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『王様戦隊キングオージャー』第7話感想

第7話 神の怒り


前回のあらすじ

 トウフ侵略という国際犯罪を犯した容疑でゴッカンで裁判にかけられたギラは、ゴッカン国王にして最高裁判長リタ・カニスカより無罪判決を言い渡され、自由の身となる。
 ようやくシュゴッダムに戻ってきたギラは、コガネとブーンの二人と久々の再会を果たす。
 しかし、心温まる時間は長くは続かなかった。シュゴッダムの人々がギラに気付いて取り囲み、王子が帰ってきたと喜び、ギラを胴上げする。歓迎ぶりに戸惑うギラ。
 
 しかし、突如として地帝国・バグナラクの王デズナラク8世と幹部のカメジムによるチキュー全土の電波ジャックが行われ、全人類を人質に取ったと脅迫される。
 その内容は、チキュー中の地下に穴を掘り、5王国それぞれの地下深くにバグナラクの繭を隠したこと。時間が来れば繭の中から巨大なバグナラクが現れ、破壊の限りを尽くすこと。無理に壊そうとすると繭が爆発すること。
 それらを避ける方法は、ギラをバグナラクに差し出すこと。
 
 シュゴッダムに姿を現したヤンマ・ガストが、ギラをある場所へと連れて行く。
 
 二人が向かった先はコーカサスカブト城。道中でヤンマはギラに、バグナラクの狙いとそうなった時のリスクを説く。そして、王子だと分かったことでラクレス側に付くのかと問い詰める。きっぱりと否定するギラ。
 
 コーカサスカブト城で、ラクレスの顔を見た途端に襲いかかるギラだったが、リタとカグラギ・ディボウスキに止められる。
 そして、ラクレスからギラは幼いころに誘拐され、行方が分からなくなったのだと明かされる。王族の誘拐と行方不明は王室の名誉に関わるため、ギラの存在そのものを隠蔽することになったのだ、と。
 これからは共にシュゴッダムを繁栄させようと語りかけるラクレスに、ギラは怒りをもって反発する。

 ギラによって明かされたラクレスの「民は道具、私が国だ」と言う言葉に、王様たちは無言でラクレスと一線を画す。
 リタとカグラギに抑えられていたはずのギラが、再びラクレスを襲おうとするも、側近のドゥーガによってあえなく捕らえられる。
 
 そもそも王様たちがシュゴッダムに集まったのは、バグナラクが仕掛けた繭への対策を話し合うためだった。
 リタがゴッカンにあったシュゴッドソウル……伝承によるとゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルを奪われたことを報告する。
 バグナラクの狙いはギラの能力で三大守護神を手に入れること。ギラを渡しても渡さなくてもチキューの一大事である。
  何はともあれ、バグナラクの繭をどうにかしなければならないが、それができるのはキングオージャーだけ。

 そして、ラクレスがいよいよ裏の顔を表す。
 五王国同盟を破棄し、キングオージャーをシュゴッダムのものとすること。シュゴッダムに下るなら、キングオージャーの力を分け与えると迫る。
 王様たちの間に一触即発の緊張が走る。
 
 さらに間の悪いことに、シュゴッダムの地表に現れた繭に、巨大サナギムが攻撃を加える。とりあえずは民を救うことが先決である。
 王鎧武装しようとする王様たちだったが、ラクレスによる妨害工作によりオージャカリバーが起動しない。
 居ても立っても居られないギラは、クワゴンに呼びかけて脱出を企て、ついでにオージャカリバーも取り返して逃亡してしまう。
 
 城の外にひとまず逃れたギラの前に、ゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルを持ったカメジムが現れる。カメジムは取引を持ち掛けるが、ギラはもちろん断る。王鎧武装してシュゴッドソウルを奪うべくカメジムに戦いを挑むが、まるで相手にされない。
 結局カメジムに逃げられ、一人で巨大サナギムを排除しようとする。
 
 シュゴッダムの街を移動するカメジムに襲いかかるカマキリオージャー。彼女の狙いもゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルだが、その攻撃はカメジムにまるで通じない。
 しかし漁夫の利を狙ったハチオージャーがシュゴッドソウルを手に入れる。

 バグナラクの繭に不安になり広場に集まってきたシュゴッダムの人々は、広場に現れたラクレスの姿と力強い言葉に安堵を覚える。そこへカグラギがやってきて、ゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルをラクレスに手渡そうとした時、ギラが素早く奪い取る。
 
 ギラの姿にさらに期待感が高まる人々。
 しかしギラは、ラクレスに剣を向け罵倒したため、人々の面前でラクレスによって国家の敵と断定される。ギラは恐れることはなく、ついにはシュゴッダムを奪ってやると高笑いする。人々は恐れおののき、騒ぎに駆け付けたコガネとブーンは呆れかえる。
 
 ギラは手にしたシュゴッドソウルを掲げ、ゴッドスコーピオンを呼び寄せる。呼びかけに応じて姿を現すゴッドスコーピオンことサソリーヌ。
 再び恐れおののく人々。ギラはサソリーヌに乗り込み、巨大サナギムたちの元へ向かう。
 
 離れた場所で見ていたヒメノ・ランは、ゴッドスコーピオンの名を耳にした時から明らかに様子が変わっている。燃えるような目でサソリーヌの姿を見据えてつぶやく。
「アレは、私のモノ……!」
 
 大きさも強さも段違いのサソリーヌは、あっという間に巨大サナギムを倒す。
 
 そのころ、街の広場では、ラクレスがオージャカリバーにそっくりな黄金色の剣を掲げて叫ぶ。「降臨せよ、キングオージャー!」
 
 サソリーヌの目の前に姿を現したキングオージャーは、あっという間もなくバグナラクの繭を空に放り上げ、カブトキャノンで撃ち抜く。
 シュゴッダムの人々は、当面の危機が去ったことに安堵する。
 
 不意に現れたキングオージャーに戸惑っていたギラだったが、クワゴンの姿を目にして本物ではないことに気付く。同時に、突如としてサソリーヌが暴走する。
 サソリーヌはそのままキングオージャーへと近づくと、尾の先の毒針を突き刺す。合体が解け、散り散りになるシュゴッドたち。
 それを見ていた人々は、三度ギラとサソリーヌに恐れおののく。
 
 赤い月が照らす中、城の前の広場に一人たたずむラクレス。「機は熟した」とつぶやき、黄金色の剣を静かに構えた……とさ。
 
 以上、第6話の創作あらすじでした。
 サソリーヌが出てきた穴、大きすぎて地盤沈下しないか心配です。

ラクレス様の決意表明

 シュゴッダムの町。夜明け前。
 叫び声とともにギラが地表に放り出される。体をしたたかに打ち付け、うめき声をあげる。
 その近くにはピクリとも動かないカブタン。カブタンを心配し、謝るギラ。
 大きな物音がして振り返ると、気が収まらないサソリーヌがはさみを振り回して周りの物を壊している。
 
 ギラがサソリーヌにキングオージャー(仮)を攻撃した理由を尋ねる。
 サソリーヌの攻撃を受けて合体が解除されたシュゴッドたちは、シュゴッダムの各地に散らばり、カブタンと同じく全く身動きをしない。
 
 夜明けが近づき、月明かりが薄らぐ空の下で向かい合うギラとサソリーヌ。そこにクワゴンが飛んできて、ギラをかばうようにサソリーヌに向けて威嚇する。サソリーヌもクワゴンにはさみや尻尾を振り立てるも、やがて穴を掘って地中に隠れてしまう。
 
 サソリーヌが立てた土煙が消えてなくなったころ、コガネちゃんとブーン君がようやく探し当てたと言った風情で駆けつける。
 二人はギラの腕を取る。隠れるよ、とコガネちゃんに差し迫った様子で言われてキョトンとするギラ。
「今、ギラ、マジの極悪人なの!」
 コガネちゃんの言葉に驚くギラ。ブーン君が急いで、と言いながらギラを引っ張る。
 
 OP&提供様カット。
 薄暗い空の下のコーカサスカブト城。城の前の広場にたたずむカブタン。カメラは城の右側から左側へと回るようにして、城とカブタンを映す。
 遠くの山の端にかかる太陽。城は陽光を受けて黄金色に輝く。逆光で影になったカブタンの眼が神々しく光る。
 
 綺麗だわー……コーカサスカブト城土産でこのミニポスター売ってたら絶対買う。
 ……あれ、ところでこれ、どっちが東でどっちが西?……あれえ?
 
 シュゴッダム。明るい日差しの中にそびえるコーカサスカブト城。
「ギラ王子はやはり、反逆者だった」
 城内の王の間では、玉座に座るラクレス様が険しい表情で語る。その眼差しは正面を見据え、左右のひじ掛けに腕を置き、両の拳を握り締めている。
 
 シュゴッダム。街の広場。
 ゴローゲさんをはじめとしたシュゴッダムの人々が固唾を呑んで一点を見つめている。通りかかった人々も、スピーカー越しに流れるラクレス様の声を聞きつけて集まってくる。
 彼らは、街頭用のモニターに映るラクレス様を見ている。
 
 ラクレス様の言葉は続く。
「ヤツは敵に奪われた三大守護神の1体を使い、キングオージャーを戦闘不能にした」
 ラクレス様がわずかに顔を伏せ、正面から視線を外し、悲痛な表情を浮かべる。「……バグナラク側に寝返ったのだ!」
 
 街の広場。
 寄り添い、腕を組みながらラクレス様の言葉を聞いていた男女のうち、女性が信じられないという風に声を上げる。男性が「王子様が何で……?」とつぶやく。
 二人の言葉を耳にし、ゴローゲさんが熱く証言する。
「いや、俺は見た!ギラの本性を!」
 
 ゴローゲさんは思い返す。ギラが「俺様が世界を支配する!」と叫び、サソリーヌを召還するところを。
  その恐ろしい光景が目の前にあるかのように、ゴローゲさんが体を震わせる。
 
 コーカサスカブト城・王の間。
 ラクレス様が玉座から立ち上がる。右手を前に差し出し、正面を、カメラの向こうにいるであろう人々をひたと見据える。
「チキューの民に約束する。人類の敵、反逆者ギラを打ち倒すと!」
 モニターの中で、決意の固さを表すように、ラクレス様が強く右手を握り締める。
 
 第6話が昼~夜、第7話冒頭が夜明け前だったので、ラクレス様の演説は朝早く~午前中のどこか、ということになるでしょうか。
 目くるめく日々を過ごすシュゴッダムの人々に向けて、9割の事実に1割のウソを混ぜて語るラクレス様の巧みさよ。

王様たちの疑念と思惑

 シュゴッダム。別の町の一角。
 医療者としての衣装を身にまとったヒメノ様が、セバスチャンを連れて通りを颯爽と歩きながら尋ねる。
「何でシュゴッドたちが使えなかったか、分かった?」
 
「ラクレスの黒いゴッドクワガタが関わってる。それ以外はこれからだ」
 ヤンマ君が、ズボンのポケットに手を突っ込みながら肩で風を切って歩きつつ答える。後ろではシオカラ君が伸びをしながら付いて来ている。
 
 ヒメノ様たちとヤンマ君たちは同じ方向に向かっている。
 ヒメノ様があごに手を当て、考えながらつぶやく。
「何故だか分からないけど、アレだけはゴッドスコーピオンの毒が効いてなかった」
 
 ヒメノ様の言葉に合わせて流れる、ゴッドクワガタZEROの姿。
 
 ヒメノ様たち、ヤンマ君たちが向かう先には、ゴッドカマキリとゴッドトンボがいる。どちらも舗装された通りの上に倒れ込んでピクリとも動かない。
 ヤンマ君が足を止め、「いっちゃんやべえのは……」と、彼方を振り返る。他の三人も、足を止め、同じように彼方を見つめる。その眼差しが捉えたのは……。
 
 シュゴッダム。剣の道と呼ばれる空中回廊。
 並んで歩くカグラギ殿とリタ様。
「……ラクレス殿は、ギラ殿なしでキングオージャーを使えるようになった」
 ヤンマ君の言葉の後を引き取るように、カグラギ殿が語る。何て親切設計!
 リタ様が足を止める。カグラギ殿も足を止め、リタ様に顔を向ける。
「だから同盟を切り捨てたんだ」
 色々と腑に落ちた、と言う風にリタ様が呟く。
 再びコーカサスカブト城に向けて歩き出すリタ様とカグラギ殿。
 
 コーカサスカブト城・王の間。
「全て計算していたのですか?」
 ドゥーガさんが静かに問いかける。
 ドゥーガさんとボシマールさんが、玉座の左右に立ち、ラクレス様と向かい合っている。
 ラクレス様は玉座の左側に寄りかかるようにして座り、左ひじをひじ掛けについて頬杖をついている。ドゥーガさんに「まさか」と答える声は優雅で柔らかい。
「ゴッドスコーピオンの反撃は予想外だった」
 その割にはラクレス様のどこにも驚きの余韻はない。
 
 ボシマールさんが右手の人差し指をピンと立てながら、笑顔で語る。
「しかし、何もかも都合がいい。民は団結し、ラクレス様の立場も盤石になります」
 
 昨日の名残で瓦礫が転がる広場で、ゴローゲさんを含むシュゴッダムの人々が、力いっぱいに手を振り上げ、ラクレス様の名前を連呼している。やはりゴローゲさんが声も動きもひときわ大きい。流石である。
 
 ボシマールさんが話している間、左の頬に添えるように当て、軽く曲げた左手の指先で自らの口元やあごの先にそっと触れているラクレス様。耳に入っているのかいないのか。
 色気……指先から醸される色気よ……。
 
 物思いにふけっていたラクレス様が、王の間の扉が開く音に我に返る。
 王の間に入って来たのはリタ様とカグラギ殿。事前に通告があったのか、ラクレス様もボシマールさんやドゥーガさんも特に驚いた様子はない。
 リラックスした姿勢のまま、ラクレス様が穏やかに問いかける。
「二人そろって話とは何かな?」
 
 リタ様が淡々と答える。
「私は立会人。提案があるのはカグラギだ」
 リタ様の言葉を受け、カグラギ様が笑みを見せる。
 悪巧みの予感がするぞ!
 
 ラクレス様と側近たちの3人の場面。余人を交えず、信頼が置ける者同士で話しているはずですが、最終回まで見た後だと、色んな行間があります。ドゥーガさんの言う「全て」は、どこからどこまでを指しているのでしょうか。
 ドゥーガさんは現場にいなかったので、誰から昨夜の顛末を聞いたのかが気になります。それともギラを探しながら、別の場所で一部始終を見ていたのでしょうか?

シュゴッドの復旧?治療?

 シュゴッダム。町の一角。
 舗装された地面に寝転がるゴッドトンボ。そのそばには何だか良く分からないけどとにかくすごそうな大きな機械が置いてある。
 ヤンマ君を筆頭に、ずらりと居並ぶシオカラ君やンコソパの三賢者たち。
「コレはゴッドスコーピオンが起こしたシステム障害だ。ンコソパのテックチームが復旧する」
 断固とした口調でヤンマ君が宣言する。ヤンマ君の言葉に合わせ、髪形を整えるような動きをして見得を切るテックチームの面々。
 
 同じく舗装された地面に寝転がるゴッドカマキリ。そのそばには、イシャバーナのクラゲ型の医療メカ=移動式汎用医療ユニット:クロナートゥスが置かれている。
 ヒメノ様を筆頭に、ずらりと居並ぶセバスチャンや医療スタッフたち。
「シュゴッドたちは未知の毒に侵されてる。イシャバーナの医療チームが治療に当たる」
 優雅な笑みをたたえつつヒメノ様が宣言する。ヒメノ様の言葉に合わせ、手にしている医療用の器具を見せつける医療チームの面々。
 
 ンコソパとイシャバーナ、それぞれのチームが少し距離を取って向かい合っている。
「システムのバグだっつってんだろ、スカポンタヌキ」
 そう言ってヤンマ君が前に進み出る。負けずにヒメノ様も前に出てくる。
「病気。素人は引っ込んでおけばいいじゃない」
 至近距離でにらみ合う二人。

 ヤンマ君がどっちの技術力が上かを決めるかと言えば、ヒメノ様が先にシュゴッドたちを起こしたほうが勝ち、と勝利条件をあげる。
 上等、と強気な笑みと共にヤンマ君が同意する。二人は同時に自分たちのチームに戻る。
 
 ヒメノ様の「クロナートゥス、展開」の指示と共に、イシャバーナの医療チームがゴッドカマキリの治療を開始する。
 ンコソパのテックチームも一斉に自分たちのデバイスを起動し、一斉にキーボードを叩く。シオカラ君が三賢者に一言ずつ声をかけるが、逆に三人にお前もやれ、とツッコまれる。
 そう言えば、シオカラ君がマイデバイス使ってるところ見たことないなw
 
 2体のクロナートゥスがゴッドカマキリの治療の主体のようで、クラゲの触手のように細長いアームをゴッドカマキリの体の上に伸ばしている。
 ヒメノ様は両腕を動かし、その両手に装着したグローブを通じて、遠隔で2体のクロナートゥスを操っている。迷いのない華麗ささえ感じる動きは、ヒメノ様の医療者としての優秀さを雄弁に物語る。
 愛用のマイデバイスを操作し、ゴッドトンボの修復にあたるヤンマ君の表情はいつになく真剣である。
 
 ヤンマ君とヒメノ様の対決場面について。
 これまでも何かと対立しているせいか、逆に何かと気が合うようになってきたように思います。似ていないようで似ているヤンマ君とヒメノ様が、いよいよそれぞれの国の王としてではなく、一人の人間同士として関わり合うようになります。
 
 本来はそれぞれのシュゴッドが一大事のため、結構深刻な事態のはずなんですが、ヤンマ君とヒメノ様のキャラクターと、遊び心があり過ぎる効果音やBGMによりドタバタコメディと化しています。前の場面が重めのため、このタイミングで「フフッ」となることで、気分がリセットされて続きが見やすくなります。緩急の塩梅が絶妙です。
 
 どうでもいいのですが「汎用」と言うワードに、人型の決戦兵器を連想された方、もれなく同志です。

グンダジーム部隊、出動せよ!

 地帝国・バグナラク。王の間。
「ついうっかり不覚にも、油断して奪われてしまった秘宝のおかげで、千載一遇の好機が」
 腕組みをして立っているデズナラク8世の目の前で、カメジムが身振り手振りを交えてゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルを奪われた言い訳をしているが、まるで悪びれていない。むしろ人差し指を立てながら、同意を求めるようにデズナラク8世を振り返る。
 デズナラク8世は腕組みを解きながらカメジムの方を向き、嘘つけと言わんばかりに「計算づくだろう」と言う。含み笑いで応じるカメジム。
 
 デズナラク8世が足音を響かせて前に出る。
「カブトムシとサソリ、2大秘宝が揃った」
 バグナラクの天井壁画、カブトムシとサソリの絵が映し出される。
「ギラにも操れない強大な力」
 期待と決意を込めて、デズナラク8世が強く拳を握り締める。
 確信のこもった含み笑いをして、カメジムが必ずデズナラク様に献上する、と臣下らしく頭を下げながら返答する。
 
 頭を上げ、姿勢を直したカメジムが大きな声である怪ジームの名を呼ぶ。
 すると、どこからともなく複数のリズミカルな足音と掛け声が聞こえてくる。映ったのは足元だけだが、複数のサナギムがきっちりと足並みを揃えて行進してくる。ウソだろ!

 サナギムたちの前に名を呼ばれた怪ジーム=グンダジームが現れる。こちらもまだ足元だけ。
「ぜんたーい、止まれ!!!」
 グンダジームの指示に、一斉にサナギムたちの足が止まる。ウソだろ!!
「右向け―、右!!!」
 続けての指示に、グンダジームはもちろん、サナギムたちも綺麗に回れ右をする。おいおいウソだろ!!!しかも、サナギムたちはガンショベルを〈捧げ筒〉の形にして立っている。誰一人としてぶっ放さない。ウ・ソ・ダ・ロ!?
 
 サナギムたちの前に立つグンダジームが「ガイ・ガイ・チュー!」の掛け声と共に敬礼をする。サナギムたちは「ガイ・ガイ・チュー」の掛け声の時だけガッツポーズをして(ちょっとカワイイ)、再び〈捧げ筒〉の形できちんと立っている。信じられん……。
 グンダジームが意気揚々と宣言する。
「我が部隊が、作戦を成功させてご覧に入れます!!!」
 
 ここでのデズナラク8世とカメジムについて。
 デズナラク8世は、カメジムの頭脳のキレについては大いに認めるところがあるようです。カメジムの性格もある程度は飲み込んでいるようで、言い訳する気がない言い分にも、どこか面白がって聞いている節があります。それでいながら、信じ切って頼り切っているわけでもなさそうです。

 カメジムも、デズナラク8世が意外にジョークやユーモアが通じる所や、ただ自分を信じ切って頼り切っているわけではない所が逆に心地いいのか、ノリノリで小芝居を打っています。今のところ、戦隊史上でも指折りの名コンビです。
 
 グンダジームとサナギムたちについて。
 グンダジームは軍隊アリのBNAを持つ怪ジームです。軍隊アリなので軍隊っぽい服装をしています。他の怪ジームは服を着ていないのに、何でだw
 つばが広い帽子とか、カーキ色っぽいシャツとか、サスペンダーと吊りズボンとか、どうにもこうにもアメリカの南北戦争ごろっぽいような……。違ったらごめんなさい。

 そして胸に下がる勲章や、肩に付いた階級章は、何が基準で誰が作って誰が授けた物なんでしょうか……いやその前に、どこでそのシステムを知ったのでしょう?

 それはそれとして、グンダジームの本来はお腹の部分が、まるで尻尾のように動くたびに揺れるのが面白かわいくて、ついそちらに目を奪われてしまうの、私だけですかね……?
 怪ジームもそれぞれに(恐らく永遠に解けない)謎と面白みがあります。
 
 サナギムたちも、これまでの話の中で誰から学ぶのか分かりませんが、簡単なチキュー語なら話せること、どこで学ぶのかガンショベルは自在に操れることから、知的レベルはそこそこあることが分かります。だから訓練を施せば、行進だって敬礼だってできます。教育って大事……あれ?これ行間?

 シュゴッダム。ギラたちの児童養護園。
 日差しの下、一人の兵士が養護園を訪れる。第1話で税金の徴収に来たあの兵士だ。もしかしてこの地区の担当なのだろうか。
 児童養護園の食堂に入ってきた兵士が、居丈高に反逆者であるギラをかくまっていないかと尋問する。
 
 食堂にいるのはコガネちゃんやブーン君などの子どもたちばかり。コガネちゃんが大きくため息をつき、高笑いをして邪悪の王を自称するヤバい奴をかばうわけがないとうんざりした口調で兵士に答える。ブーン君が同意し、他の子どもたちも一斉に大きくうなずく。
 兵士はコガネちゃんの言い分や子どもたちの態度に違和感を覚えず、ふっと小さく笑って「そうだな」と緊張を解いたようにつぶやく。その表情から、この兵士さんは実はいい人だろうという確信が持てる。
 難儀なお仕事、ご苦労様です。
 
 シュゴッダム。都市を望む郊外。
 霧か霞か、白くかすむ巨大な機械樹。彼方を見つめるグンダジーム。その後ろにはガンショベルを手に姿勢よく並ぶサナギムたち。
グンダジームが手にした無線機のスイッチを押して指示する。
「偵察任務、開始!」
 
 シュゴッダム。街の広場。
 巨大サナギムやらサソリーヌやらが散らばしていった瓦礫が転がる中、行進しながら現れたサナギムたち。グンダジームの指示を受け、シュゴッダムの人々に襲いかかる。片付けに勤しんでいた人々が悲鳴を上げる。

 意外なのはゴローゲさんで、逃げると思いきや、何とほうきでサナギムに立ち向かう。武闘派だな。
 ゴローゲさんはサナギムの攻撃をほうきの柄で受け止めながら、ギラが呼んだのだと絶叫する。
 
 養護園の食堂。
 ゴローゲさんの叫ぶ声が聞こえたのかどうか、兵士が飛び出していく。
 すると、食堂の隅に積み上げられた様々な物の陰から、小物を散らばしながらギラが出てくる。焦りと悲壮感もあらわに「僕が……!」と食堂を飛び出そうとする。
 ギラの前にコガネちゃんとブーン君が立ちはだかる。ギラに負けないくらいの悲壮感ですぐに捕まって今度こそ死罪だ、とコガネちゃんが必死に説得する。ブーン君も今は王様に任せるしかない、とギラに訴えかける。同じ思いの子どもたちが、コガネちゃんとブーン君の後ろに並ぶ。
 どうすべきか、思い悩むギラ。
 
 街の広場。
 落ちている瓦礫を背に、座り込んでいるゴローゲさん。やはりサナギムの方が強く、手にしていたほうきは地面に落ち、目の前で今にも斬りかかろうとするサナギムに声を上げて怯えている。
 そのサナギムが背中から一刀で斬り伏せられて、倒れる。ゴローゲさんを救ったのはリタ様だった。
 
 広場ではサナギムが暴れ回り、人々が逃げ惑う。リタ様は休む間もなくサナギムを次々に倒す。その後ろには、オージャカリバーを振るうカグラギ殿の姿が見える。
 二人は同時に王鎧武装する。ちなみにカグラギ殿は短縮バージョン。

 逃げ遅れて座り込んでいる人々に襲いかかろうとするサナギムたち。ハチオージャーが逃げなさい、と声をかける。立ち上がって逃げる人々。
 パピヨンオージャーは黙々とサナギムを倒していく。

〈神の怒り〉

 別の町の一角。
 イシャバーナの医師長であるエレガンスさんが「レディファーストという言葉をご存じなくて?」と丁寧かつ強く言い放つ。後ろで医療器具を掲げて圧をかける医療スタッフたち。物理的に攻撃したら痛そうだけども……。
 ンコソパの三賢者のリーダー格でもあるアッカが「勝負に男も女も関係ねえ!」と負けずに言い返す。アッカの左右にくっついて目をむき威圧するウスバとマユタ。
 
 何ですって、と怒りが頂点に達したエレガンスさんが前に出て、アッカを突き飛ばす。日ごろから体力も筋力も必要である医療従事者の突き押しは、日ごろから体力も筋力も必要なさそうなテックヤンキーの3人をまとめて後ろに下がらせる。
ウスバとマユタが離れた後も、アッカをズンズン突き押しするエレガンスさん。
 
 揉めている気配を察して駆けつけるシオカラ君とセバスチャン。シオカラ君はアッカに飛びつく。思わず抱っこしてしまうアッカ。セバスチャンは間に割って入って止めようとするが、エレガンスさんに払われたせいか勢いがあり過ぎたせいか、コロリと地面に転がってしまう。
 エレガンスさんがアッカに、セバスチャンが倒れたのはそちらのせいだと言いがかりをつける。ヒドイ。
 こんなに騒々しい中、他の医療チームメンバーもテックチームメンバーも、自分の作業に集中している。
 
 やいのやいのと騒ぐ声が収まらない中、少し離れた場所では、地べたに座り込んで愛用のデバイスを操るヤンマ君と、立って医療用グローブを付けた手を動かすヒメノ様が背中を向け合い、それぞれの作業に没頭している。
 
 ヒメノ様は手を止めないまま「おたくの品性の無い方々に妨害されてるんですが」となかなか失礼な言いがかりをつける。
 ヒメノ様が言い終わらないうちに、ヤンマ君がなぜ出しゃばって来たのかと問いかける。「人にやらせてワガママで奪うのがてめえだろ」と、こちらもなかなか失礼な言葉を添えて。
 
 それまで休まず動かしていた手を、ヒメノ様が止める。しばしの沈黙の後、意を決して語り出す。
「私のパパとママは、15年前のあれで亡くなった」
 背中で聞いていたヤンマ君も手を止める。
「……〈神の怒り〉の犠牲者か」
顔をわずかにヒメノ様の方へと向ける。「災害とこれは関係ねえだろ」と言う声は、淡々としながらもどこか優しい。
しかし、ヒメノ様は一点を見据えて「災害じゃない」と断言する。

 15年前。イシャバーナ。
 無数のセミ型シュゴッドが飛来し、国中のありとあらゆるものに襲いかかっている。夜空は厚い雲で覆われ、稲妻が絶え間なく降り注ぐ。城下のあちこちで立ち昇る炎と煙が雲を赤黒く照らし、吹きすさぶ風の中を火の粉が舞っている。
 
 フラピュタル城城内。
 医療スペースである大広間の床の上には、壊れた物や倒れたものが乱雑に入り乱れている。物がない場所はケガをしたイシャバーナの人々が治療を受けるために座ったり寝かされたりしている。その合間を、イシャバーナの医療関係者が忙しく動き回り、治療に当たっている。
 
 城の外でシュゴッドたちが立てる破壊音が中まで響いている。まだ子供だったヒメノ様も、この非常事態には王女ではなく医療チームの一員として人々の手当てをしていた。とある女性が娘は大丈夫かと問う声が聞こえて、ヒメノ様がふと顔を上げる。
 
 点滴治療を受けている女性に、その母親と思しき女性が寄り添っている。二人のそばにはイシャバーナの医療用の衣装をまとう男女の二人組がいて、治療に当たっている。この二人だけが、他の医療スタッフよりも衣装にゴージャスな装飾が施されている。
「パパとママは、最高の王様で、最高の医者だった」
 この二人が、イシャバーナの統治者であり、最上級の医師であり、ヒメノ様のご両親であった。
 
 ヒメノ様のお父様=ディード様が、輸血袋をありったけ持ってくるようにヒメノ様に指示を出す。この時はヒメノ様は王女ではなく医療チームの一員として、素直に応じて輸血袋を取りに行く。
 人の命がかかった非常事態なのである。子どもだろうが何だろうが、動ける者が動かなければどうにもならない。
 
 ヒメノ様のお母様=メタリー様が、あちらこちらにいる患者たちを安心させるように声をかけて回る。その中に、明らかにイシャバーナ国民とは思えぬ、黒づくめの服装の人物がいる。頭からフードをすっぽり被ったその人物は、さりげなく周囲の様子をうかがっている。
 
 箱の中の輸血袋を全て手にして、ヒメノ様が振り返った時。
 話し合うディード様とメタリー様に近寄る黒づくめの人物がいる。黒づくめのソイツは、独特のデザインの注射器を手に、静かにヒメノ様のご両親に歩み寄る。
 
 ソイツはいきなり、ディード様の首筋に注射針を突き刺した。不意の痛みに、ディード様が刺された所を押さえる。後ろを振り向きながら、力なく倒れていく。
 目の前の出来事に、メタリー様が驚き、混乱したように叫ぶ。黒づくめのソイツはお構いなしにメタリー様の肩を押さえつけると、あっという間にその首筋に注射針を突き刺す。苦しみながら崩れ落ちるようにメタリー様が倒れる。
 黒づくめの人物は、何事もなかったように二人から離れていく。
 ディード様が、苦しみ悶えるメタリー様のそばへと力を振り絞って這っていくも、力尽きて床に伏せてしまう。
 
 我に返ったヒメノ様は、持っていた輸血袋を全て放り出すと、二人に呼びかけながら駆け寄る。
 ご両親のそばにひざまずき、ヒメノ様は声をかける。
 ディード様もメタリー様も見る見るうちに弱っていき、体の表面が何とも言えない忌まわしい色合いのまだら模様に変色する。
 父母の体を揺すり、声をかけ続けるが、二人はすでに帰らぬ人となっていた。
 
 ヒメノ様が顔を上げ、何かを目にして立ち上がり、駆け出す。
 バルコニーで立ち止まり、きつく見据える眼差しは、一体のシュゴッドの足につかまり、今にも飛び去ろうとする黒づくめの人物を捉える。
 ソイツはヒメノ様の姿を認めると、まるで鼻で嗤ったかのように小さく頭を揺らす。ヒメノ様の堪忍袋の緒が切れる。
 
 シュゴッドが黒づくめの人物をぶら下げたまま空にゆっくりと飛び立つ。待て、と厳しくヒメノ様が声を放つが、空を飛び交う無数のシュゴッドたちの中へと、そのシュゴッドも紛れてしまって見えなくなる。
 その場に立ち尽くしたまま、じっと空を、空の彼方に消えた父母の仇を見据えるヒメノ様……。

贅沢者の特権

  現在。シュゴッダム。
「……私は見た。あれは人が起こした事件」
 大人になった、今のヒメノ様が断言する。
 しかし、ディード様とメタリー様のご遺体からは未知の毒が検出されたが、サソリの毒に似ていること以外は分からなかったと続けた声と表情は、15年前の少女のようである。
 
 背中で聞いていたヤンマ君が「だからゴッドスコーピオンにこだわってんのか」とつぶやく。淡々としているようで、その声には悼みが含まれている。
 医療用バイザーを外したヒメノ様が「アレは私がもらう」と決然と言う。
「毒の成分を解析して、これ以上同じ被害者が出ないようにする」
 ヒメノ様の口調が語るほどに熱を帯びる。その眼が涙で潤む。
「バラッバラに分解して、パパとママの……!」
 
「敵討ちにはなんねえぞ」
 ヒメノ様が全て言い切らないうちに、ヤンマ君が冷静に先回りして否定する。ヒメノ様は息を呑み、少しだけヤンマ君の方に顔を向ける。
「シュゴッドはただの機械だ。〈神の怒り〉は人間の仕業だって、お前が言ったんだろ」
 ヤンマ君もまた、少しだけヒメノ様の方を振り返ってそう続ける。ヤンマ君は眼差しだけを流し、自分の中の何かを見つめるように告げる。
「責任は全部、命令する人間にある」
 
 ヒメノ様が体ごと振り返り、ヤンマ君に激しく詰め寄る。
「大切な人を失ったことがない人には、分かんない……」
 ヤンマ君は顔だけをヒメノ様に向けて「ああ、分からないね!」と激しく言い返す。しかしそれは、ヒメノ様じゃないから分からない、と言う意味ではなかった。

 ヤンマ君は愛用のマイデバイスに向き直り、作業の続きに取り掛かる。
「俺は親の顔も知らない。失う悲しみってのは、贅沢もんの特権だ」
 そう語るヤンマ君の背中には、ヒメノ様とは違う寂しさと悲しみがある。ヒメノ様は静かに思いを巡らせる……。
 
 ヤンマ君とヒメノ様が深刻に話し合っている間も、ずーっと揉めていたンコソパのチームとイシャバーナのチーム。ずーっと仲裁をしているシオカラ君とセバスチャン。そのセバスチャンの目が、サナギムの団体様を捉え、「敵だ!」と叫ぶ。
 すぐにヤンマ君とヒメノ様が駆けつける。ヤンマ君はデバイスをシオカラ君に預けながら、手を止めるなと指示を出す。ヒメノ様はセバスチャンが捧げ持つボードからオージャカリバーを手に取り、同じように治療が最優先だと指示を出す。
 ヒメノ様とヤンマ君が同時に王鎧武装する。
 同時にサナギムの群れへと飛び込んでいくカマキリオージャーとトンボオージャー。
 
 ヒメノ様とヤンマ君の場面について。
 ヒメノ様がゴッドスコーピオンにこだわっていた理由が明かされます。そして、それは〈神の怒り〉という過去の大事件に絡むものでした。
 第1話でシュゴッダムをバグナラクの大軍勢が襲撃した際、人々が〈神の怒り〉だと口にしていたこと、ンコソパ生まれンコソパ育ちと思われるヤンマ君がすぐに思い当たったことから、この〈神の怒り〉はイシャバーナだけではなく、チキュー全体を覆った大災害であることが分かります。
 それ故に、何かにつけて〈神の怒り〉による影響が今後の物語で折に触れて現れます。
 
 そしてこの〈神の怒り〉を巡るエピソードは、第7話の時点では誰も想像していなかったようなドエライ展開となります。『王様戦隊キングオージャー』あるある、ですね。
 
 恐らくずっとお互いの悪い所ばかりが目に入っていたヒメノ様とヤンマ君が、お互いに知らなかった側面にそっと触れ合った場面でもあります。「王様」のフィルターを外し、フラットな感情で人間同士として向き合えるようになったというか、意外な共通点を見つけたというか。
 
 二人の意識がここで少しだけ変わっていることが、王鎧武装の後にサナギムたちに向かって同時に駆け出して行く姿で伝わります。
 
 王様たちが個々にギラだけに向けていた関心が、徐々に他の王様たちにも向けられていきます。

ゴッドカブト電撃回収作戦

 シュゴッダム。別の街の広場。
 1体のサナギムが、広場で動かない……動けないカブタンを見つける。物陰から、無線でカブタンを見つけたことを報告する。
 任務を達成した喜びか、カブタンに何か思うところがあるのか、無線機を握る手には力が入り、ブルブルと震えている。
 
 シュゴッダム。郊外。
 無線で報告を受けたグンダジームが偵察完了と叫び、無線を切る。後ろに並んでいるサナギムたちを振り返る。
「これより、ゴッドカブト電撃回収作戦を開始する!」
 高らかにグンダジームが次の作戦開始を告げると、サナギムたちが「ガイ・ガイ・チュー!」とポーズを取りながら応じる。
 
 グンダジームは琥珀色に光る何かを両手で包み込むように持ち、一心にかぶりつく。サナギムたちも、同じように手の中の光るモノをムシャムシャと食べ始める。
 食べ終わるや否や、グンダジームやサナギムたちの体が青っぽいような紫っぽいような透明な繭のようなものに包まれ、あっという間に巨大化する。
 
 ダンジーム、ボダルジーム、フンジームにタニジームやジゴクジームも、そして巨大サナギムたちも、こうやって巨大化していたのか……しかし何を食べているんだろうな?とお思いのあなた、ちゃんと後々に明かされます。そしてこれも行間です。
 
 ギラたちの養護園。
 巨大グンダジームが吹き鳴らす笛の音が、シュゴッダム中に響き渡っている。さすがにギラも子どもたちも何事かと外に出てくる。コガネちゃんが「何あれ……」と呆然とつぶやく。

 それもそのはず、巨大サナギムが一列に並んで歩いているだけでも驚くというのに、その後ろから見たことがないバグナラクが笛を鳴らし、掛け声をかけながら歩き去っていくのだ。シュールと言うか、悪夢と言うか、とにかく非日常的である。
 サナギムたちの行く先を見定めつつ、ギラが駆け出して行く。
 
 街の一角。
 カマキリオージャーとトンボオージャーががサナギムたちを倒しまくっている時。
 不意に笛の音が聞こえてきて、トンボオージャーがそちらに顔を向ける。
 見れば、一列に並んだ巨大サナギムたちと新手の巨大バグナラク=グンダジームがカブタンに向かって進んでくる。
 シュールな光景に思考を止めることなく、トンボオージャーはバグナラクの襲撃に「やっべえ!」と口走る。
 
 グンダジームが「全体、止まれ」と号令をかける。ピタリとサナギムたちの足が止まる。次にグンダジームがカブタンを奪うように命令する。するとサナギムたちはダッシュしてカブタンの周囲を取り囲む。
 突然のことに、トンボオージャーだけでなくカマキリオージャーも、巨大サナギムたちを見ている。等身大サナギムたちは倒し終わったのだろう。
 二人が同時に「え!?」と声を上げて驚く。
 
 何と、巨大サナギムたちはカブタンをひっくり返して担ぎ上げ、グンダジームの笛に合わせ、足並み揃えて運び去ろうとしているではないか!
 トンボオージャーがシオカラ君に、ゴッドトンボの修復の進捗状況を荒々しく尋ねる。
 
 シオカラ君は三賢者のデバイスのモニターを見ながら、まだ11%で時間がかかると報告する。
 エレガンスさんがセバスチャンにこちらも同じく、と答える。セバスチャンは見つめていた懐中時計を苛立たしげに閉じ、大股に歩き出す。
 同じように進み出たシオカラ君とセバスチャンが目を合わせる。同時に同じことを考えていたであろう二人は、同時にあることを決断し、同時に力強くうなずく。
 
 トンボオージャーがギラは何をやっているのかと毒づく。カマキリオージャーが罪人が出てこられるわけがない、とツッコむ。
 その時、地面が大きく揺れて、地下深くからサソリーヌが姿を現す。はさみと尾を振りかざし、空に向けて咆哮する。
 またしても驚く二人。
 
 サソリーヌは一目散に巨大サナギムたちに走り寄ると、その中の一体に尾の先を突き刺す。毒の強さに、刺されたサナギムはあっという間に弾け飛ぶ。コワッ!!
 他のサナギムたちも、弾け飛んだ衝撃に吹っ飛ばされて地面に倒れる。コワッ!
 支えを失ったカブタンが空中で回転し、お腹側から地面に落ちる。
 
 するとグンダジーム、「起きんか、腰抜けども!」と怒鳴り散らしながら、倒れた衝撃で立ち上がれないサナギムたちを足蹴にするではないか!
 部下を失ったことを嘆きもせず、部下が倒れているのに労わりもせず、逆に暴力を振るうとは、まさしく昭和の鬼軍曹!令和にあるまじきハラスメントだ!

俺の仲間は

 荒れて暴れるサソリーヌに、クワガタオージャーが駆け寄る。話をさせてほしいと頼み込むが、サソリーヌは聞く耳を持たず、尻尾でクワガタオージャーを弾き飛ばす。あえなく何十メートルも吹っ飛ばされ、瓦礫の間に落ちる。落ちた痛みにうめき声をあげるクワガタオージャー。
 ギラ、第6話から何かと言うと落っことされてるなあ……。

 ギラの王鎧武装が解ける。そこへ、トンボオージャーの「よう、極悪人」という声が聞こえてくる。少し離れた場所に立つトンボオージャーとカマキリオージャー。二人はそのまま、王鎧武装を解除する。手にはオージャカリバーを握ったままだ。

 ギラが素早く立ち上がり、ヤンマ君とヒメノ様にサソリーヌが勝手にやったことだと説明する。言い訳にしか聞こえないギラの言葉を、ヒメノ様が鋭く遮る。
「どういう意味?シュゴッドの言葉が分かるんでしょ?」
 ギラがうつむき、力なく答える。
「多くは話してくれなかった。でも……人を信じてないみたいだ」
 思い当たることがあるのか、ヒメノ様はギラの言葉を静かに受け止める。

 ヒメノ様と入れ替わるように、それまで黙っていたヤンマ君がやおら歩み出す。これ見よがしに右手を握り締める。
「おいタコメンチ!歯ぁ食いしばれ!」
 ヤンマ君が右腕をブンブン振り回しながら鬼気迫る表情で迫ってくる。うなりを上げる拳とヤンマ君の雰囲気に、ギラが怯えて叫び声をあげる。
 しかし、視聴者は知っている。ヤンマ君はテックヤンキーであることを。

 ギラがひょいっと大げさなぐらいに体を傾ける。ヤンマ君の渾身の(大振り過ぎて誰でも避けられる)パンチは空振りとなり、ヤンマ君はそのままつんのめって地面に転がってしまう。それをじっと見ているギラ。
 見ないであげて、ギラ……。

 ヤンマ君は地面に寝転んだ姿勢のまま、ギラに向き直り、何で避けてんだ、と怒鳴りつける。ギラも負けじと「何で殴るんだ!?」と怒鳴り返す。ギラが正しい。

 ヤンマ君は立ち上がり、殴りかかった時に地面に落ちた愛用の青いジャケットを拾い上げる。
「腑抜けたマネしやがったらぶちのめすって言ったよな?」
「何がだ?僕はただ……」
 ギラが言いかけた時、ヤンマ君が激しく遮る。
「一人で何でもできると思ってんのか!」
 ヤンマ君の真っ直ぐな言葉が、眼差しが、ギラの胸を貫く。

 ヤンマ君がギラの目の前に立ち、真っ直ぐにギラを見る。
「この俺に、仲間になれだの、偉そうにのたまったよな」
 ヤンマ君の眼差しに、声に熱がこもる。
「オレの仲間はなあ……!」

 シュゴッダムの街。
 ンコソパのテックチームとイシャバーナの医療チームが、ゴッドトンボの前に立っている。揉めている様子はなく、共同で作業をしている。

 シオカラ君があざと可愛く小走りしながら、情報の全てをイシャバーナのチームに渡すように伝える。セバスチャンがシオカラ君の隣りに立ち、医療ユニットをンコソパのチームに貸し出すと指示を出す。

 その場にいた全員が意気揚々と声を上げて応じる。シオカラ君とセバスチャンがハイタッチを交わし、シオカラ君はゴッドカマキリ、セバスチャンはゴッドトンボのチームに入る。

 シュゴッダム郊外。
 ヤンマ君が熱く語る。
「例えケンカの真っ最中でも、やべぇ時には手ぇ貸して、終わったらまたケンカする!そういうモンだろうが!」
 目を逸らさず、じっと聞いていたギラがポツリと「仲間に……」とつぶやく。そしてこれ以上ないくらい嬉しそうに叫ぶ。「なってくれるのか!?」   
 ギラの唐突な問いかけに驚くヤンマ君。

  ギラがこれ以上ないくらい人懐こい笑顔でじっと見つめている。ヤンマ君はギラの笑顔を見つめ、自分の言葉を思い返すように頭に手をやって横を向き、もう一度ギラを見て、慌てたような声を上げる。

 状況と話の流れ、文脈からして仲間になってくれるというより、すでにギラのことを仲間認定していると思われるのだが、ヤンマ君はその辺は無自覚だったらしい。ギラを仲間として見ていたことを自覚し、ついつい熱血モードになってしまったことに対する照れもあるのだろう。

  ギラとヤンマ君が同時にヒメノ様の方へと顔を向ける。ギラは笑顔を浮かべている。ヤンマ君は真顔で見つめる。

「私を巻き込まないで」
 ヒメノ様が、二人の眼差しを避けるようにくるりと背を向ける。「仲間なんて……」と言うものの、まるっきり拒絶することもない。
 ふと、ヒメノ様が遠くに何かを見つけて駆け出す。

  ギラは自分がヤンマ君の仲間認定されたことがうれしくて、ニヤつきながらヤンマ君にまとわりついている。逆手に持ったままのジャケットを肩に担ぎながら、ヤンマ君はうっとうしそうに体ごとそっぽを向いて「タコメンチ……」と悪態をつく。

 すると大きな羽音が聞こえてくる。音のした方へと目を向ける二人。
 シュゴッダムの都市の風景を背にして、ゴッドカマキリとゴッドトンボ、それだけでなくゴッドハチやゴッドパピヨン、もちろんクワゴンもこちらに向けて飛んでくる。元気になったよー、と言わんばかりに鳴き声を上げるシュゴッドたち。

  ヤンマ君が「遅ぇんだよ」とつぶやくが、その口ぶりと浮かべた笑みには仲間への信頼がある。
 ギラがシュゴッドたちにキングオージャーになれるのかと問いかける。シュゴッドたちが答える前に、ヤンマ君がジャケットを肩に羽織りながら鼻高々に告げる。
「オレの仲間が直したんだから当然だ」

  ギラがヤンマ君の横顔に目をやる。ヤンマ君はシュゴッドたちを見ながら、隣に立つ新しい仲間に力強く呼びかける。「ぶちのめすぞ!!!」
 ギラが笑みを浮かべ、前を見すえ、力強く応じる。

 ヤンマ君がギラをどやしつける場面について。
 第7話の大きな見所ですね!初見でも、もちろん「ヤンマ君カッケェェェ」と心の中で叫びました!そして先だっても第6話の感想で、ギラについて「一人でやろうとしている」「視野が狭い」「客観性がない」などと書いていたので、第7話でヤンマ君がギラにキッパリハッキリ言ってくれて、見直しながら盛り上がってしまいました(笑)

 ヤンマ君は心意気と体幹の強さのギャップが萌えポイントの一つですが、効果音がさらにコメディっぽさを補強しているので、愛らしさが割増しになります。

 しかし、ギラに仲間とはどういうものかを語り始めてから、復活したシュゴッドたちを見ながらギラに「ぶちのめすぞ!!!」と呼びかけるまでの場面で流れている『国境を越えた友情』が、ヤンマ君の熱いハートを際立たせます。

 ギラはシュゴッドたちを「仲間」と呼び、彼らには素直に助けを求めたり頼みごとをしたりします。しかし、仲間になってほしいはずのヤンマ君(やヒメノ様)には、ここぞという時に助けを求めたり頼みごとをしたりしません。ギラはチビッ子たちとはすぐに仲良くなれますが、同年代だとどう接していいのか自分でも良く分かっていないのかもしれません。

 お互いに確実に何かが通じ合ってるのは感じていますが、意外にもギラの方で作っていた壁を、ヤンマ君が文字通り体当たりでぶつかって壊します。第6話で友だちまであと一歩だったのが、一気に気の置けない仲間になります。

 養護園の子どもたちは、ギラにとっては家族であり、守るべき存在で、友だちとはまた別のものだと思われます。本当の意味でギラの初めての友だちとなったのは、ヤンマ君でしょう。

  後から見直しているので後付け解釈となりますが、ヤンマ君に仲間認定された後のギラの笑顔は、何となく地に足がついたように感じます。

 父母の顔を知らず、過去の記憶はあいまいで、血のつながった兄は思い出の中の優しい兄とはまるで変ってしまっていて、ギラの中で確かなものはクワゴンたちとのつながりだけでした。どこか不安定だったギラが、ヤンマ君の熱い思いによって重心が定まったような印象を受けました。

 王様たちの関係性の中でも、ギラとヤンマ君はひときわ熱いものとして今後も展開していきます。

  太陽が輝く空に、二人はオージャカリバーをそれぞれらしいポーズで掲げて叫ぶ。「降臨せよ、キングオージャー!」

 呼びかけに応じて、シュゴッドたちが集まり、合体する。久々にしっかり合体する場面を見たなあ。やっぱりカッコいい。

 シュゴッダム。郊外。
 巨大グンダジームが巨大サナギムたちを早く立て、と怒鳴りつけながら足蹴にしている。サソリーヌの攻撃の影響ではなく、もはやグンダジームの暴力のせいじゃないかと思うのだが、巨大サナギムはなかなか立ち上がれずにいる。

 降臨したキングオージャーが大地を踏みしめた振動で、巨大グンダジームとようやくひざを付いて起き上がれるようになった巨大サナギムたちがその存在に気付く。
 キングオージャー内、クワゴンのコクピットでは、クワガタオージャーが唸り声をあげ、右手を大きく振る。連動したキングオージャーの右腕が、握りしめたシュゴッドソードを振るってサナギムたちを斬り付ける。

 見直していて初めて気づいた。キングオージャーって、巨大サナギムよりさらに大きいんだね……。

ゴッドスコーピオンとヒメノ様

 ヒメノ様はと言うと、こちらもいまだに荒れているサソリーヌの背後に立ち、厳しい表情で見つめている。
 ヤンマ君の「シュゴッドはただの機械だ。責任は全部、命令する人間にある」という言葉を思い返すヒメノ様。そして。

  覚悟を定めたような表情で、ヒメノ様が左手を胸元に置き、凛とした声で告げる。「イシャバーナ女王、ヒメノ・ランが命令する!」
 サソリーヌがその大きな体にそぐわぬ速さでヒメノ様へと向き直る。両のはさみと尾の先をヒメノ様に向け、威嚇するような鳴き声を上げる。
「お前は人類に仇なす者か。その身で示せ」
 全く怯まないヒメノ様は、そう言って腕組みをして、逆にサソリーヌを威圧する。

 サソリーヌはカッとなったように体を揺すり、尾の先端をヒメノ様に近づけ、その中に隠されていた毒針をむき出しにして突きつける。
 ヒメノ様は微動だにせず、サソリーヌを鋭く見据える。サソリーヌの方が怯み、迷いが生じているように見える。

 その時、遠くから大きな地響きと共に、カブタンがのっしのっしと歩いてくる。それに気付いたサソリーヌは、大急ぎで尻尾の針を収納してカブタンの方へと振り返る。元気な様子のカブタンの姿を見て、はさみと尻尾を振り上げ、嬉しそうな声を上げる。

 ヒメノ様がハッとしてサソリーヌに尋ねる。
「もしかして、仲間を取り戻したかったの?」
 サソリーヌが瞬時にヒメノ様の方へと振り返り、両のはさみでヒメノ様の体を覆い隠してしまう。危うしヒメノ様!

  と思いきや、ヒメノ様はサソリーヌの中のコクピットへと移動していた。ヒメノ様は前に出て、宙に浮いている透明な虫かごのような箱の前で立ち止まる。箱の中心には、琥珀色に輝く小さな宝玉のようなもの、サソリーヌのシュゴッドソウルがある。

 ヒメノ様が箱の左右に両手を近づけると、シュゴッドソウルがひときわ輝きを放ち、ヒメノ様に何かを伝えるような光の波動を送る。
「何言ってるか分からないけど……分かるよ」
 シュゴッドソウルを見つめながら、ヒメノ様が優しく語りかける。
「勝手なことばかりされて、嫌だったよね」

 自分のあずかり知らぬところで、自らの毒を人殺しの道具に使われてしまったこと。
 言うことを聞かないのならばと、意思を奪われ従順な道具にされてしまったこと。

 ヒメノ様が、初めてシュゴッドたちの痛み苦しみ、悲しみに寄り添う。「……人間って醜い。ごめんね……」
 ヒメノ様に思いが通じたことが分かり、その言葉に真心を感じて、サソリーヌも穏やかにその言葉を受け入れる。

 不意に、ヒメノ様がガラリと声も表情も明るく変え、サソリーヌに問いかける。「ところでなんだけど、本当にただの仲間?」
 ドキッとしたように、はさみと尻尾を振り上げ、一瞬固まるサソリーヌ。その後いかにも恥ずかしそうに顔をはさみで隠し、体を左右に揺らす。

 遠くでは、サソリーヌのことを見ていたカブタンが、サソリーヌが急にバタバタ動き出したので首を傾げる。見られていたことに気付いたサソリーヌがカブタンの眼から隠れるように体をバタバタ動かす。

 サソリーヌの慌てぶりに、ヒメノ様が微笑みながら話しかける。
「分かった。内緒にするから協力して」
 ヒメノ様の言葉に大きくうなずき、サソリーヌが軽快に体の向きを変え、歩き出す。

 サソリーヌとヒメノ様が向き合う場面について。
 これも第7話の見所の一つですね。両親の真の仇がどこの誰とも分からないままのヒメノ様にとって、その恨みつらみや怒りをぶつける先は、毒の源であろうサソリーヌしかありませんでした。
 彼女にとって、サソリーヌだけは、他のシュゴッドと同様の生命体とは思えなかったでしょう。そうじゃなければ「分解してバラバラにしてやる」という言葉は出てきません。

 シュゴッドを機械だと認識しているヤンマ君から、シュゴッドの行動の責任は命じた人間にあるのだ、と言われ、ヒメノ様は覚悟を定めます。

 サソリーヌに、ヒメノ様は「人類の敵か否か態度で示せ」と命令します。サソリーヌの毒はサソリーヌの意思によって提供されたものか否かを確かめるためでしょう。

 人間不信気味のサソリーヌの態度そのものが、人間を害する意思を持って提供したわけではないことを示しています。しかし、ヒメノ様を信じてよいかどうか迷います。

  サソリーヌは自分の中にヒメノ様を招き入れ、自分の思いを伝えます。ヒメノ様はギラのように言葉を交わせるわけではありませんが、言葉が分からなくても、もしかしたら分からないからこそ、伝えたい気持ちを汲み取ることはできます。

 ヒメノ様はカブタンやサソリーヌの心の痛みや苦しみ、悲しみに寄り添い、心からの謝罪をします。

 ヒメノ様の謝罪には、知ったかぶったような上っ面の同情ではなく、人間の醜さを、彼女がこれまで様々な場所と立場で経験してきたことが感じられる重みがあります。

  カブタンが姿を見せてから、サソリーヌの様子が変わります。誰が見ても「純情乙女が片思いの相手を目にした時」だと分かる動きをするサソリーヌが可愛いですね。
 一方のカブタンはその辺は鈍いようで、まるで分かってない感じで首を傾げているのもまたラブコメ感があって可愛いです。
 そして瞬時に乙女の純情を察知し、協力を取り付けるヒメノ様は、ちょっとカグラギ殿っぽかったですね。

剛腕の王者・スコーピオンキングオージャー!

 巨大サナギムとキングオージャーは、未だに交戦中である。3体の巨大サナギムが揃ってガンショベルを構えてキングオージャーに向けて発砲している。弾幕で近寄ることができないキングオージャー。クワガタオージャーとトンボオージャーのコクピットが、銃弾の衝撃で揺れ、あちこちで火花を上げている。

 そこへ、サソリーヌが駆け付ける。やる気満々でサソリーヌがはさみと尻尾を振り上げてみせる。驚いて振り向くクワガタオージャー。

  サソリーヌのコクピットでは、カマキリオージャーが「ギラ、分かるでしょ」と話しかける。サソリーヌも鳴き声を上げて身振りを交えて何事かを訴えかける。

 サソリーヌの話を聞き、ギラもサソリーヌに対して謝る。そして、いつもクワゴンたちにするように、仲間を助けたいから力を貸してほしい、とサソリーヌに頼む。

  サソリーヌが変形し、キングオージャーの左腕に装着される。コクピット内で、クワガタオージャーが左手のレバーを握り締め、力強くうなずく。
 剛腕の王者・スコーピオンキングオージャーのお通りだぞ!

 襲いかかる巨大サナギムたちを、左腕のサソリーヌ=スコーピオンクローではねのける。逆にスコーピオンクローで立て続けに1体目、2体目と巨大サナギムに1発ずつお見舞いする。攻撃を食らった巨大サナギムたちは軽々と吹っ飛ばされ、着地した途端に爆発四散!

「さすが三大守護神!パワーがダンチだ!」
 と、テンションが上がるトンボオージャー。クワガタオージャーがすごいぞと感嘆の声を上げる。絶対マスクの下は目がキラキラしてるぞ。
 ……それにしても、パワー、段違いすぎやしませんか?

 「これからはすこピと呼びなさい♡」
 カマキリオージャーが愛らしいながらも有無を言わせぬ口調で宣言する。「行くよ、すこピ!」
 カマキリオージャーの掛け声に、サソリーヌの目がキラ~ン!と輝く。

  ※ヒメノ様は上記の通り仰せですが、サソリーヌの方が伝わりやすい気がするので、ヒメノ様のセリフ以外では今後もサソリーヌと呼ぶことにいたします。

 残った1体の巨大サナギムに、グンダジームが突撃を命じる。勢いよくガンショベルを振りかぶりながら突っ込んでいく巨大サナギムだが、空いた胴をスコーピオンクローで横一直線に攻撃を受け、あえなく倒さ.れる。

 ついに自分だけになってしまったグンダジームが、ガンショベルを手にスコーピオンキングオージャーへと立ち向かう。
 さすがに巨大サナギムたちとは違い、グンダジームは簡単にやられはしない。ガンショベルを振るい、蹴りを入れてくる。しかし、スコーピオンクローのパワーには敵わず、跳ね飛ばされて地表に転がされる。
 カマキリオージャーが「とどめよ!」と叫ぶ。

 立ち上がり、気合を入れるようにグンダジームが自分の顔を左右の手で叩く。
 その間に、カマキリオージャーが左手を握るように操作する。操縦用のアームの左手がググっと握り拳を作ると、一気にエネルギーが集まり、まばゆく発光する。

 もちろんスコーピオンキングオージャーの左手もエネルギーがチャージされ、黄金色の炎を上げながら輝く。
 目の前の状況に信じられないという風にグンダジームが叫ぶ。

 クワガタオージャー、トンボオージャー、カマキリオージャーが、それぞれのコクピットで同時に大きく左腕を振り下ろす!
 黄金色に燃える爪痕が、グンダジームの体を貫通する。

 グンダジームは敬礼し、「任務失敗、無念でありまーす!」と叫びながら真っ直ぐ後ろに倒れていく。倒れたと同時に爆炎が上がる。

 敬礼するグンダジームを見ることなく背を向けるスコーピオンキングオージャー。
 足元から斜めに見上げるアングルがカッコいいよう。

  サソリーヌのコクピット内。
 カマキリオージャーが操縦用アームの左手を見ながら、「すこピ、ありがとう」と礼を言う。

芝居小芝居猿芝居

 シュゴッダム。夕方。街の一角。
 どこもかしこも茜色に染まる中、サソリーヌとカブタンがシュゴッダムの街を去っていく。その後ろ姿に、ギラが「仲間同士、仲良くなー!」と無邪気に手を振る。

 シュゴッドたちを見送ると、ギラが振り向く。
ギラの後ろにはヒメノ様とヤンマ君がいる。さらに、ヒメノ様の後ろにはイシャバーナの医療チーム、ヤンマ君の後ろにはンコソパのテックチームがズラッと並んでいる。両チームの真ん中には、セバスチャンとシオカラ君。

 「……で、僕は捕まるよな?」
 ギラが穏やかに問いかける。
 ヒメノ様はギラの問いに答えず、少し考えるそぶりをする。

「あー、反逆者ギラが逃げていくー」
 ヒメノ様が恐ろしいほどの棒読みで言い、わざとらしい身振り手振りをしながら自分の額に手をかざす。微動だにしない医療チーム。

 「戦いで疲れてなきゃ、捕まえられたのに―」
 ヤンマ君は前を見ないまま、こちらも恐ろしい棒読みで話す。ヤンマ君がこれと言って動かない代わりに、それぞれに大げさに身振り手振りをするテックチーム。

  どういうことか分からず、ギラはヒメノ様とヤンマ君を交互に見る。
 二人は同時にギラを見て、同時にギラに言う。

 ヒメノ様「行きなさい」
 ヤンマ君「行け」

 ヒメノ様とヤンマ君が見逃してくれるのだと分かり、ゆっくりと笑みを浮かべたギラは、「ありがとう」と言って駆け出す。静かに見送る二人。医療チームとテックチームの面々もギラに向かって手を振る。

 ヒメノ様とヤンマ君が振り返り、自分たちのチームの前に立つ。
「結果を聞かせてもらいましょうか?」
 穏やかにヒメノ様が報告を促す。ヤンマ君もどっちが先かと冷静に尋ねる。
 セバスチャンとシオカラ君がお互いの顔を見て、笑みを浮かべる。

「ちょうどピッタシ、同じっすね」
 シオカラ君があざと可愛い仕草と口調で答え、指ハートを作る。
「引き分けでございます」
 セバスチャンが穏やかに告げる。二人の後ろで、どちらのチームのメンバーもその通りだというようにうなずく。

 顔を見合わせるヒメノ様とヤンマ君。引き分けと言われ、気に入らないようにヤンマ君が鼻で息をつく。そっぽを向く二人。

  ヒメノ様とヤンマ君の、ギラを見逃す時のわざとらしい小芝居が上手すぎです。それと対照的に、引き分けだと報告するセバスチャンやシオカラ君の自然過ぎる猿芝居に、ヒメノ様とヤンマ君は色々と察するところがあるようでした。

 似ているようで似ていない、分かり合えそうだからあえて分かり合わないヒメノ様とヤンマ君にモダモダします。

 シュゴッダム。夜。ギラたちの児童養護園。
 夜の道を辺りをうかがいながら、児童養護園の前に姿を現すギラ。
 真っ暗な中、ギラが食堂に入ってくる。扉を閉じた途端、食堂の明かりがつく。
 ギラが驚いて食堂の方へと振り向く。目を見張り、息を呑む。

 食堂には、コガネちゃんやブーン君、児童養護園の子どもたちがみんな集まっている。彼らの端には、昼間にギラを探しに来た兵士が立っている……剣を抜き、子どもたちの前にかざしながら。
 反対側の端にも兵士が立ち、その前にはなぜかボシマールさんがいる。
 子どもたちがギラの姿を見て、名を呼び、助けを求める。

 そして、リタ様が姿を現し、ギラと向かい合う。
「ギラ。ラクレスが決闘裁判を望んでいる」

 不安と恐怖に駆られ、子どもたちがギラに助けを求める。
 子どもたちへの仕打ちに、ギラの顔が徐々に怒りの色に染まる。

 以上、第7話本編でした。
 第6話の続きでもありますし、大きな見所としてサソリーヌが味方になるのかならないのか、サブタイトルにある〈神の怒り〉とは何なのか、予告の中にあったヒメノ様とヤンマ君の関係性の変化、があろうかと思います。

 それらの大きな見所を通してのテーマとしては「仲間とは?」とか、様々な信頼関係の形が描かれています。

 分かりやすい所ではギラとヤンマ君、ヤンマ君とテックチーム、ヒメノ様と医療チームですね。
 ギラとヤンマ君は第7話で往年の不良マンガ並みの熱さで、ようやくちゃんとした仲間になります。長かったような短かったような。でもこういう熱い友情、大好き!

  元からある信頼関係から派生して、セバスチャンとシオカラ君、さらにはテックチームと医療チームにも信頼関係が生まれていきます。
 トップの思い付きに振り回される日々を送る側近たちは、自然と調整能力に長けてくるのか、競い合ってる場合じゃないと判断してからの動きが迅速です。優秀なナンバー2はやっぱり必要だと思うんだ!(冷徹過ぎる某銀河帝国の参謀を思い浮かべながら)

 ヒメノ様とヤンマ君については、ヒメノ様がヤンマ君から新しい視点を得るというのが印象的でした。また、ヤンマ君の身の上についても明らかになりました。

 ヤンマ君がギラにシンパシーを持っていたのは、ラクレス様に反発していることだけでなく、共に天涯孤独である寂しさや悲しみを感じ取ったからかもしれません。だからバグナラクの繭への対策会議にギラを連れて行く時、ちょっとすねちゃったんですね。

 ヒメノ様はサソリーヌが痛みを抱えることになったような人類の仕打ちを謝罪し、サソリーヌはそれを許して受け入れます。最終回まで見た後だと、「許すこと」「許されること」について、とても大きな意味を感じます。

  人間同士や、人間とシュゴッドが信頼関係を築き、あるいは強固にしていくのに対し、グンダジームとサナギムたちの関係性は一方的で、信頼関係などあるようでありません。

 サナギムたちはサナギムたちなりに様々な感情や思考があるはずですし、何かを感じたからグンダジームについて行き、軍隊式の様々な行動様式を身に付けたのだと思います。

 でもグンダジームは、そういうサナギムたちが何を感じどう思っていたのかを顧みたことはなさそうです。カブタン強奪作戦をサソリーヌに妨害された時、まだサナギムは3体いるし、起こすのを手伝ってやり、自分も入ってカブタンを担ぎ上げて逃げて行けば作戦は成功です。それなのに、自分の感情に任せて長々と暴力を振るい、結果カブタンには逃げられ、自分を含めて部隊は全滅しました。自分に付いて来ていたサナギムを何だと思っていたのでしょうか。みんなはこんな上司になっちゃダメだぞ!
 ……おやあ、宇宙のどこかにいる何かに似ている気がするなあ……?

 さて分かりにくい信頼関係は、ラクレス様主従ですね。ラクレス様はラクレス様なので仕方ないとして、ボシマールさんとドゥーガさん、第7話の時点で二人だけで会話している場面がないんですよね、まだ。ビックリ。いやあ、これも行間なのかな?

 もっと分かりにくくてスリリングな間柄は、もちろんデズナラク8世とカメジムです。二人で地上にちょっかいを出すときはベテランの漫才コンビかと思うほどに息ピッタリですが、往々にして頭脳労働系の悪の幹部はアレコレやらかすので、お互いがお互いを本当はどう思っているのか、非常にドキドキワクワクします。

 最終回において、それはもうこれ以上ないくらいドキドキワクワクな結末がこの2体を待ち受けています。それは最終回の感想までたどり着けたら触れていきたいと思います。たどり着けるの、オレ……。

 次回第8話、予告を見て思った通りだと大興奮した方が多数あったかと思います。
 ええそうです、第7話ラストで触れられていた通り、ギラとラクレス様が決闘裁判を行うのですが……ラクレス様、王鎧武装いたします!

  果たしてラクレス様の強さはいかほどの物なのか!?(すっとぼけ)
 そしてその決闘裁判を他の王様たちが黙って見守っていられるのか!?
 バグナラクが地上侵攻を休んだりするのか!?

  第5話に引き続き、また一つ大きな山場がやってくる!出し惜しみなしノンストップな次回が楽しみです!

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