自#229「Boys be ambitious!! 身の丈に合わない大き過ぎるテーマも、若者なら許されます」

「たかやん自由ノート229」

水木しげるさんの幸福七ヶ条が、新聞に掲載されていました。水木しげるさんは、「ゲゲゲの鬼太郎」を描いた漫画家です。「ゲゲゲの鬼太郎」は、小学生の頃、リアルタイムで読んでいました。子供時分、妖怪がいると信じていたわけではありませんが、いないと云う証明はできませんし、別段、妖怪がいても、構わないとも思っていました。ぬりかべやざしき童、ネズミ男のような存在が、いないよりも、いてくれた方が、人生はヴァラィティゆたかで、楽しそうです。子供の頃も、今もこの考えは同じです。

 幸福の七ヶ条の第一条は、「成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない」です。世の中のメジャーな世界は、成功、栄誉、勝ち負けなどで動いています。この第一条を遵守すると、メジャーではなく、マイナーな、ひっそりとした、日の当たらない道を、自分一人or ごくごく少数の仲間と歩いて行くことになります。水木さんは、ラバウルで左手を失いましたが、九死に一生を得て、奇跡的に生還された方です。ほとんどの戦友はラバウルで死んでいますし、自分自身が生き残ったこと自体、摩訶不思議だった筈です。そういう極限の地獄をリアルに体験された方と、普通の人とでは、当然、人生哲学は異なっています。

 第一条が自分の性分に合っている方は、地味でマイナーな人生を、息災に歩んで行けばいいと思います。私も、成功や栄誉、勝ち負けには、さほどこだわらず、ほぼほぼ、そういうものとは無縁な人生を送って来ました。が、教師として、生徒に喋る時は、成功や栄誉を目指し、勝ち負けにこだわって、全力で突っ込んで行けと、激励し続けて来ました。自分がやって来たことと、人に言うことが違いますが、それはそれで別に構わないんです。親として、教師として、自分の子供にも、教え子たちにも、自分のようになって欲しくはないと、普通に考えています。トータルで見て、後悔はしてませんし、幸せな人生だったとは思っていますが、unhappyだったことも、どっさりありました。もう一回、この人生をやってみたいかと問われたら、きっぱりとNoだと答えます。もう一度、人生をやれるとしたら、両親二人ともいなくて、天涯孤独の孤児でも構いませんが、人生のテーマとして、宗教か言葉のどちらかを選んで、徹底的に極めてみたいと思っています。人生は、やっぱりテーマがすべてだなと、この歳になって、やっと、ある種の正解に辿り着きました。正直、遅すぎます。ですから、若い人には、全集中の呼吸で、人生のテーマを見つけ出し、それに邁進して欲しいと願っています。

 第二条は「しないではいられないことをし続けなさい」です。うーん、これだと、多くのboyたちが、ゲームに専念してしまいそうです。ゲームに専念して、eスポーツで、賞金を稼いで食って行けるようになれば、それで万事OKな方も、ごく少数ですが、存在します。が、そういう方は、限りなくrareです。普通の人は、したくないことも、若い頃は、した方がいいです。若い頃の苦労は、買ってでもしろと、昔の人は言ってましたが、したくない苦労をすることで、人間力は磨かれ、強化されます。したくないことを含めて、若い頃に、様々なことに幅広く取り組んだ後、人生のテーマである「しないではいられないこと」を見つけ出し、それに全情熱を注ぎ込むと云った生き方が、bestなんだろうと想像しています。

 第三条は「他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追求すべし」です。置かれている立場、条件も違いますし、才能も性格も異なっている他人と比較することは、まあ、だいたいにおいて、無意味です。が、他人が頑張っている姿を見て、発奮することも必要です。比較ではなく、他人を素直にrespectすると云うスタンスで、過ごして行けばいいと、私はsimpleに考えています。

 第四条は「好きの力を信じる」です。好きの力だけでなく、自己のテーマを追求することを、自分のミッションだと信じ込むことも大切です。ブレて、そこでリタイアしたら、全部、チャラになって、ふりだしに戻ってしまいます。20代でしたら、チャラでふりだしに戻っても、再スタートができます。自立(30歳)以降にブレたら、結局、何ひとつ成し遂げられない、中途半端な人生になってしまいます。孔子も、不惑、つまり40歳は、絶対に惑うなと、警告を発しています。40歳以降でブレて、中途半端な人生にならなかった人は、まず絶対にいないだろうと想像できます。いつも言ってますが、ラーメン屋や蕎麦屋を目指すのであれば、遅くても30歳です。40歳では、遅すぎます。

 第五条は「才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ」です。才能と収入は、リンクする場合もあり、しない場合もあります。現代は、金が金を生み出す世の中ですから、親の財産を譲り受け、最初からお金を持っている人の方が、より多くの収入を得てしまいます。才能とは無関係です。努力が人を裏切るかどうか、これは、ケースバイケースです。マイケルジャクソンは、「努力は報われるかどうか判らない。が、努力はしなければいけない」と言ってました。66年間、ムダ飯を食い続けて来た私の経験から、総合判断すると、努力は、やっぱりしなければいけないと確信しています。多くの場合、努力はやっぱり報われます。ただ、努力のベクトルが、その人が本来進むべき道と、大きくかけ離れていたら、結果として、報われないと云うことは、まああり得ます。ですから、結局の所、努力を注ぎ込むテーマの選択にかかっているみたいなとこもあります。

 第六条は「怠け者になりなさい」です。これは、まあガチガチの優等生とかにはなってはいけないと云う教訓だと考えて下さい。キングダムで言えば、王賁みたいな、名門の優等生は、やっぱちょっとヤバいかなと、懸念してしまいます。蒙恬のように、ひょうひょうとして、捉えどころのない柔軟さがあった方が、人生の難局に遭遇しても、切り抜けて行けそうです。

 第七条は「目に見えない世界を信じる」です。まあこれは、ヴァーチャルな世界に、どっぷり浸って生活している今の若い人たちは、割合、自然にやれているような気がします。水木さんが、今から40年くらい前に描いたアマビエを、水木プロダクションが、公式ツィッターにupすると、リツィートするフォロワーが続出しました。アマビエなんて、現実に見たことはないし、今後も見たりはしないわけですが、いても、いなくても、御利益はあると判断して、リツィートしているわけです。これは、まあ目に見えないアマビエを、浅いレベルで、信じていると、多分、言えます。

 私も、目に見えないこの宇宙の大きな摂理のようなものを信じています。その大きな摂理が、キリスト教やイスラム教のような一神教の神なのか、多神教の神々のヘッドの神なのか、あるいは仏教的なSomethig or Someoneなのか、と云ったことを、相当なレベルまで、理知的に突き詰めてみたいと云う欲望もありますが、こんな大きすぎる命題は、66歳の年寄りには、さすがにもう手に負えない、身の丈に合わない、テーマだと、自覚しています。

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