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『王様戦隊キングオージャー』スピンオフ〈ラクレス王の秘密〉第2話感想

第2話


前回のあらすじ

 シュゴッダム国王、ラクレス・ハスティー。彼には長年の間、秘密裏に研究させているものが3つあった。
 伝説の守護神キングオージャーとそっくりな、キングオージャーZERO。
 シュゴッダム初代国王より引き継がれてきた、オージャカリバーZERO。
 シュゴッダム王宮・コーカサスカブト城の王の間の天井壁画の謎。

 長年の研究の末、研究員・べダリアによりキングオージャーZEROはついに完成した。しかし、研究所にシデジームが現れ、駆けつけたラクレス王、逃げ遅れた研究員・コフキを襲う。
 身を挺してコフキを守ったラクレス王は負傷して出血する。その時、オージャカリバーZEROが完全に起動する。
 オージャカリバーZEROにより、オオクワガタオージャーに王鎧武装したラクレス王は、その圧倒的な強さでシデジームを倒した……はずだった。
 ゴッカン国王であり、国際裁判長であるリタ・カニスカに、ラクレス王は意外なことを告げる。「人を殺した。私を裁判にかけろ」

  ゴッカン。猛吹雪の中を歩む3人の人物。先頭を行くリタ様。その後ろにはリタ様の側近・モルフォーニャと、手錠を掛けられたラクレス様。彼はただ、前を見ている。
 静かに、タイトルが現れる。

 ここより、2話本編となります。

ラクレス王とリタ・カニスカ

 ザイバーン城・王の間。ここは法廷でもある。玉座であり裁判長の席にいるリタ様が、没収されて封印されたオージャカリバーZEROを掲げる。法廷に立たされたラクレス様の両手首には、手錠が掛けられたままだ。
 リタ様によれば、オージャカリバーZEROの研究はンコソパで行われていたが中断されたらしい。ラクレス様はその後シュゴッダムで長年研究を続けていて、べダリアさんはその研究者だったと答える。その態度も口調も、殺人犯と思えないほど落ち着いていて堂々としている。
 続けてリタ様がべダリアさんへの処刑宣告について問うと、ラクレス様は淡々と答えた。
「国の秘密を解き明かした研究者を生かしておくわけにはいかない」
 公平中立を期する裁判長らしく、表情を動かさないリタ様。

 緑生い茂る草原に立ち、イライラしながら辺りを見回すカメジム。少し離れた場所で、実にのんびりとした口調で「イテテテテ……、イデデデデ……」とうろうろするシデジーム。気付いたカメジムが、シデジームを転がす。間抜けな声を上げて草の上に転がるシデジーム。
 カメジムがイラつきながら逃げ過ぎだ、と文句を言う。2体がいるのは何とトウフ国。よくも短時間でボロボロの体でそこまでやって来たものであるし、探したカメジムの苦労は察せられる(←同情はしない)。

 まさに虫の息のシデジームに、息を吹きかけるカメジム。せっかく立ち上がったのに、風圧でまたも転がされるシデジーム。
 カメジムが、何で死体を回収しなかったのかとシデジームを責める。シデジームはのんびりと「だって、すごい強かったんだもん」と答える。ちゃんとその時の記憶を思い出せて偉いぞ……って、ラクレス様と戦ってた時と性格も言葉遣いも知的さも違いすぎる!

 何も覚えていないのかとビンタをくれながら追及するカメジム。本来のシデジームはのんびりしているというか、おっとりしているというか、本能的で、思考回路がシンプルで、記憶容量も小さいのだろう。カメジムとはだいぶ相性が悪そうである。
 それなりに真面目に思い返しているようだが、仕草も口ぶりも、いちいちカメジムの神経を逆なでしている。そして結局思い出せなくて、業を煮やしたカメジムに虫ピンで殴りかかられるが、それはちゃんとかわしていて、確かにちょっとイラっとするかな(笑)。

 カメジムはシデジームについて、死体を取り込んでいないとダメだ、などと怖いことを言う。シデジームはカメジムが意識にあるのかないのか、「食べてるときは覚えてるんだけど」などとやっぱり怖いことを言う。食ってんのか、お前!!!

 ラクレスがシュゴッダムにいない今がチャンスだというカメジムは、シデジームにべダリアさんの死体をもう一度取り込んで、壁画の秘密を探れと命じる。カメジムが探っているのは、シュゴッダムの王の間の天井壁画の謎のようだ。何故バグナラクがシュゴッダムの壁画の秘密を知りたいのか?
 そこかしこに急に現れる行間。

 気合を入れて出発するシデジーム。それを見送りつつも、どうにもイライラが収まらないカメジムは虫唾が走る、などとボヤいている。
 そこへ、シデジームが戻ってきて、あろうことか「何だっけ?」とあっけらかんと戻ってくる。
 堪忍袋の緒が切れたカメジムは、叫び声をあげて虫ピンを放り投げると、単語で任務を言いつけ、自分も援護すると言いつつ、頭部の青い蛍光色に光る部分から、それまでのイライラ全てを込めた強烈なビームをシデジームに発する。吹っ飛ぶシデジーム。よく爆発しないな。
 スッキリした、と満足そうなカメジム。

 さて、このカメジムとシデジームのやり取りですが、背景がチープです。事故かと思いました(笑)。BGMもテイストが違って明るいです。
 カメラ位置を固定し、遠近法を駆使する手法は様々な所で使われますが、このテイストは往年のコント番組の〈テリー&ドリー〉ですね。YouTubeのコメント欄にも同じことを考えた方がたくさんいて、うれしくなりました。

 シュゴッダム。都市に向けて、巨大サナギムが進撃してくる。最初と違い1体だけだが、キングオージャー以外の対抗手段がないため、脅威である。

 ゴッカン・ザイバーン城。モルフォーニャが現場で調べていた医師たちが襲われた、と王の間に駆け込んでくる。さらに、モルフォーニャ自身も半信半疑の様子で続ける。「消えちゃったって……べダリアの死体」
 ラクレス様はゆっくりとモルフォーニャの方に振り返る。モルフォーニャの報告に、リタ様は考えを巡らせる。
 やはりな、と呟いたラクレス様の声は静かだが、確信がこもっている。短く「何だ?」とだけ問いかけたリタ様に、ラクレス様はほのかな笑みさえ浮かべて「王の不在は絶好の機会だ。そうだろう?」とはぐらかす。
 その言葉で、彼がわざと自らを殺人罪で告発したと気付いたリタ様は、玉座=裁判長の席を立つ。

 シデジームにロードフィニッシュを叩き込んだ後、ラクレス様が目にしたのは、ダメージを負ったシデジームの体内から、まるで吐き出されるかのように現れたべダリアさんだった。シデジームはそのまま姿を消し、彼女の死体だけが残った……。

「死体が消えなければ、こんな話信じなかっただろう?」
 法廷へと降りてきたリタ様へラクレス様は視線を送る。おびき出すために利用したのかと確認するリタ様に、あのバグナラクには聞きたいことがあるとラクレス様が答えると、リタ様が意外なことを告げた。
「現場にバグナラクの痕跡はなかった」
 ラクレス様の表情から柔らかさが消える。
 リタ様がラクレス様を見据えながら続ける。べダリアさんの死体から謎の液体が見つかったこと、その液体の成分を調べた結果、人間でもバグナラクでもなかったこと。
 ラクレス様は視線を外し、しばらく考え込んでいたが、小さく「そうか」とだけ口にした。その声には、王のものではない、一人の青年の痛みと哀しみの響きがあった。
 リタ様の何を知っているのかという問いに答えず、ラクレス様は穏やかな笑みを作り、優雅な仕草で「外していただけるかな?」と、手錠をかけられた両手を掲げて見せる。
 リタ様は手錠を真っ二つに斬る。判決は〈証拠不十分による釈放〉。

 べダリアさんの死体が現れた時の回想や、人間でもバグナラクでもないものが検出されたと聞いた時の繊細な感情表現と、王としてリタ様と会話する時の表情や口調、立ち居振る舞いの切り替えが素晴らしいです。リタ様の前で見せた心の揺らぎは、思わず出てしまったものなのか、わざと見せたものなのか。

ラクレス王とキングオージャーZERO

 ゴッカンの吹雪く空を飛ぶ、一体のシュゴッド。釈放され、ザイバーン城から出てきたラクレス様は、オージャフォンでドゥーガさんからバグナラク襲撃の報告を受けている。
 通信を切ったラクレス様の前に降り立ったのは、クワガタのシュゴッド。「実戦で稼働するのはもう少し先かと思っていたが、やむを得ん」
 腰に差したオージャカリバーZEROを抜くと、高く天に掲げて叫ぶ。
「降臨せよ、キングオージャーZERO!」

 積もった雪を舞い上げながら荒っぽく着陸するクワガタのシュゴッドとか、ラクレス様の王の威厳と風格がある呼びかけの声と表情とか、短いながらカッコイイが詰まっている大好きな場面です。

 シュゴッダム郊外。巨大サナギムを囲んで攻撃する、トンボやハチ、チョウにカマキリのシュゴッドたち。各国のシュゴッドにそっくりだが、どのシュゴッドも一様に体色が暗い。ハチ型のシュゴッドさえ、トウフのシュゴッドのような漆黒ではない。
 そこへ、クワガタのシュゴッド、やはり暗めの体色のクモやテントウムシのシュゴッドも加わり、合体してキングオージャーZEROとなる。

 キングオージャーZEROの合体シーン、キングオージャーとは全く違う速さでガンガン組みあがっていくのですが、コレはコレでまたカッコ良いです。全体的な体色が黒っぽくて渋い色味で、カラフルなキングオージャーとはひと味違うメカ感があります。センス爆発しすぎですよ、本当に。

 巨大サナギムとキングオージャーZEROの戦闘が始まる。
 突如として現れたキングオージャーZEROに襲いかかる巨大サナギム。ガンショベルをシュゴッドソードで受け止め、すかさずその胴に左から右へと回転切りを食らわせるキングオージャーZERO。体が回転して正面が逆光に沈む中、その眼だけが緑色に光っている。
 巨大サナギムは一度距離を取って、今度は背後からキングオージャーZEROに襲いかかる。キングオージャーZEROは振り向きもせず、まるで分かっていたかのように右腕を上げてシュゴッドソードでガンショベルを止める。ガンショベルを弾き、がら空きの胴にシュゴッドソードのゴッドパピヨンのパーツで打撃を入れ、その反動で体を今度は右回転させ、巨大サナギムをシュゴッドソードの剣先で突き飛ばす!どうにか踏ん張るも、何十メートルも後退し、ひざを折る巨大サナギム。
 偶然にも距離を取れたことで、巨大サナギムがガンショベルによる射撃を試みる。キングオージャーZERO自身にもその周囲にも絶え間なく撃ちこまれる銃弾が、地面に着弾して爆炎を上げる。激しい炎の中を突き進んでくるキングオージャーZEROの姿は、自身の体色の暗さと炎の明るさが生み出す影によって、神と似て非なるもの、禍々しいものに見える。
 ゆったりと、重々しく巨大サナギムの前まで歩み寄るキングオージャーZERO。右から左から、シュゴッドソードで斬撃を叩きつけ、すかさず右足、左足で立て続けに回転蹴りをぶちかます!蹴られて悲鳴を上げながら、放物線を描いて落ちる巨大サナギム!衝撃で舞い上がる土煙!

 キングオージャーZEROのロボ戦について。このキングオージャーZERO、実はCGらしいのですが、全く分からないです。動きについても、一撃一撃の重さと、一撃から次の一撃への無駄なく隙のない流れが短時間でも見応えがあり、スピンオフの概念が壊れます。これで試運転・初戦闘とは、べダリアさんも何とすさまじいものを完成させたものか。

ラクレス王と潜入者

 コーカサスカブト城・王の間。いつの間に潜り込んだのか、シデジームが天井の壁画を見上げている。
「絶対……絶対、あの剣を手に入れる。それが城の……」
 つぶやきながら思考を巡らせるシデジーム。カメジムといた時とは違い、立ち姿も口調も知的で凛々しい。しかし、その思索は突如妨げられた。
「何の話だ?」
 静かだが威圧するような声に、驚いたシデジームが振り向く。ゆったりと姿を現したのは、シュゴッダム国王、ラクレス・ハスティーその人である。彼は玉座の近くまで来て立ち止まると、シデジームを見据える。「ここは、お前の入っていい場所ではない」
 落ち着きを取り戻したシデジームが、右手を上げ、遠くを指し示す。
「あちらは、囮ですか」

 シュゴッダム郊外。ゴッドトンボの羽によって宙に浮いたキングオージャーZEROから、ゴッドクモやゴッドテントウが分離する。分離したシュゴッドたちが巨大サナギムに向かって飛んで行く。キングオージャーZEROもシュゴッドソードを構え、後に続く。
 分離したシュゴッドたちが巨大サナギムをかく乱し、隙を作るとキングオージャーZEROがシュゴッドソードで必殺の一撃を食らわせる!
 一瞬の間もなく悲鳴を上げて爆発する巨大サナギム!上がる爆炎を避けるかのように、空高く舞い上がるシュゴッドたちとキングオージャーZERO。分離したシュゴッドたちを再び合体させ、キングオージャーZEROが地表に降り立つ。明るい日差しの中だというのに、闇がまとわりついている。

 キングオージャーZEROのコクピット。そこには誰もおらず、チキュー語が赤く光っている。コレはさすがに読めるぞ、〈AUTO〉だな!そうだな!

「自動操縦だからな」短く説明したラクレス様の声音は、意外にも優しく柔らかい。

 何を思い出していたのか。しかし感傷を振り払い、ラクレス様が問いかける。
「……さて、何から話を聞こうか?」
 声も口調も変わらず優しく柔らかいが、わずかな眉の動き、見開かれた目には、シデジームに対する怒りが込められていた。

 ここまでで第2話となります。
 何と、時間にして8分足らず!ウソだろ!色々濃い!情報量多い!
 
 第2話においても、ラクレス様とリタ様の駆け引きと、カメジムの日常(?)、巨大ロボ戦と見所が3つあります。8分足らずなのに!
 ラクレス様の裁判の時には、ラクレス様だけが知っていること、そのことに関わりがありそうなシデジームの(ひいてはカメジムの)素性の謎が示されました。スピンオフがさらに行間を深くするってどういうことよ……?

 第2話の所々で見せるラクレス様の柔らかさ繊細さは、どれもこれもべダリアさんに関わることで、彼なりにべダリアさんに心を許していたところがあったんだなあと思うと切なくなります。特に「自動操縦だからな」の言葉は、普通ならもっとドヤァってなりそうだしやりそうなところです。しかし、べダリアさんとキングオージャーZEROについて研究していた日々が、彼にとってどれほど大事だったのかと想像させる言い回しになっていて、だからこそ、最後に見せた表情からは、国王としてだけでなく、彼個人の感情も伝わります。
 見返せば見返すほど、演技と演出の深さに圧倒されます。

 カメジムとシデジームのやり取りの場面。あまりにふざけているので笑っちゃって、思考が止まっちゃいますが、ここでもさりげなく、いかにしてカメジムが情報を手に入れているか、そのえげつなさが表れています。
 よく考えたら、擬態するだけでやり過ごせない場合に備え、事前に情報を仕入れておく必要があります。べダリアさんだけでなく、シュゴッダムのあちこちで秘かにシデジームに取り込まれた人たちがいるのでしょう。そしてシデジームが取り込んだ人たちから情報を得るためには死体にしなければならず……ウヴァアアアアアア!
 初見時では最初のシデジーム襲撃の時点では、シデジームは生きているべダリアさんを取り込んでいて、べダリアさんごと大ダメージを食らって、自分一人で生き延びるのが精いっぱいだからべダリアさんを置いて逃げたと思ってたんですよ。今回改めて見直したら、会話の内容から察するに、シデジームは死んだばかりの死体を取り込んでいるようです。その行為を「食べる」と表現しているから、いつもだとそのままシデジームの中に……ウヴァアアアアアア!

 キングオージャーZERO対巨大サナギム戦について。短時間の中にCGであることを感じさせない大迫力のアクションが展開されています。何でこんなにのめりこめるのか。一部映像作品のCGにありがちな、滑らか過ぎて違和感がある動きがないのです。キングオージャーZEROや振るうシュゴッドソードの重みというか重心や、力の流れや反発が分かるため、一撃の強さ、そしてその大きさからは思いもよらない素早い連撃に説得力が生まれます。さすが日本のアクションと特殊撮影技術を長年担ってきただけのことはあります。
 そして、自動操縦であったのには驚きましたねえ。自動操縦が可能なゆえに、ゴッカンでキングオージャーZEROを起動しておいて、他のシュゴッドたちで巨大サナギムをけん制している間に自分はシュゴッダムに戻るという、カメジムの陽動をさらに利用してシデジームをおびき出すラクレス様の賢さが際立つ場面でもあります。
 そして、恐らくヤンマ君でさえこの時点で到達していない巨大ロボの自動操縦は、何のために組み込まれたのか?行間が深いよ……。
 
 第2話配信開始時点においては、キングオージャーZEROのアクションをさらに見せる目的もあったのでしょうが、ストーリーもよく練られていて、ご都合主義に見えないように、CGが悪目立ちしないようにとよく考えられています。まあ、要約したら「キングオージャーZEROめっちゃカッコイイ」の一言に尽きます。

 第3話、つまり最終話にて壁画の秘密とシデジームとの決着が描かれます。べダリアさんが解き明かした秘密とは何か、そしてそれはラクレス様に何をもたらすのか。

 8分足らずの短さだからって文章が短くなるわけでもなく、逆に濃密なのでいつも通り長くなりました。これを読んで、キングオージャーZEROのカッコ良さを何度でも確かめていただけたら幸いです。
 最終回までに、ヤンマ君が修理・改造してパワーアップしたキングオージャーZEROが出てきたら、そしてラクレス様が操縦して、キングオージャーと共闘したら、テレビの前で舞い踊りますね、私。

 

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