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【2020版】プロサッカークラブにおけるデータ分析の今とこれから

これは「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2020」の2日目の記事です。


私は現在プロサッカークラブのアナリストとよく話をする機会があったり、また大学時代に分析組織の立ち上げをした経験があるので、日本のサッカーアナリストの将来に大変興味を持っています。

プロサッカークラブってどのようにデータを扱っているの?サッカーの現場でどうデータを活かしているの?これからどんな人材が求められているの?そういった疑問を持っている方向けに記事を書こうと思います。


1.サッカーのデータ分析はそもそも難しい

データ活用に触れる前に、前提条件として認識しておくことは、サッカーのデータ分析はなかなか難しいということです。その理由は、サッカーというスポーツの競技特性にあります。

①サッカーは動的なスポーツである

サッカーは、22人の選手とボールが同時にかつ一人ひとり異なる動きを絶え間なく行います。さらに自分の動きは相手に依存します。例えばサイドを突破しクロスから得点を目指すことを得意としているチームであっても、中央のスペースががら空きであれば、クロスを供給するより中央から突破したほうがチャンスを作ることができます。相手のレベルや戦術、プレーによって自分たちのプレーを変更することが求められるため、パターン化しにくいということがデータ分析を難しくしていると思います。

②結果に影響する要素が多い

スポーツにおける勝利の条件は一般的に「相手よりも多く点をとること」です。それは野球もサッカーも変わりません。野球でいえば打つことで得点することができますし、サッカーでいえばシュートすることで得点することができます。ただその得点に影響する要素の数が野球とサッカーでは全く異なり、サッカーでは選手・ボールの位置、身体の向き、時間帯、点差など考慮するべきポイントが多く存在します。相手ゴールに背を向けてポジションを取っている、良いポジションを取っているがパススピードが遅いなど、ちょっとした要因が結果に影響を与えるというのは現場経験者は身をもって知っているかと思います。

2.現場のデータ分析はあくまで補完的、ただ・・

サッカーの現場では主観的な分析がほとんどで、データは自分の分析を補完するもの、裏付けとしての活用が主となっています。そのあたりはこちらの記事に詳しく書かれていますので是非どうぞ。


一方でテクノロジーの発展によってリアルタイムに映像やデータを分析するという機会は多くなってきています。J1リーグでは「LIVE SCOUTER」が導入され、2019年からスカウティング映像やデータを試合中にチェックできるようになっています。


他にもhudl やRUN.EDGEなど様々なリアルタイム分析ツールを駆使して試合中の意思決定やハーフタイムでのフィードバックに映像やデータ分析を取り入れようとしています。

またチームによっては、アカデミー組織に分析担当を配置し、育成年代の分析を重要視するチームも現れてきました。


3.今後求められる人材は

あくまで個人的な意見ですが、今後求められるアナリスト人材は「多様な目的に対応できる、専門性の高い人材」かなと思っています。

テクノロジーを扱うことで「どう分析するか」は整ってきましたが、現場でデータ分析を活かすには「何を分析するか」が重要になってきます。選手のリクルート、査定、スカウティング、個人の成長などなど。チームやクラブの理念や目的、戦略から評価指標を作り運用していくことが求められることがあるかもしれません。

日本のクラブでも少しずつデータをクラブの目的達成のために活用しようという流れが出てきています。

そういう場面でいかに"重要な決定"に対して"どのくらい寄与"できるかがアナリストとして重要なのではないかなと考えています。(自戒を込めて)

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