チョイス@病気になったとき「見逃さない!すい臓がん」関連記事・書籍

チョイス@病気になったとき「見逃さない!すい臓がん」(以下同番組、[1])を視聴したが、その関連記事・書籍を以下に示す。


01.膵臓の特徴

l  小田原雅人 監修.運動・からだ図解 糖尿病・代謝・内分泌のしくみ.初版第1刷・電子版ver1.00,株式会社 マイナビ出版,2021年07月31日,192 p,(運動・からだ図解).

p.38-39に内分泌器官としての膵臓、特にランゲルハンス島が詳しく言及されている。

l  中島雅美 監修.運動・からだ図解 新版 生理学の基本.初版第1刷・電子版ver1.00,株式会社 マイナビ出版,2020年01月31日,240 p,(運動・からだ図解).

p.174-175に消化器官としての、p.220-221に内分泌器官としての膵臓が言及されている。

l  中外製薬株式会社.“すい臓”.中外製薬 ホームページ.患者さん・一般の皆さま.からだとくすりのはなし.からだのしくみ.https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada015.html,(参照2022年06月13日).

膵臓に関して、初学者向けに詳しく言及されている。


02.膵臓がんの概要

l  国立研究開発法人 国立がん研究センター.“膵臓がん”.がん情報サービス ホームページ.病名から探す.2021年07月01日.https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/index.html,(参照2022年06月13日).

膵臓がんに関する詳細を知るためには、最初にこのページを読むことをお勧めする。なお、MR胆管膵管撮影(MRCP:Magnetic Resonance Cholangiopancreatography)に関しても詳しく記載されている。

l  島田和明 監修,奥坂拓志 監修,池田公史 監修.国立がん研究センターの肝・胆・膵がんの本.初版第1刷,株式会社 小学館クリエイティブ,2018年06月27日,160 p,(国立がん研究センターのがんの本).

本著は、肝・胆・膵がんに関する基礎知識、検査と診断、治療、および、心のケアと療養に関して簡潔かつ詳細に記載している。特に、これらのがん、特に膵がんに関しては、緩和ケアが重要であることを痛感する。

これらのがんの患者やその親族は本著を丹念に読むことで、これらのがんに関してしっかり学んだ方がよいだろう。

l  神澤輝実 監修.膵臓がん・胆道がん.第1刷,株式会社 主婦の友社,2020年04月30日,144 p,(よくわかるがん治療).

本著は、膵臓がんと胆道がんの最新情報、特徴と進行、検査と診断、手術、化学療法、および、放射線療法、手術後の治療と生活、がんの再発・転移時の手術、ならびに、がんの緩和治療と患者と家族を支える支援制度を記載している。

2006~2008年の診断例における、膵臓がんの5年相対生存率は全てのがんの中で最も低い(男性(全年齢):7.9%、女性(全年齢):7.5%)。また、胆道がんの5年相対生存率は全てのがんの中で2番目に低い(男性(全年齢):23.9%、女性(全年齢):21.1%)(p.5)。その意味では、これらのがんは非常に厄介である。

しかし、近年、膵臓がんの危険因子の同定や医療機器の進歩などにより、膵臓がんの早期発見は少しずつとはいえ可能になってきている。また、化学療法や放射線療法の進歩により、術前・術後補助療法などの新規治療法が開発され、膵臓がんの治療成績は向上している。一方、胆道がんにおいては、胆管ドレナージの方法が近年著しく改善されている(p.18)。その意味では、これらのがんの治療は希望が持てるといえよう。

l  一般社団法人 日本膵臓学会.“家族性膵癌登録制度 ホームページ”.https://jfpcr.com/,(参照2022年06月13日).

日本膵臓学会は、家族性膵がん家系の人や、膵がんに関して一定の家族歴を有する人(健常者を含む)を対象として、登録制度を開始した。この登録制度を利用して、早期診断や新規治療法の開発に関する研究の実施が計画されている。

l  伊佐地秀司 監修.図解決定版 すい臓の病気と最新治療&予防法.初版第1刷,株式会社 日東書院本社,2016年04月10日,160 p.

本著は、すい臓の基礎知識、すい臓の病気の検査、すい臓の炎症、すい臓の糖尿病、すいのう胞とすい臓がん、すい臓にやさしい食事法、ならびに、すい臓にやさしい生活習慣に関して簡潔かつ詳細に記載している。

特に、すい臓の糖尿病、すい臓にやさしい食事法、および、すい臓にやさしい生活習慣は丁寧に目を通すほうがよい。

l  糸井隆夫 監修.膵臓の病気がわかる本 急性膵炎・慢性膵炎・膵のう胞・膵臓がん.第1刷,株式会社 講談社,2021年11月30日,102 p,(健康ライブラリー イラスト版).

本著は、急性膵炎、慢性膵炎、膵のう胞、および、膵臓がんに関して簡潔に記載している。

まさに初学者向けの本である。

 

03.膵臓がんの診断・治療

l  公益財団法人 がん研究会 有明病院.“膵臓がん”.がん研有明病院 ホームページ.がんに関する情報.がんの種類について.2022年04月15日.https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/pancreas/index.html,(参照2022年06月13日).

がん研有明病院における膵臓がん診療の特徴と膵がんについての知識が詳しく記載されている。コンバージョン手術(Conversion切除)に関しても言及されている。

l  国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院.“超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)”.国立がん研究センター 中央病院 トップページ.診療科のご案内.肝胆膵内科.診療について.EUSやERCPの内視鏡を使った診断治療.https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/hepatobiliary_oncology/050/080/20200612112105.html,(参照2022年06月13日).

超音波内視鏡下穿刺吸引法(Endoscopic UltraSound-guided Fine Needle Aspiration:EUS-FNA)に関する詳細が詳しく記載されている。

l  日本臨床外科学会.“5.膵癌の治療”.日本臨床外科学会 ホームページ.一般の方へ.膵癌とは?.https://www.ringe.jp/civic/20190322/p03,(参照2022年06月13日).

Conversion surgery(コンバージョン手術)に関しても言及されている。

l  一般社団法人 日本肝胆膵外科学会.“膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)”.日本肝胆膵外科学会 ホームページ.市民のみなさまへ.病気の種類と治療について.2017年07月25日.http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=15,(参照2022年06月13日).

膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm:IPMN)に関する詳細が詳しく記載されている。

l  株式会社 日経BP.“膵臓・胆管がんのロボット手術Vol.1 膵臓の高難度手術にもロボット手術が保険で可能に”. がんナビ トップページ.レポート.2020年04月21日.https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/202004/565227.html,(参照2022年06月13日).

2020年04月、ロボット手術が新たに膵頭十二指腸切除術に保険適用となったが、本記事はこの件に関して詳しく述べている。

2020年04月時点では、ロボット支援下膵頭十二指腸切除術を保険適用で行える施設は全国でも限られている。

l  JA尾道総合病院.“膵がんプロジェクト”.JA尾道総合病院 ホームページ.がん診療連携拠点病院.https://onomichi-gh.jp/cancer_med/pancreatic_cancer/,(参照2022年06月13日).

尾道市医師会による膵がんプロジェクトを紹介している。


余談だが、一般社団法人日本癌医療翻訳アソシエイツ(以下JAMT:ジャムティ)([2])海外がん医療情報リファレンス([3])おける翻訳された膵臓がん関連記事も紹介する。なお、原文はいずれもリンク先を参照。

“低用量アスピリンの長期服用により膵臓癌リスクが低下する可能性”.2014年07月18日.https://www.cancerit.jp/28727.html,(参照2022年06月14日).

定期的に低用量アスピリンを服用している人では、膵臓癌の発症リスクが48%低下した。膵臓癌に対する予防効果は、低用量アスピリン服用期間が6年以下の人における発症リスクの39%低下から、服用期間が10年を超える人における発症リスクの60%低下までに及んだ。

私が翻訳した。

アスピリンにより大腸がんの前駆病変であるポリープ(腺腫)の再発リスクを約40%減少(非喫煙者では60%以上減少)できることは知ってはいるが、アスピリンにより、膵臓がんリスクも減少するとは意外である([4])。

とはいえ、低用量アスピリンの副作用として、胃や十二指腸だけでなく小腸や大腸で粘膜傷害が生じるからね([5])。

 

“KRAS阻害薬ソトラシブが一部の進行膵臓がん患者に有望”.2022年03月07日.https://www.cancerit.jp/71483.html,(参照2022年06月14日).

2022年02月15日のASCO総会(ASCO Plenary Series session)で発表された研究によると、ソトラシブはKRASG12C変異のある転移を有する膵臓がん患者において有効であり、忍容性も良好であるという。


また、膵臓がんに関する最新研究成果も示す。

l  国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学.“難治性の膵臓がんに対する "長鎖非翻訳 RNA"を標的とした新しい治療法の開発”.名古屋大学 研究成果発信サイト トップページ.医歯薬学.2021年03月02日.https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2021/03/-rna-1.html,(参照2022年06月14日).

国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科・腫瘍生物学分野の近藤豊教授、田﨑 慶彦(たさきよしひこ)(筆頭著者)らの研究グループは、名古屋市立大学、東京大学、ナノ医療イノベーションセンター、がん研究会との共同研究により、タンパク質に翻訳されない RNA(長鎖非翻訳 RNA)のうち TUG1を標的とした治療薬が膵臓がんに対して有効である可能性を発見した。

本研究では、抗がん剤に対する耐性獲得メカニズムの解明と、膵臓がん細胞を狙って効果を発揮する治療薬の開発を試みた。まず、膵臓がん細胞で高い発現を示す一方で正常な膵臓細胞では発現しない、長鎖非翻訳 RNA の1つである TUG1 に注目した。

TUG1 は、膵臓がんの治療薬として用いられる抗がん剤5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil:5-FU)の分解を促進する働きを発揮し 5-FU の効果を減弱することで耐性獲得に重要な役割を担うことが発見された。

がん細胞を狙って治療薬を効率的に送り届ける“運び屋”と、TUG1 の機能を効率的に抑えることができる薬剤を組み合わせた核酸治療薬(TUG1-DDS)は、膵臓がん細胞を移植したマウスにおいて、膵臓がん細胞特異的に 5-FU の効果を増強することが見いだされた。現在 TUG1-DDS は臨床応用に向けての開発が進められている。

 

l  国立研究開発法人 理化学研究所.“膵がんの「ゲノム医療」に貢献-日本人での原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴の大規模解析-”. 理化学研究所 ホームページ.研究成果(プレスリリース).研究成果(プレスリリース)2020.2020年11月19日.https://www.riken.jp/press/2020/20201119_4/,(参照2022年06月14日).

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの水上圭二郎研究員、桃沢幸秀チームリーダー、東京大学医科学研究所人癌病因遺伝子分野の村上善則教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鎌谷洋一郎教授、国立がん研究センター遺伝子診療部門の吉田輝彦部門長、および、栃木県立がんセンターの菅野康吉ゲノムセンター長らの国際共同研究グループは、世界最大規模となる2万人以上のDNAを解析して、日本人遺伝性膵がんの原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴について明らかにした。

国際共同研究グループは、11個の膵がん関連遺伝子を含む計27個の遺伝性腫瘍関連遺伝子について、バイオバンク・ジャパンにより収集された膵がん患者1,009人を、独自に開発したゲノム解析手法を用いて解析した。また、大腸がんのゲノム解析において作成した対照群23,780人のデータも併せて解析に使用した。その結果、205個の病的バリアントを同定し、BRCA1、BRCA2、および、ATMの3遺伝子が発症に関わっていることや、病的バリアント保有者に見られる臨床的特徴などを明らかにした。さらに、機械学習による病的バリアント保有者予測を試み、乳がんと比較して、膵がんでは予測が困難であることを示した。今後、本研究で同定されたバリアント データは国内外の公的データベースに登録、活用される予定である。


この拙記事が読者の皆様、特に膵臓がん患者やその親族の方々の役に立てれば、嬉しくかつ有り難い。



参考文献

[1] 特殊法人 日本放送協会(NHK).“「見逃さない!すい臓がん」 初回放送日: 2022年06月04日”.チョイス@病気になったとき ホームページ.過去のエピソード.https://www.nhk.jp/p/kenko-choice/ts/7JKJ2P6JVQ/episode/te/BN14JQKQWY/,(参照2022年06月12日).

[2] 一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ.一般社団法人日本癌医療翻訳アソシエイツ トップページ.http://jamt-cancer.org/,(参照2022年06月14日).

[3] 一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ.海外がん医療情報リファレンス トップページ.http://www.cancerit.jp/,(参照2022年06月14日).

[4] 国立研究開発法人 国立がん研究センター.“薬剤による大腸がん予防に向けた臨床試験、国内初の成果がんのリスクとなる大腸ポリープの再発をアスピリンで約40%抑制”.国立がん研究センター トップページ.広報活動.プレスリリース.2014年02月13日.https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2014/0213/index.html,(参照2022年06月14日).

[5] 株式会社 メディカルノート.“低用量アスピリンの副作用で起きる粘膜傷害とは?胃や十二指腸だけでなく小腸や大腸にも生じる”.メディカルノート トップページ.病気を調べる.腹部から調べる.胃・十二指腸から調べる.胃潰瘍.2016年12月15日.https://medicalnote.jp/contents/161212-003-WR,(参照2022年06月14日).

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