皮下埋め込み型中心静脈アクセスポートの重要性を知る:ジャパンキャンサーフォーラム2021を介して、ジャパンキャンサーフォーラム2018を振り返る その06
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株式会社 メディコン(以下メディコン)は1972年06月02日設立の大阪府大阪市中央区を拠点とする、医療機器製造販売業(輸入販売)である(1,2)。
2018年08月12日、私は一般客としてジャパンキャンサーフォーラム2018(以下JCF2018、国立がん研究センター 築地キャンパス 新研究棟で開催)に参加した(3)。
JCF2018で、メディコンはパワーポートMRI isp(クロノフレックスカテーテルタイプ)、パワーポートMRI isp、および、パワーポート スリム(クロノフレックスカテーテルタイプ)を展示した。いずれも皮下埋め込み型中心静脈アクセスポート(totally implantable central venous access port、CVポート)の一種である(図01,4,5,6)。
図01.向かって左から、パワーポートMRI isp(クロノフレックスカテーテルタイプ)、パワーポートMRI isp、および、パワーポート スリム(クロノフレックスカテーテルタイプ)。
また、同社は、パワーポートにアクセスするために必要な安全機能付きヒューバー針であるパワーロックも展示した(図02,5)。
図02.パワーロック(向かって左)。
がん薬物療法は、薬剤を用いて、がん細胞を死滅させ、がん細胞の増殖を抑え、または、症状を和らげる治療である。がん薬物療法には、化学療法、分子標的療法、ホルモン療法、および、免疫療法がある(7,8)。
点滴や注射による薬物療法の実施は、以下の2つの方法に大別される。(9,10)。
1. 末梢静脈からの点滴
腕の静脈に細くて短いチューブ(カテーテル)を挿入し、そこから薬を点滴する。挿入は比較的簡単なので、現在一般的に行われている方法である。一方、細い血管に点滴するので、血管が薬による刺激を受けやすいので、使う薬によっては痛みを伴ったり、血管を傷つけたりすることがある。
こうした症状は「静脈炎」と言われる。抗がん剤を末梢静脈から点滴すると、血管を刺激し静脈炎を起こすことがある。
血管刺激性の強い抗がん剤は、乳がん、大腸がん、肺がん、卵巣がんなどの様々ながんの治療に使われている。
刺激の強い薬を使わない場合でも、何度も末梢静脈に針を刺していると、血管を傷つけ、しだいに針が血管に入りにくくなることがある。
がんの種類や治療方法によるが、たとえば乳がんでは、術前の治療や術後の再発予防の場合、約6カ月間に6~20回の点滴を行う。
症状によっては、点滴の回数がさらに増える、または、治療がより長期間にわたることもある。
針が血管に入りにくくなると、薬が血管の外に漏れてしまう(血管外漏出)危険性も高まると考えられている。
抗がん剤のなかには、点滴中に万一血管外漏出が起きると、炎症や痛みを引き起こすものがある。それだけでなく、周辺の細胞の壊死を引き起こして「火傷」のようなさらにひどい痛みを伴う、または、壊死した部分を手術で取り除くなどの別の治療が必要となることもある。
2.中心静脈からの点滴
鎖骨付近や首、太ももの付け根にある血管から長いチューブ(カテーテル)を挿入し、そこから薬を点滴する。カテーテルの先端を心臓の近くの静脈(中心静脈)に位置させるので、このようなカテーテルを「中心静脈カテーテル」と呼ぶ。
心臓付近の血管は腕の血管に比べて太いので、比較的抗がん剤の刺激による影響を受けにくい方法とされている。
中心静脈カテーテルを皮膚の下に埋め込んで、日常生活に支障のないようにした機器が、CVポートである。
CVポートは、薬剤を血管内に注入する際に使われ、断続的に長期の点滴療法が必要な患者様の体内に埋め込まれる。
埋め込まれたCVポートはカテーテルと呼ばれる細い柔らかな管と接続している。
薬剤や輸液の投与や採血を行う場合は、セプタムと呼ばれるポートの柔らかい上面に専用の針を刺す。
CVポートは小規模な外科手術で皮膚の真下に完全に埋め込まれ、カテーテルは血管内に挿入される。
CVポートの使用により、治療中に薬剤の投与や採血の際にたびたび血管にアクセスする必要がなくなる。また、造影CTやCTスキャンに使用できるポートもある(9,10,11)。
CVポートを埋め込む利点は、以下のとおりである(11)。
普段どおりの生活を送ることができる。
末梢留置針で刺される苦痛は少なくなる。
外見上目立たず、プライバシーを守る。
長期間の健康維持をサポートする。
一方で、以下の人はCVポートを埋め込むことができない(11)。
感染している、またはその疑いがある。
血栓ができたことがある。
適切にポートの埋め込みやアクセスができない体型である。
ポートに使用されている原材料に対してアレルギーがある。
ポートの埋め込む場所が被ばくしたことがある。
医療デバイスを埋め込むことに抵抗がある。
上記もしくは他のリスク、または、または、他の血管アクセスデバイスが向いているかどうかについては、医師や看護師に相談する必要がある。
2021年08月21日、私はジャパンキャンサーフォーラム2021(以下JCF2021)に参加し、メディコンの企業ブース「Veins for Lifeという考え方をご存知ですか?」を訪れた。
メディコンはそこで、CVポートを紹介した(12,13)。
ここで、CVポートを知るために必須な文献を以下に示す。
株式会社 エス・エム・エス.“【連載】ナースのための消化器ケアに役立つ基礎知識 CVポート・CVカテーテル-造設・挿入と観察のポイント”.ナース専科 トップページ.看護記事.医療・看護技術から探す.カテーテル.中心静脈カテーテル.2017年05月14日.https://knowledge.nurse-senka.jp/226259/,(参照2021年09月23日).
簡潔、詳細、かつ、実践的に、看護師向けにCVポートに関して記載している。
市立札幌病院.“38.CVポートの管理”.市立札幌病院 ホームページ.医療関係の方へ.感染対策について.感染対策マニュアル.2016年09月.https://www.city.sapporo.jp/hospital/worker/infection_ctrl/documents/38-1.pdf,(参照2021年09月23日).
CVポートの簡単な解説、ならびに、CVポートの留置(埋め込み)手術時やCVポートからの輸液投与時における詳細な感染対策を記載している。
一般社団法人 日本インターベンショナルラジオロジー学会.“中心静脈ポート留置術と管理に関するガイドライン 2019”.日本インターベンショナルラジオロジー学会 トップページ.学会について.IVR学会 ガイドライン.中心静脈ポート留置術と管理に関するガイドライン.2020年03月.https://www.jsir.or.jp/docs/cvp/cvp2003.pdf,(参照2021年09月22日).
中心静脈ポート留置術と管理に関して、詳しく解説している。なお、このガイドラインの全ページ読破は、非医療従事者にとっては骨が折れることも伝える。
日本コヴィディエン株式会社.“CVポートとのこれから”.Cardinal Health トップページ.ハンドブック.CVポートとのこれから.2020年05月14日.http://www.pa-solution.net/alphascope/file/4b53664a3347732f3771454e6e5176454546425a4a673d3d/e3838fe383b3e38389e38396e38383e382af/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF_CV%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89.pdf,(参照2021年09月22日).
CVポートに関して、初学者向けに詳細かつ簡潔に記載している。
実を言うと、私は現在まで、CVポートの重要性どころか存在を認識していなかった。しかし、メディコンが私にその重要性を伝えたくれたことに感謝している。
参考文献
1 株式会社 メディコン.“会社概要”.メディコン ホームページ.メディコンについて.https://www.crbard.jp/ja-JP/About-Medicon/Company-Profile,(参照2021年09月13日).
2 株式会社 メディコン.“会社沿革”.メディコン ホームページ.メディコンについて.https://www.crbard.jp/ja-JP/About-Medicon/Company-History,(参照2021年09月13日).
3 認定NPO法人 キャンサーネットジャパン.“ジャパンキャンサーフォーラム2018~みんなで知ろう!がんのこと~”.NPO法人 キャンサーネットジャパン ホームページ.イベント情報.https://www.cancernet.jp/24812,(参照2021年09月13日).
4 認定NPO法人 キャンサーネットジャパン.“展示ブース2018”.ジャパンキャンサーフォーラム ホームページ.展示ブース.2018年.https://www.japancancerforum.jp/booth/booth2018,(参照2021年09月17日).
5 株式会社 メディコン.“パワーポートMRI isp(クロノフレックスカテーテルタイプ)”.メディコン ホームページ.製品.静脈アクセス・胃瘻関連.皮下埋込型ポート・PICC・CVカテーテル.https://www.crbard.jp/Japan/media/Japan/General-Site-Images/Products/PDFs/Venous%20access%20and%20PEG/Subcutaneous%20implantable%20port%20-%20PICC%20-%20CV%20catheter/AA4920.pdf,(参照2021年09月17日).
6 株式会社 メディコン.“パワーポートMRI isp”.メディコン ホームページ.製品.静脈アクセス・胃瘻関連.皮下埋込型ポート・PICC・CVカテーテル.https://www.crbard.jp/Japan/media/Japan/General-Site-Images/Products/PDFs/Venous%20access%20and%20PEG/Subcutaneous%20implantable%20port%20-%20PICC%20-%20CV%20catheter/AA4201.pdf,(参照2021年09月17日).
7 ファイザー株式会社.“がん薬物療法とは(抗がん剤、分子標的薬など)”.がんを学ぶ ホームページ.がんの治療.がん治療の基礎を学ぼう.https://ganclass.jp/treatment/foundation/basic04.php,(参照2021年09月19日).
8 国立研究開発法人 国立がん研究センター.“薬物療法”.がん情報サービス ホームページ.診断と治療.2019年09月11日.https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/index.html,(参照2021年09月19日).
9 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社.“あなたの血管ガマンしすぎていませんか(パワータイプ)”.メディ助 ホームページ.Oncology.オンコロジーサポート情報.患者さん説明リーフレット(ポート).https://medisuke.jp/sites/default/files/oncology/inline/pdf/2020-07/oncology_knowledge_leaflet-port-02.pdf,(参照2021年09月19日).
10 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社.“あなたの血管ガマンしすぎていませんか(ノンパワータイプ)”.メディ助 ホームページ.Oncology.オンコロジーサポート情報.患者さん説明リーフレット(ポート).https://medisuke.jp/sites/default/files/oncology/inline/pdf/2020-07/oncology_knowledge_leaflet-port-03.pdf,(参照2021年09月19日).
11 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社.“Veins for Life(患者用パンフ)”.メディ助 ホームページ.Oncology.オンコロジーサポート情報.患者さん説明リーフレット(ポート).https://medisuke.jp/sites/default/files/oncology/inline/pdf/2020-07/oncology_knowledge_leaflet-port-01.pdf,(参照2021年09月19日).
12 認定NPO法人 キャンサーネットジャパン.“2021年-展示ブース”.ジャパンキャンサーフォーラム ホームページ.展示ブース.2021年.https://www.japancancerforum.jp/booth,(参照2021年09月21日).
13 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社.“血管ガマンポスター”.メディ助 ホームページ.Oncology.オンコロジーサポート情報.患者さん説明リーフレット(ポート).https://medisuke.jp/sites/default/files/oncology/inline/pdf/2020-07/oncology_knowledge_leaflet-port-04.pdf,(参照2021年09月21日).
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