといった中心人物たちから、夏目教授夫人とミカちゃんという、事件の被害者遺族というような、少し視野が広がった形になりました。ここからさらに物語の視点が広がっていきます。

 ということで本編です。

 品川区内。午前1時21分。
 一台の大型トラックがやってきて、倉庫の前まで停まる。運転手が気づいていたかどうか、トラックが入ってきた時に倉庫の中で灯された赤い光が窓から漏れている。やだもう、悪い予感しかしないんだけど……。

 運転手が入り口に目を向けると、シャッターの下側が一部歪んでいて、しかも少し開いている。中からは赤い光が漏れている。
 ダッシュボードの上の懐中電灯を手にして、運転手はトラックを降りる。
 倉庫のシャッターを上げ、懐中電灯の小さな明かりを頼りに中に入っていく。ねえ、やめようよ、絶対危ないよ……(それでは話が進まない)。

 運転手が倉庫の奥へと進む。大きな金属音と、野太いうなり声が聞こえる。もう怖い。
 運転手が立ち止まる。足元と床というローアングルのこの場面、運転手が立ち止まった場所の横に積まれていた段ボール箱には赤い液体(正体は知りたくないな)が飛び散っている。
 ちびっ子が見る朝の番組だというのに、本当に恐怖を煽る演出には容赦がないな……。

 「いらっしゃいませ」という機械の音声が響く。「誰かいるのか?」と思わず口にする運転手。倉庫の中を見渡すが、赤い電球が光っているだけ。
 運転手はさらに倉庫の中をゆっくりと進む。もう帰ろうよ……。

 運転手がふと足を止めて、大きな道具の影からさらに奥をのぞき込む。
 道具に囲まれたスペースに、何人かの人影が見える。
 ある者は道具にもたれかかり、ある者は腰かけ、ある者は手に何かを持ち、ある者は……何かを有刺鉄線で拘束した人体らしきものに野太いうなり声と共に打ち込んでいる。金属音は、何かを撃ち込んでいる時の音だったようだ。しかし周囲の者たちは特に何のリアクションもしていない。完全にヤバい奴らだ……。

 ヤバいものを見てしまい、「あぁ……!」と声をあげ、慌てふためいて運転手が後ずさる。うっかり床に落ちていたものを蹴り飛ばして音を立ててしまい、おまけに懐中電灯も落としてしまう。ホラーの常道だ!マズいぞ!

 物音に奥にいた者たちが一斉に振り返る。バラのタトゥの女に、ショートヘアの美女、ゴーグルのアイツに、第3号に……黒いシャツの男性体……って、誰だよ!今までいたっけ?まあいい、とにかくグロンギたち!
 そりゃヤバいことしてても、ヤバいことにノーリアクションなはずだ!

 そのまさに誰だよ⁉な男性体グロンギが、ニヤリと笑って歩き出す。カメラがグロンギ視点となり、腰を抜かして座り込んでしまった運転手にズンズン近づいていく。逃げることもできず、近づいてくる不審者に対して悲鳴を上げるだけの運転手。

 倉庫の外。わずかに開いたシャッターの向こうでは、赤い光が落とす影がうごめき、運転手の悲鳴だけが聞こえる。いやあああ!怖すぎる―――!

 OP。相変わらず、バラのタトゥの女の他のグロンギの名前が出てこない。それはさておき、この歌、この映像じゃなかったら冒頭の恐怖をずっと引きずってしまってるわ…。

 ポレポレ店内。午前8時45分。
 おやっさんがカレーを作っている。味見をし、「カレェ」と小声でダジャレを言う。さらに一口味を見ていると、2階から五代雄介が降りてきて挨拶をする。Gジャンに白いTシャツにジーンズという、爽やかさ100%な服装である。
 その爽やかさがまぶしい白Tシャツの胸のあたりに、黒で描いたクウガのマークが入っている。

 五代はおやっさんに、「コレどう?」と、Tシャツの胸元を引っ張ってクウガのマークを見せつける。
 無感動に「何だソレ?」と尋ねるおやっさんに、五代は自分のマークであり、クウガのマークなのだと主張する。全くピンと来てないおやっさんは、恋のクーガなら知ってるけどなとダジャレを返しながら小さなやかんを手に取り、「♪追いかけ~て」と歌い出す。

 五代が続きの「♪追いかけ~て」を一緒に歌った後で、「ちょ、それ『恋のフーガ』じゃない?」とノリツッコミを見せる。一瞬見つめ合い、おやっさんは黙ったままやかんの中身を容れ物に注ぐ。注ぎながら顔を上げて五代の顔を見るおやっさん。エヘヘと笑い出す二人。
 おやっさんは「知ってた?」と笑い、別の容れ物にもやかんの中身を注ぐ。五代はようやくクウガのマークを見せつけるのをやめ、置いてあったエプロンに手を伸ばす。

 何かもう、台本にあるとかないとか、どこまでアドリブとか考えること自体が野暮だな……。

 店の入り口の扉が開き、みのりちゃんがあいさつをしながら入ってくる。エプロンを付けながら、五代が「おう」と短くあいさつを返す。
 みのりちゃんはカウンターまで来て椅子にカバンを置くと、おやっさんが「久しぶりだね、みのりっち」と声をかける。「またその呼び方するぅ」と上着を脱ぎながらみのりちゃんが言うと、おやっさんは高級ブランドみたいだと上機嫌で返す。
 みのりちゃんがカバンを置いた席の隣りに座る。おやっさんとみのりちゃんが話す間、五代は何故か一度身に付けたエプロンをいそいそと外して折り畳む。

 やかんを置き、おやっさんが今日は休みなのかと聞くと、みのりちゃんはうなずく。「土曜日でちょうどよかった、今日」という彼女に、五代が前のめり気味に「ホントちょうどよかったよ、お前」と言い、笑顔で折り畳んだエプロンを差し出す。「え?」と思わず受け取りながらキョトンとした顔で兄を見るみのりちゃん。

 五代は桜子さんのところに行くので、自分の代わりに店の手伝いをしてほしいとみのりちゃんに言う。「でも今日は……」と言いかけた彼女に、「クウガのこと、解読した結果をもっと知りたいんだ」と真剣な顔で話す五代。そんな兄の顔を見つめるだけの妹に、「頼むな」と肩を叩くと、いそいそと五代は店を出て行く。

 兄の後ろ姿を見送り、立ち上がると、みのりちゃんは畳まれたエプロンを広げ、手慣れた様子で素早くエプロンを身に付けながらつぶやく。「お兄ちゃん忘れちゃってるのかなあ……、自分の誕生日」

 カウンターの奥で新聞を広げていたおやっさんが「そうか!」と壁に賭けた日めくりカレンダーを見る。「3月18日」の日めくりカレンダーがアップになる。
 「今日、そうか!」ともう一度言う(大事なことだから2回言ったね)おやっさん。
 カウンターの中に入ったみのりちゃんが「もう25だよ」とぼやくように言う。ええええ、あんなカッコかわいい25歳男子いる?いやいない。

 25歳と聞いて何を連想したのか、おやっさんが「アイツ、最近やたらヘトヘトになって帰ってくるんだよなあ」と不意にしみじみと言い出す。みのりちゃんが「え?」と驚いて振り向く。
「そのくせやる気満々っていうか、ノリノリっていうか……何なんだろ?」
 そう言っておやっさんはみのりちゃんを見る。みのりちゃんはおやっさんから視線を外し、考え込んでしまう。

 物語進行中に年齢も生年月日も明かされてしまう主人公もなかなか珍しい気が(笑)。
 季節の進行に合わせたのか、五代の髪形もちょっとこざっぱりして、ただでさえ可愛いのに、さらに魅力が増してましたね!

ということで、その2に続きます。

初出:2021年11月13日 2024年5月3日加筆修正

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