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インステップキックの蹴り方。新星グリーンウッドのシュート技術とは。
前回デ・ブライネのキックを題材としてキック動作の運動制御について考えました。
この記事を出してからも引き続きキック動作について色々と考えていましたが、そんな中で見たマンU対ボーンマスでのグリーンウッドの2ゴールが衝撃的だったので、今回はその2ゴールを題材としてインステップキックの蹴り方について考えていきたいと思います。
👣 左でも右でも、ボールが向かう先に変わりはない 🥅#MUFC @MasonGreenwood pic.twitter.com/oLkd8R4Mmk
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) July 8, 2020
まずは前回の記事の内容についての振り返りから始めていきましょう。
前回の復習
まず、キックとは足とボールとの衝突であるということを前提に置き、衝突直前の速度、ボールと足の位置関係によってキックの軌道は決まるとしました。
そして、蹴り足はボールに対して真っ直ぐ振りかぶって真っ直ぐ振り下ろすだけの一定の振り方をしているが、軸足を置く位置によって蹴り足の軌道が決まり、足を当てる角度によってボールの回転が決まるとしました。
前回のまとめをそのまま持ってくると以下の通りです。
・蹴り足の振り→ボールスピードを調節
・軸足の置き方→蹴り出す方向を調節
・足の当て方→ボールの回転を調節(蹴り出す方向も少し)
今回もこの考え自体は変わりませんが、インステップで速いシュートを打とうと思ったらさらに考えるべきポイントは多くあるので、今回はその辺をメインに進めていこうと思います。
また、次回以降もインステップキックだけでなく色々な種類のキックをそれぞれ分析した記事を出していきたいと思っています。
前回の記事をよく読んでくれている方の中には、前回の記事ではキックの種類によらず同様の運動制御様式を採るべきだと言っていたのに今言っていることは矛盾しているじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこれはむしろ逆で、各キックについて詳細に考えていくことで、異なるキックの間で共通している部分と変動させている部分(僕がよく使う言葉で言うとアトラクターとフラクチュエーターです)を見極めていくことができると考えています。
よって、しばらくは要素還元的と思われても仕方がない記事が続くと思いますが、最後にはより完成した形でキック動作の運動制御についてまとめるという目標の下で進めているということを念頭に置いて読んでいただけると嬉しいです。
グリーンウッドのシュートと前回の記事との関係
では、前回得られた結論を基に今回の本題であるグリーンウッドのゴールシーンについて考えていきましょう。(上が1点目で下が2点目です)
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— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) July 8, 2020
前回の記事のキーポイントは軸足の置き方によって蹴り足の軌道が決定されるということでした。
グリーンウッドのシュート時の軸足に注目してみると、1点目では実際にボールを飛ばした方向に、2点目はボールの軌道に対して角度がある位置に軸足を置いていることが分かります。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29958398/picture_pc_28c5ef9d6c7cd11b06e61e3faa5ab719.jpeg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29958404/picture_pc_a0365c2dfe324da8292943327627881d.jpeg?width=800)
2枚の写真のグリーンウッドの体勢だけを見ると左右反転させただけではないのかというくらいに類似していますね。
どちらのシュートでも軸足は内転させた状態でつき、蹴り足はボールに対して真っ直ぐ振りかぶって真っ直ぐ振り下ろしています。この足の振り方をすると前回の記事でも使った下図のように蹴り足は円弧に近い曲線的な軌道を描きます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29958688/picture_pc_6c8f31d61eed44fc4aaf311d4184dde4.jpeg?width=800)
軸足をついて振りかぶった時点での体勢が類似していることからも推測できるように、この2つのシュートシーンでは蹴り足は同じような軌道を辿っています。
にも関わらず、1点目のシーンでは体の向きに対してほぼ正面に、2点目のシーンでは体の向きに対してかなり左方向(軸足方向)にボールが蹴り出されています。
この違いについても先程の模式図を使って簡単に説明することができます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29959920/picture_pc_8a6dbd2f7c0ebdf3c307002b105c8132.jpeg?width=800)
1点目のシーンでは、上図のように軸足の真横で蹴り足が軸足と同じ方向に向かって運動している瞬間にミートしたために、ボールが体の向きと同じ方向に飛んでいると考えられます。後ろからなので少し分かりにくいですが、実際の写真でもその様子は見て取れます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29960542/picture_pc_e9a7cb25ecd61d64cdad41f22488f494.jpeg)
今回の図には蹴り足がボールと衝突した後の軌道も付け足しましたが、これもこの位置でミートしていると考えることのできる一つの根拠となります。実際に、振り抜いた後の足の軌道を見ると、ボールの軌道に対してかなり軸足側に来ていることが分かり、これは上の図での蹴り足の振り抜いた後に軌道とボールの軌道の間の角度に対応しています。これにより先程の模式図の妥当性が保証されるということです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29960377/picture_pc_0a52935b492e5d9a0848b219f67308fc.jpeg)
2点目のシュートシーンでも蹴り足の辿る軌道はほぼ同じです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29960315/picture_pc_1bfc04713d57ea41f9a8e8a2cc68f07b.jpeg?width=800)
ただし、上図のようにミートのポイントが軸足よりも前にずれており、これによってボールに与える力の方向を変え、ボールの軌道を調節していると考えられます。実際の写真で1点目のシーンと比較すると、かなり前側でミートしている様子が分かると思います。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29960721/picture_pc_2d4250ff990a82984b723c23040181eb.jpeg?width=800)
そして、このシーンでも先程と同様に振り抜いた後の足の軌道とボールの軌道のズレが模式図で得られたズレと概ね一致しています。このシーンの場合は、インパクトの後さらに足が回転する余白は先程と比べて残されていないので、蹴り足の軌道がほぼボールの軌道に乗っていると言うことができます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29960843/picture_pc_66347f849967553f1297d47d1328fe01.jpeg)
足の当て方についても軽く触れておくと、インステップキックで速いシュートを打つという目的であれば下図の左側のようにボールの中心を貫くように力を与える、つまり与える力を全てボールスピードに変えることが理想です。
よって、蹴りたい方向に対して真っ直ぐに蹴り足を振り抜きその方向を向くように足を当てることが最適であると言えます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29961057/picture_pc_f28d65b86a723493185e82201acce57d.jpeg?width=800)
さて、ここまでは前回の内容を当てはめただけの内容でしたが、ここからは対象をインステップキックに絞ってさらに詳しく考えていきたいと思います。
速いボールを蹴るには
インステップキックを用いるのはほとんどが強いシュートを打ちたいという場面で、強いシュートというのは単純にボールのスピードが速いシュートと言い換えることができます。
速いボールを蹴るにはということを考えるに当たって、キックとはボールと足との衝突であるという前提に立ち返ってみましょう。
二物体の衝突後の速度を決めるのは、物体間の反発係数、各物体の衝突直前の速度、質量です。それぞれについてキック動作に当てはめて考えていきましょう。
・反発係数
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