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ショートショート 節約するということ

私は、3年前に統合失調症と診断された。
きっかけがあったのだと思う。そのきっかけは殺人だ。

私は診断が下る前から、自分のことちょっと変だと思っていたんだ。
なんか人からの疎外感とか、普通の人より痛みを感じていた。
被害者になっていた、いじめられる、悪口を言われる、無視される、嫌がらせをされる。
色んな辛いことがあった。

私には支援員さんがついた。
主に生存確認や、日々の生活を聞いたり、何よりもお金の管理がしにくい私の通帳を管理してくれて、月々お金を持ってきてくれる。

支援員さんは、私の彼が殺人者だと知っている。
その殺人をきっかけに私の精神が爆発してしまった事も。
精神病院に付設された作業所に入ることを勧めてくれたのも支援員さんだ。
時には作業所での様子を見にきてくれる。

今日は彼女がお金を持ってきてくれる日だ。
私は節約しているから、月々わずかなお金しか持ってきてくれない。そう私が頼んでいるからだ。
休みの日に作業所の友だちと食事に行こうと誘われるが、今は全部断っている。
作業所の休憩に缶コーヒーをおごってくれる友だちもいるが、奢りは返さないといけない。
支援員さんは、水筒を持って行くことを勧めてくれた。
中身はお水だって、出がらしのお茶だっていいんだよって言ってくれる。

順調に節約できていると思う。
好きだったタバコもやめた、やめようとしている。
そんな今日支援員さんが言ってくれた。
「節約、頑張っているんだね。タバコももしかしてやめてる? なんかタバコのにおいがしないよ、頑張ってるんだ。すごいね」
気づいてくれる人のいるうれしさ。この支援員さんでよかった。

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私は日援事業の支援員をしている。
専門知識はないが、専門員の下で、利用者さんに直接触れ合う仕事だ。
給与はボランティア活動くらいなものだ。

私はもう会社勤めはしない、やりたいことは十分やった。会社員生活に未練はない。
さまざまな理由で、支援を希望される方はお話を聞いていても、私の思う「普通」の生活では考えあられないようなことも色々経験されている。
みんな、「普通」の人以上に頑張っているところがある。
まだらだったり、浮き沈みがあったり、忘れてしまったりするけれど、ご本人が悪いことをしてこうなってしまったわけではない。

今日、お金を届けた利用者さんは、今、節約を頑張っている。
すごいなと思う。
家賃も滞納せず、少ない給与の作業所の仕事を真面目にこなして、今日はその中の一部を通帳に入れるというのだ。
「頑張ってるね」って言うといい顔をして「彼に会いに行くために頑張る」と言う。
彼女と彼は色々曰くつき。
彼は彼女のために、ひとを殺めてしまい、今は遠くの刑務所にいる。

応援してあげたい、応援してるよ。

彼女と節約術について話をすることがある。
「作業所では、笑顔、友だちと楽しく過ごすが、休みの日は友だちと会わない」と決めていると言う。
「お金も使わないですむし、友だちに気を使うことも減った」。
えらいね、すごいね。

彼女と話して私も癒される
私も反省する
私も自分の生活に生かそうと思う。

常にマウントを取ってくる友だち。
愚痴ばかりの友だち
カフェや、食事は結構な高級店を好む友だち
ストレス感じながらも、我慢して相槌打ったり、疲れるよ。

私のストレス解消法、節約術を教えてくれる利用者さんに。
「ありがとう。また来月来るよ〜。頑張ろうね」
と言って帰る。

END

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