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【実写化】原作は材料ではない

これは書くべきか、書かざるべきか、凄く悩んだのですが、元漫画家志望として、やはり言いたいと思ったし、漫画家さんがいかに孤独で、魂削って作品創りをしているか、普通の人よりはわかっているつもりなので、少しでもそれを伝えたいと思い、書くことにします。
まだ、気持ちの整理がついていなくて、上手くまとまらないかもしれませんが…。


まずは、芦原妃名子先生のご冥福をお祈り申し上げます。

メディアでも取り上げられているので、ご存じの方も多いかと思いますが、ざっくり概要を時系列順にお話します。

①日テレにて、『セクシー田中さん』という漫画原作の実写ドラマが放映される

②ドラマの脚本家A氏が、自身のInstagramにて、「(酷評された)9話と10話は原作者(芦原妃名子先生)が書いたものである」「自分が書いたものではないので誤解なきよう」と暴露。多数の同業者などから「有り得ない」などの賛同のコメントが寄せられる

③芦原妃名子先生が、「何故、脚本を書くに至ったか」を自身のブログ、及びX(旧Twitter)にて説明

④芦原妃名子先生が「攻撃したかった訳ではない」として、ブログ、及びポストを削除した上で謝罪

⑤芦原妃名子先生の訃報

…という流れになります。
発端になった脚本家A氏のInstagramは現在非公開になっており、地上波のテレビでは殆ど触れられておりません。

まず、何が問題であったのか。

原作者である芦原妃名子先生、小学館サイドからは、実写化にあたり、「原作に忠実であること」を求めました。
しかし、上がってくる脚本は原作に忠実ではなかった。

日テレのコメントでは「許諾は得ている」としかありませんし、現在のところ小学館サイドから契約についてのコメントはありません。
その辺りはもう、調査するなり、司法の場に出るなりしていただかないと、ハッキリしたことはわかりません。

しかし、少なくとも、芦原先生が何度も脚本を修正したこと、ラスト2話の脚本を担当したことは事実でしょう。
それだけでも、「ドラマが原作者の意図に沿ったものではなかった」ということは明確です。

実際の契約書がどうであれ、ドラマ制作の現場にもそのことは伝わったはずです。
そして、日テレ側がそれを許容したのであれば、契約書に明記があったはずだと考えられます。

脚本家が「聞いていなかった」というのも事実なのかもしれません。
あくまでも小学館の担当者と、ドラマのプロデューサーの間だけの話であり、それが現場には一切伝わっていなかった、ということは有り得ます。

でもね、肝はそこじゃない。

なら、何故、原作付きのドラマにした!?

昔はそれこそ、原作の上辺だけなぞった完全別物のドラマになる、なんてことが当たり前でした。
だから「実写化は成功しない」なんて言われ続けてきた訳です。
しかし、技術の進歩と漫画文化の台頭により、「実写化するなら原作に忠実に」がスタンダードになってきたのです。そうでなければ受け入れられない。

未だにそんな原作とは別物のドラマで、しかもありきたりなセオリーしか展開できないような三流ドラマで良しとする姿勢が残っているとは思いませんでしたよ!!

漫画家は0から1を生み出す仕事をしています。
今までの人生と、気力と体力、思考をフル回転して、悩み苦しみ、本当に魂を削って作品を生み出すのです。
作品は自分自身であり、我が子であり、何にも変え難い、大切なものです。

それを蹂躙され、あまつさえ介入したことを批難される。
そんな権利は誰にもないんです。

漫画家は漫画を描くことが本分であり、テレビドラマ用の脚本を書くスキルはありません。
芦原先生はそのことを理解されていました。だから、ギリギリまで修正してでもプロの脚本家に任せたいと思ってらした。でも出来なかった。
表現のプロとして、自分でもベストではない脚本を提出しなければならなかった悔しさは、絶対にあったはずです。大切な作品を半端に世に出すなんて、誰よりも先生ご自身が悔しく悲しく、やり切れなかったに違いありません。

そのお気持ちを、表現のプロであるドラマ制作サイドは、何故理解出来なかったのでしょうか。
たった1人でも良い、芦原先生が信頼し、「この人ならば任せられる」と思える人は、いなかったのでしょうか。

原作はドラマの材料なんかじゃありません。
原作は原作というひとつの料理です。
ドラマはその料理をアレンジし、1を2にする努力をすべきなのではないでしょうか。

今回のことは、原作という、たったひとつの素晴らしい料理をめちゃくちゃにし、ありきたりな量産品に陥れ、料理人の尊厳をズタズタにしたのです。

ドラマというのはたくさんの人が関わることは知っています。
スポンサーの意向や出演者、事務所の力関係や予算などなど、思うようにいかないことも多いのでしょう。
必ずしも原作に忠実に作れないこともあるでしょう。

それでも、原作に対する敬意を少しでも持ち合わせてくれていたら、原作のテーマや世界観を壊すことなく、それをドラマとして面白く見せるにはどうしたら良いのか、どうやって折り合いを付けたら良いのか、そういう方向で制作できていたと思います。
せめて、原作者と同じ方向を見ていてくれたら…そう思わずにはいられません。

それが出来ないのならば、原作付きのドラマなんてやめて欲しい。

もう、こんな、ギリギリまで魂削って創り出された作品を壊され、作品の結末を永遠に見ることが出来なくなるようことは起こって欲しくありません。
貴方たちにはたくさんあるネタのひとつにしか見えなかったのかもしれないけれど、それは完成された、または完成されつつある、世界にたったひとつしかない、素晴らしい作品なんです。
壊さないでください、奪わないでください。
お願いします、どうか。

最後に、日テレと小学館には、再発防止のためにも厳正なる調査をお願いしたいです。

そして小学館は、原作者を守るための、作品を守るための手段の構築、メディア化に際しての交渉役の育成をお願いしたいです。
漫画文化を守ってください。
漫画家さんたちを守ってください。

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