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02.タンパク質のかたちで健康を守れ!:「大阪大学共創DAY@EXPOCITY 2024『キラめく科学・トキめく未来』」見聞録02

2024年06月29日、私は「大阪大学共創DAY@EXPOCITY 2024『キラめく科学・トキめく未来』」(以下同イベント)に一般客として参加した([1])。

「タンパク質のかたちで健康を守れ!」で、蛋白質研究所はタンパク質やその役割を紹介することで、日本蛋白質構造データバンク(PDBj:Protein Data Bank Japan,[2])とPDBj入門([3])を紹介した([4])。

タンパク質の形を決める方法として、X線結晶解析法、核磁気共鳴(NMR)分光法、および、低温電子顕微鏡法を紹介するだけでなく、タンパク質の形が分かり次第、その情報をタンパク質構造データバンク(PDB)に登録することも伝えた(図02.01,[5]のp.04-07)。

図02.01.「どうやって調べるの?」。

新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)の特徴、形と構成、ならびに、その予防・治療法を紹介した(5のp.08-09,[6])。

タンパク質のアナグリフ(5のp.11)とタンパク質の模型(図02.02)を展示した。

図02.02.時計回りに、ミオグロビン、リボソーム、および、シャペロニンGroELの上半分。

最後に、ペーパーモデルを展示し、参加者が作るよう勧めた([7])。

蛋白質研究所は以下の最新研究を紹介している。

1.シアノバクテリアは、赤色光と緑色光の存在を感知して、光合成の光をより効率よく吸収するためのアンテナ分子の組成を調節する。2024年06月13日、蛋白質研究所を含む研究グループは、届く光に応じて自らの構造を変えることで吸収する波長を切り替えるスイッチとしてはたらくタンパク質であるRcaEに着目し、その緑色光吸収状態(Pg)のX線結晶構造の解明に世界で初めて成功したことを発表した([8])。

2.2024年03月11日、蛋白質研究所の有森貴夫准教授の研究グループは、東北大学大学院医学系研究科の加藤幸成教授の研究グループと共同で、がん細胞上のヒト上皮細胞増殖因子受容体2(human epidermal growth factor receptor 2:HER2)だけに結合できる抗体を取得し、さらにその細胞選択性の理由を結晶構造解析などにより、がん細胞上のHER2は部分的に立体構造が乱れており、それががん細胞を特徴づける“目印”となることを世界で初めて明らかにしたことを発表した([9])。

3.2023年08月31日、順天堂大学大学院医学研究科微生物学の伊東祐美助教、鈴木達也助教、岡本徹主任教授、宮崎大学農学部獣 医学科の齊藤暁准教授、医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センターの保富康宏センター長、浦野恵美子主任研究員、京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学の星野温講師らは、大阪大学微生物病研究所、大阪大学蛋白質研究所、京都工芸繊維大学応用生物学系、岡山大学医歯薬学総合研究科、国立感染症研究所病理部との共同研究で、高親和性ACE2デコイの新型コロナウイルスに対する治療効果を検証し、①高親和性(強くウイルスのスパイクタンパク質に結合する)にすることでACE2デコイをエスケープできる(ACE2デコイに耐性を持つ)ウイルスが産生されないこと、②これまでの中和抗体を用いた治療において主流であった静脈投与ではなく、吸入投与することで20分の1の投与量でも静脈注射と同程度の治療効果が得られることを明らかにし、呼吸器感染症における吸入投与の有用性を実証したことを発表した。さらに、ヒトのCOVID-19病態を反映する霊長類モデルを用いた検討において、③高親和性ACE2デコイが新型コロナウイルスに感染したカニクイザルの治療にも有効であることを明らかにした([10])。

 蛋白質研究所のおかげで、私はタンパク質に関する復習ができただけでなく、がんや感染症に対するその最新研究も知ることができた。

その意味では、蛋白質研究所には非常に感謝している。



参考文献

[1] 国立大学法人 大阪大学 共創機構.“大阪大学共創DAY@EXPOCITY 2024『キラめく科学・トキめく未来』”.大阪大学 共創機構 ホームページ.NEWS&TOPICS.2024年06月07日.https://www.ccb.osaka-u.ac.jp/news/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%B1%E5%89%B5dayexpocity-2024%E3%80%8E%E3%82%AD%E3%83%A9%E3%82%81%E3%81%8F%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%AD%E3%82%81%E3%81%8F%E6%9C%AA%E6%9D%A5/,(参照2024年06月30日).

[2] 日本蛋白質構造データバンク(PDBj).“PDBj トップページ”.https://pdbj.org/?lang=ja,(参照2024年06月30日).

[3] 日本蛋白質構造データバンク(PDBj).“PDBj入門 トップページ”.https://numon.pdbj.org/,(参照2024年06月30日).

[4] 日本蛋白質構造データバンク(PDBj).“今月の分子”.PDBj入門 トップページ.https://numon.pdbj.org/mom/,(参照2024年06月30日).

[5] 日本蛋白質構造データバンク(PDBj).“A3 6ページ”.PDBj トップページ.PDBjについて.ニュースレター・広報資料.一般向けリーフレット.https://pdbj.org/cms-data/prresource/PDBjLeaflet_gen_ja_20240601.pdf,(参照2024年06月30日).

[6] 日本蛋白質構造データバンク(PDBj).“新型コロナウイルスの立体構造”.PDBj入門 トップページ.COVID-19 情報.https://numon.pdbj.org/contents-covid19/?l=ja,(参照2024年06月30日).

[7] 日本蛋白質構造データバンク(PDBj).“ペーパーモデル”.PDBj入門 トップページ.https://numon.pdbj.org/papermodel/,(参照2024年06月30日).

[8] 国立大学法人 大阪大学 蛋白質研究所.“光合成を調節する光スイッチの動作するしくみを解明”.大阪大学 蛋白質研究所 ホームページ.ACHIEVEMENTS 研究成果.プレスリリース.2024年06月13日.http://www.protein.osaka-u.ac.jp/achievements/20240613/,(参照2024年06月30日).

[9] 国立大学法人 大阪大学 蛋白質研究所.“がん細胞を狙い撃て! がん特異的抗体の取得とその仕組みの解明に成功―がん治療の標的分子探索における新たな戦略へ―”.大阪大学 蛋白質研究所 ホームページ.ACHIEVEMENTS 研究成果.プレスリリース.2024年03月11日.http://www.protein.osaka-u.ac.jp/achievements/20240311/,(参照2024年06月30日).

[10] 国立大学法人 大阪大学 蛋白質研究所.“高親和性レセプターデコイのCOVID-19治療効果を非臨床レベルで確認 ―すべての変異株に効果のある新規治療薬を実証―”.大阪大学 蛋白質研究所 ホームページ.ACHIEVEMENTS 研究成果.プレスリリース.2023年08月31日.http://www.protein.osaka-u.ac.jp/achievements/20230831/,(参照2024年06月30日).

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