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ショートショート 思えば通じる

今朝のめざまし占いは、一位。
何かいいことありそう。
一位や上位の日は、大人げないがうきうきする。

多くの人は「ウド」は知っていると思う。茎が白くて長い。日陰でも育つことから生産量全国一位は東京だと聞いた事がある。
「葉ウド」はウドの葉っぱではなくて、田舎のここら辺では「ウドナ」と言う。
ここ、中国山地の山間では春になるとこの草を摘んで、味噌汁のネギがわりにしたり、そのまま贅沢におひたしにしたりも。

「そろそろ、ウドナが出る頃かなあ」
出勤前の支度をしている主人に話しかける。
「おー、このところ少し温かくなったから、でとるかもしれんなあ。ふきのとうもきっと出てると思うよ」。
ウドナもふきのとうもどうしても食べないといけないものではない。
まして、山に入ってる時間もない。

主人は出勤した。
今日の私の朝のミッションは郵便局で書留を出すことと、市役所に行って数件手続きをする事。
いつもなら自転車で行くのだが、天気もいいし。
「歩こう」。

往復1時間くらいか。
町内の小さな道を通って国道の歩道に出る郵便局までの道のり。
私は歩くのが好き。3〜4キロなら景色見ながら、考え事しながら、頭の中で歌を口ずさみながら平気で歩ける。
今日はちょうどいいお散歩日和。

小道を行っていると。
明るい黄緑の点が。
少し道を逸れるが行ってみる。
「ふきのとう」だ。
思わず声を上げた。手のひらにちょうど入るくらいのちょっと濡れて冷たい感触のふきのとう。
私は、少しねじりながら引きちぎろうとするのだが、根っこが付いてくる。

根っこは大事に取っとかなきゃ。
その気持ちがあるので、力加減が大切。
だがそこは田舎育ちの力加減手加減。
数秒後に明るい黄緑色のふきのとうが私の手のひらに。

薄手のジャケットを着ていたのだが、ポケットは沢山ある。
私は右のポケットに、そのまんまのふきのとうを入れた。
ポケットから出した右手を鼻に近づける。
「あーいい香り」

郵便局や市役所への道のりが俄然楽しくなった。
時々右のポケットに手を入れて感触を楽しみながら

帰り道。
行きがけに採ったところの近くで、もう一つ発見。収穫。
「わお」

夕ご飯にはおひたしに刻んだふきのとうの葉っぱをふりかけた。
「んんんー春の香り」
主人と二人暮らしの食卓に春がきた。
今日の占い、やはり一位だけのことはあった。春への思いが通じた。

夕食の片付けを終えた私は今、iPadで
「蕗味噌」のレシピを検索している。
蕗味噌。
私の住む地域では
「ふきのとう味噌」って言うのです。

END

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