自#475「波の状態が、時々刻々変わるので、競技としてのサーフィンを客観的に評価するのは、難しいと感じました。がみんなで波に乗れるので、それで充分みたいな、さわやかなとこが、サーフィンにはあるなと感じました」

         「たかやん自由ノート475」

 テレビのスポーツニュースで、サーフィンの競技を、少しだけ見ました。台風が接近していて、競技は一日、前倒しで実施されました。波の状態は、時々刻々、変わって行きます。自分がプレイする時に、いい波が来れば、高得点を確保できます。波がしょぼければ、残念なポイントになります。サーフィンを、競技として、客観的かつ公平な評価をすることは、不可能だなと、今さらながら、当たり前のことを感じました。
 公平な競技を実施するためには、選手が置かれている条件を、一定の状態に保つ必要があります。海という大自然に、人間にとって、都合のいい条件を設定することは、到底、できません。決勝のポイントは、男子の優勝したフェヘイラさんが15.14点、準優勝の五十嵐さんが6.60点です。女子の決勝は、優勝したムーアさんが14.93点、ベイテンダグさんが、8.46点です。男子は2.3倍、女子は1.8倍の得点差があります。世界のトップクラスが集まっている決勝戦で、これだけの得点差がある競技は、他には存在しない筈です。すべてが、波の状況にかかっているから、こうなってしまうんです。
 競技としてのサーフィンは、理論的に不可能だと、多分、サーフィンをやっている方は、みなさん、承知していると思います。それでも、大会があるのは、賞金を稼ぎたいでしょうし、波の偶然で左右されたとしても、高い順位が獲得できれば、自分に自信がつき、プライドも持てるし、それに何よりも、サーフィンを愛している世界中のトップサーファーたちと、一緒に波に乗れることが、最高にhappyだったりするからだろうと推測できます。
 五十嵐さんは、アメリカに生まれのアメリカ育ち。3歳からサーフィンを始め、8歳くらいから、サーフィンが盛んな豪州やハワイなど、世界各地の波に乗り続けて来ました。エンドレスサマーⅠ、Ⅱの世界を、子供の頃から、実践されて来た、authenticなサーファーだと言えます。良い波の場所を知るためには、ネィティブにフレンドリーに話しかける必要があります。ポルトガル語やスペイン語など、5ヶ国の言葉が喋れるそうです。両親が日本人なので、日本代表として出場していますが、日本国を背負っているという気持ちは、持ってないと推定できます。インタビューでは
「グローバルな世界では、どこに行っても、ホームなんだ。どこに行っても友達がいる。みんながつながっている。国じゃない」と、爽やかに答えています。2021のグローバルの最先端付近にいるアスリートだと感じました。
 五十嵐さんは、23歳。開会式の時、22歳のスケートボーダーの堀米くんと「一緒に金メダルを取って、写真を撮ろう」と、誓ったそうですが、残念ながらその夢は叶いませんでした。が、二人の大きな目的は、スケボーを世の中に知らしめ、サーフィンにもっと興味を持ってもらうだった筈ですから、その目的は、充分に達成できたと推定できます。
 スケボーも風や雨といった天候に、ある程度、左右されますが、波の変化に較べると、それほど大きな影響は受けません。波の状況は、次々と変わって行きます。変化に対して、即座の判断力が要求されます。体力や筋力は、20代前半にMaxの状態に達しますが、判断力は、年齢を重ねた方が、より磨かれて行きます。ただ、判断のspeedは、歳を取ると遅くなります。が、まあサーフィンの場合、20代後半から30代前半あたりに、黄金時代が来ると想像しています(エビデンスはありません。私の直観です)。
 日本国を背負いまくっていた、女子のソフトボールチームが、アメリカを破って、優勝しました。私は、すでに寝ていましたが、リビングから御近所様にも届きそうな、大歓声が聞こえて来ましたから、「あっ、アメリカに勝ったんだな」と理解して、即座にまた眠りました。
 女子ソフトボールで、大活躍をしたのは39歳のエースの上野由岐子さん。ごく通常の生活レベルであっても、39歳になれば、いろいろガタが来ます。それをきちんと自覚して、不惑に備えなければいけません。39歳で、世界のトップ選手として、見事にチームを金メダルに導いた、この事実は、ソフトボールをやっている後輩たちにとっては、途方もなく大きな財産だと言えます。ごく普通の勤め人だって、39歳で世界のトップに立ったアスリートを、ごく自然に、リスペクトしてしまいます。うらみ、つらみ、愚痴ばかりこぼして、日々、ネガティブに生きている39歳がいたら、大活躍している上野さんの姿を見て「何やってんだ、オレ」と、自己嫌悪してしまうのかもしれません。
 上野さんは、無論、perfectな選手ではありません。本人も「体がいっぱいいっぱい」と、インタビューで語っています。が、ピンチに追い込まれた時の精神力が、とんでもなくタフで、粘り強いんです。こちらがピンチだと、相手チームに取ってはチャンスです。相手チームは、このチャンスを何とか得点に、結びつけなければいけないと、プレッシャーを背負います。ピンチの側も、何とか無失点で切り抜ける必要があります。ピンチの自軍も、チャンスの相手方も、どちらもプレッシャーを背負って、自分自身と精神的に闘っています。上野さんは、ピンチに陥った時、耐え忍んで、切り抜けていました。冷静な判断力と、ここ一番という時にミスを犯さない一種の才能だろうと思います。アスリートの場合、何かを持っているという言い方をしますが、上野さんは、間違いなく、何かを持っています。ソ連と戦った時の日本の女子バレーチームが、こんなだったかもと、遠い記憶のかけらを思い起こしました。
 私が見た、狭い範囲の中で、若手で最も集中力が高いと感じたのは、卓球の混合ダブルスで優勝した伊藤美誠さんです。相手チームの男性のペンホルダーラケットから打ち出されて来るJ字に曲がる球を受け止められず、最初の2ゲーム、惨敗しましたが、この惨敗した2ゲームで、伊藤さんは、J字のカーブを読み切りました。わずか2ゲームで、相手が何年もかけて取得した技を、みごとに読み切って、攻略したんです。伊藤さんは、身体を小刻みに震わせて、試合中はずっと動いています。3対3のあとのファイナルの7ゲーム目で、中国は、スタートから8ポイント連続で、伊藤・水谷ペアに、得点されてしまいました。明らかに精神的に崩れています。世界の卓球王者の中国のチームでも、こんなにメタルが崩れるんだと、改めて、人間の心の弱さを垣間見た思いがしました。

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