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フリーレンになりたい純情息子〜くるりFCイベントの感想〜

 くるりファンの間で何かと話題に上がっている葬送のフリーレンです。理由は言わずもがな、かく言う私も漫画アプリと動画配信サイトで少々見始めてからFCイベントに臨みました。間違いなくMCに小ネタが挟まってくるであろうと思っていましたので序の序だけでも知っておけば楽しめるだろうという魂胆が半分、もう半分はやはり岸田さんが感銘を受けている作品は気になりそこから何を感じているのか、くるりの最新のアウトプットに岸田流フリーレン解釈が潜在的に入り込むのかなどが楽しみでした。

 私はまだまだ原作の半分も読めていませんし読み込めてもいないのですがあえて「作者の意図を答えよ」的なフリーレン解釈をしてみます。ガチファンの方、すいません。

 個人の時間の相対性というテーマが根底にある作品だと感じました。「個人の時間」とは一体何かというと「まさにここに私を感じる私」が感じる時間です。時間論及び認識論について文章化して論じるには現在の私の力量では少々荷が重過ぎるので、ここではそういうものだということにしておいてください。フリーレンと他者との時間についての捉え方の差異が繰り返し序盤のやり取りに埋め込まれています。例えば50年という長さについてたかが50年かどうかというような。
 ここでひとつ私は疑問が生じました。50年が経過する、ということについてはフリーレンと他者の感じる長さは違うのかということです。我々も大人になったら1年が早く感じる、とは言いますが生きた年数分、というよりは日々過ごしている内容の分、つまり時間を意識しなくなった分早く感じるのだという気がします。フリーレンは長命が故に1年を1ヶ月かそこらのように時間の流れを早く感じているのでしょうか。それとも種族として他種と時間感覚がそもそも違うのでしょうか。
 フリーレンの旅立つ理由がそれを教えてくれるような気がします。フリーレンは他者と社会性を得るにはいわゆる人間時間では全然足りないのです。故に相対的には早く感じているように見えますが、絶対的には(フリーレン個人的には)短く感じているのです。否、短いというよりも他者の残存時間について全く無関心なのです。「今」というこれまた時間論の中で扱いの難しい事柄について、今が進むことにより他者の個人の残存時間が減ることに旅立つまでは気づいていなかったのです。
 それではフリーレンの時間とは一体我々と何が違うのでしょうか。一体何を表象しているのでしょうか。それは「世界の時間」だと思うのです。この世の唯一の今、それがフリーレンなのです。個人の時間の今と何が違うのか、それは未来に向かって進んでいく今ではなく、過ぎ去りゆく世界を見ている定点的な今なのです。もっともっと長命であれば、それこそいつ終わるとも知れない無限であるならば常に今でありフリーレンが意識した世界が想起されているだけなのです。それが故にフリーレンは知りたいのです、流れる今を生きている、生きていた他者が思うことを。

 全然くるりの話をしていませんが、ここでようやく無理矢理こじつけようと思います。今回FCイベントで演奏された数々のくるりの楽曲にはライブで演奏されることが少ないレア曲が多いということでした。ここでまた考えてしまうのです、私個人はどれも(カバー曲は別として)1ヶ月に一度は再生している気がするなと。生の演奏とは違う、それはもちろん違うものですがそれは他の全楽曲もそうなのです。私の人生ではいつもaliveしている楽曲を久方ぶりにくるりの中でreviveさせたのが今回のライブだったのだと感じました。もちろん初めて聴く曲があった方もいらっしゃることでしょうが、ここはくるりオタクの発言として許してください。私もライブ回数は少ないので生で聴くのは初めての曲ばかりでした。

 くるりの時間、くるりの楽曲の時間もこの世界の中で過ぎていきます。演奏する人、聴いた人がいなくなる時代もやってくることでしょう。それでもフリーレンがもしこの現実にいて純情息子だとしたら、くるりの楽曲を「まさにこの今のもの」として語り継いでくれそうな気がします。世界にくるりの楽曲が流れていた時代があった、それを受け止めた我々がいた、それを世界に受け継いでいく。決して歴史の一頁ではなく流れる今として他者への共感を促し続け愛し続けること、ファンクラブイベントとはそんな想いをより強くする場だったのだと思います。私は生きうる限りフリーレンとなり常にくるりの楽曲を今であると感じたいと思います。「もし誰も聴かなくなったりしても」この世界にはくるりが、くるりの楽曲が確かに在ったのだとレコードのごとく世界に刻みます。
 California Coconuts及びIn Your Lifeが今後新たなくるりの軸となるというメッセージも感じました。楽曲が鳴るたびにくるりは今、まさに今なのだと気づきながらまたこのようなイベント及びライブを楽しみにしています。くるりの全ての曲に愛を!

<了> 

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