すべての道は老婆に通ず!?:荒井文雄「呪い」
神話以来、特に日本では父性の強権的支配に比べた、母性の持つあたたかな包容力について多く語られ、信じられてきたが、個人主義が主流となった現在に至ってある問題が浮上してきた。それは、母性を持つ主体、すなわち母がその包容の環から締め出されているという問題である。
母性神話を信じる限り、母はその特異な位置づけによって静かな犠牲者とならざるを得ないわけだが、母をその位置から救い出すことは可能なのだろうか。そしてこの問いに対し、母にもまた包容される母がいるのだから、実際的にはその問題は