『仮面ライダークウガ』第9話感想
第9話 兄妹(きょうだい) (その5)
サイレンを鳴らして急行中の覆面パトカーの車内。また未確認生命体がらみの事件が起きたとの無線連絡に応答している一条刑事。場所は港区の台場だという……あれぇ……?
一条刑事は捜査本部からの無線を切り替え、五代雄介に(毎度のことながら、何故フルネームで呼びかけるのだろう?)、自分はお台場の方に向かうと無線で告げる。最初の事件現場にトライチェイサーで急行中だった五代は、近くに未確認生命体がいないかどうか探ってみると答える。
午前11時30分少し前。港区、つまり第二の事件現場。
水辺の遊歩道が現場で、遊歩道の土手の上に規制線が張られている。その手前で野次馬が捜査の様子を見ている。
駆け付けた一条刑事が、規制線のテープをまたいで(足が長い!)、きびきびと土手の階段を駆け下りていく。階段の下には、険しい表情で現場を座り込んで観察しているメガネの女性。
家族とのお出かけを満喫中のはずの榎田さんを事件現場で見つけ、一条刑事が驚いて声をかける。やはり来てしまったのか……。
彼女は「おお!」と手をあげて応じながら立ち上がる。そっと「お子さんは?」と一条刑事が尋ねると、榎田さんは「母に預けてきちゃった」と明るく答える。
近くにいて事件のことを聞き、つい来てしまったと話す榎田さん。せっかくの休みだったのにとおどけながらいう彼女の言葉に、思うところがあるものの何も言わず、かすかにうなずくだけの一条刑事。アンニュイな表情もステキである。
わずかな沈黙の後、仕切り直すように、榎田さんが一条刑事に「ねぇ、これを見て」と被害者が倒れていたあたりを示しながらしゃがみ込む。一条刑事も同じようにしゃがみ、手袋をはめた手で遊歩道に残された緑色の粉末に触れる。「灰ですか?……しかしこんな色……」と指先に付着した粉末を見つめる。
榎田さんが、犠牲者全員の遺体から、この緑色の粉末が少しずつ採取されていると告げる。ちょっと気になると言い、深刻な顔で考え込む榎田さん。その言葉に一条刑事もまた深刻な顔になる。
疾走するミカド号。それに合わせて疾走する柴崎訓練士と桜井刑事。「近づいてきましたね!」「恐らく!」と走りながら声を掛け合う二人。短時間ながらバディ感半端ない。頑張れミカド号!頑張れ人間たち!
豊島区内。午前11時半過ぎ。
元気いっぱいに走る犬と人間たちとは逆に、トボトボとはまさにこれと言った風情でみのりちゃんが道を歩いている。たどり着いた先は勤務先のわかば保育園。園庭で遊んでいた園児たちがみのりちゃんに気づき、名前を呼んで駆け寄ってくる。
年中さんから年長さんくらいと思しき女の子3人組で、この年頃の女の子らしいおませさんな口ぶりで、「いつも土曜日にはいないのに」とか「いけないんだよ、来ない日に来ちゃ」などとそれぞれに言う。いつも土曜に預けられている子たちなのだろう。そう、お休みの日には休むのだ(力説)。
暇になって何となく来ちゃったと答えるみのりちゃんに、女の子たちの一人が「分かった!デートがダメだったんだ!」とこれまたおませなことを言う。みのりちゃんはあら、というような顔をすると、「そういうことを言う子はこうだ!」と女の子の体をくすぐり始める。みのりちゃんを止めようとする他の女の子たち。微笑ましい……。
そこへ「ねえ先生、4号っていい奴だと思う?」と言いながら、こちらも年長さんか年中さんぐらいの男の子2人組が駆け寄ってくる。みのりちゃんが未確認生命体の4号かと聞き返すと、質問してきた男の子が「そうに決まってるでしょ」と答える。
すると女の子たちのまた別の一人が「悪い奴だよ。みかくにんたいせいめいだもん」と言う。いつの間にか女の子たちはみのりちゃんの前に一列に並び、男の子たちと向かい合っている。
「お前に聞いてないよ」と質問してきた男の子が言うと、「ああ、お前って言っちゃいけないんだよ」と女の子が言い返す。女の子の言い間違い方や口げんかの内容が幼児あるあるで、これまた微笑ましい。
そうだなあ、と相づちを打つみのりちゃんに、「いいから言って」とそれまで黙ったいたもう一人の男の子が言う。質問してきた男の子は、ママが読んでいた本にそう書いてあったからいい奴だと主張する。男の子たちの言葉を笑顔で聞いていたみのりちゃんは、「いい人でいてほしいよね、ずっと」としみじみと言う。妹としての切なる願いがにじんだ言葉である。
部屋でジャグリングの練習をしようとみのりちゃんが誘うと、子どもたちは大喜びになり、みのりちゃんと屋内へと駆けていく。かわいい子たちだ。
荒川区内。午前11時50分前。
川辺と言うか水辺の倉庫街で、トラックから荷物を降ろす作業に勤しむ作業員たち。岸辺のヘリに、メタリックシルバーの手が現れる。アイツが来たぞ、みんな逃げてえええ!
上陸したイカ型グロンギが、黙々と働く作業員たちの元へと向かう。突如現れたメタリックシルバーと言うか白い生命体にキョトンとする彼らに、グロンギ語で何かを告げるイカ型グロンギ。「お仕事いつもご苦労様です」と言っていないことだけは確かだと思う。
当然ながら慌てふためく作業員たち。一斉に走って逃げていく。走ったところで遠隔攻撃型なのでイカ型グロンギは余裕たっぷりである。逃げる作業員たちを見ながら、姿勢を整え、一度伸ばした右手を口元へと持って行く。
逃げる作業員たちをスローモーションで見せておくことで、イカ型グロンギが作業員たちを狙って口から粘液を吐き出すまでは実際にはごくわずかな間だと感覚的に分かるし、視聴者側も作業員たちがどうなるのか、ハラハラドキドキして感情移入する。王道演出の一つだけど、使い方がうまい。
そして、今来ないでいつ来るのかという絶妙のタイミングで、うなりをあげて駆けつけ……いや、飛んでくるバイク!イカ型グロンギを飛んできた勢いのまま前輪で突き飛ばす!当たりの強さに思わず声をあげながら、もんどりうって地面に転がるイカ型グロンギ!
やって来たのはもちろん、トライチェイサーに乗った我らが五代雄介!イカ型グロンギがゴロゴロ転がる間にきっちりバイクを停車する。身を起こし、やって来た相手を見るイカ型グロンギ。イカなのに表情筋固そうだから顔見ただけじゃ見てるのかにらんでるのか良く分からない。
ヘルメットをトライチェイサーに置き、イカ型グロンギの前に立つ五代。たっぷり時間を取って変身する。やっぱカッコいい。
赤いクウガに変身した姿を見て、イカ型グロンギが「クウガ!」と口にする。現代において赤いクウガを知っているのは第3号だけ(!)なので、彼から話を聞いたのか、超古代で出会っていたのかどうなのか。
イカ型グロンギが続けて割と長めに話すけど、もちろん何を言っているのか分からない。
話し終わるや否や、イカ型グロンギはキレキレの動きで口元に手をやり、口から粘液を吐く。目にもとまらぬ速さで飛ばされた粘液は、あっという間にクウガに付着して爆発・炎上する。クウガは後ろに吹っ飛ばされ、地面に倒れ込む。粘液が付着した右肩からは白い煙が上がり、装甲の表面が熱で溶けかかっていたり、黒く焦げていたり、衝撃でベコベコへこんだりしている。身を起こし、「何て奴だ……!」と驚くクウガ。
痛みと衝撃に息が荒いクウガに、軽やかに歩み寄ってくるイカ型グロンギ。2発目、3発目と立て続けに粘液を飛ばしてくる。横っ飛びで避けたクウガは、高くジャンプするとイカ型グロンギの頭に手を置いて1回転し、その背後に着地する。そのまま後ろからイカ型グロンギを締め上げる。振り払おうとするイカ型グロンギ。
わかば保育園の職員室。テレビではワイドショー番組が流れている。
職員室に入ってきたみのりちゃんが、中にいた女性保育士に声をかける。女性保育士が休みなのに保育園に来てよかったのかと尋ねると、みのりちゃんは笑顔で「一人でぼーっとしてても、何だかアレだし」と答える。
テレビでアラームが鳴って、緊急速報が入る。「まただ、未確認生命体」と言う女性保育士の言葉に、みのりちゃんがテレビに目を向ける。番組自体はそのまま進行しているが、画面の上部には荒川区で第4号と第21号が争っていることと付近の住民に避難勧告が出された旨のテロップが表示される。
「第4号」の文字が大写しになり、それを食い入るように見つめるみのりちゃんの目元がアップで映しだされる。
女性保育士はまさに他人事で「また4号がやってんだ。荒川区なら、一応この辺は平気かな」とお茶を飲みながらのんびり呟いている。強張った表情のみのりちゃんとは対照的である。
イカ型グロンギと今まさに戦闘中のクウガ。
当事者と関係者とあまり身近に考えてない人とを同時進行で見せてくるの、マジでえげつないな。
特別捜査本部。捜査本部付けの例の女性警官が全てのパトカーに向けて、ミカド号がたった今未確認生命体たちのアジトを突き止めたこと、場所が品川区であることを無線で連絡している。例の品川区の倉庫近くで、ミカド号と桜井刑事たちが物陰から様子をうかがっている映像が無線連絡の音声に合わせて画面に映る。
無線連絡を聞いた一条刑事が、ハンドルを切って倉庫へと向かう。
わかば保育園。職員室の外に出て来て、今まさに戦っている兄を思うみのりちゃん。妹を始めとした、色んな人のために戦う五代雄介。
イカ型グロンギとの戦いは、いかなる決着を迎えるのか……待て、次回!
今回も見どころ満載ですが、特に戦いや暴力を振るうことが好きではない兄が戦うことについて、心配と言うか不安に思うみのりちゃんと、誰かを守ったり被害を防ぐために戦うけど、本心ではやっぱり戦ったり暴力を振るうことが嫌なんだろうなと言う五代雄介であろうかと思います。
イカ型グロンギと戦っている時の五代の「オリャアアアア」という叫び声、敵に立ち向かうための気合とか、攻撃の雄たけびと言うより、戦うことや暴力を振るうことへの抵抗感を振り払うために発しているように聞こえてしまうんですが、皆様にはどう聞こえているでしょうか。
文章も8話の感想からの期間も長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。また次回も(次をアップするまで、まあまあ時間かかりそうだけど)よろしくお願いいたします。
しかし、これを書き上げた時の私はまだ知らない。次回をアップするまで、まあまあどころか、2年以上も時間がかかってしまったことを……。
初出:2021年11月13日 2024年5月8日加筆修正
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