2020年2月。写真展に行った話し。
世間が未知の感染症でザワザワし始めた頃、大騒動になる少し前。ある写真家さんの存在を、知り合いのSNSの投稿から知った。
幡野広志さん。
どんな人なのか調べてみると、元猟師で、漁師の写真を撮って、病気なのに、陽気に(?)人生相談なんかもしてるらしい。
寄せられた相談に答える文面から、正直に本音を話す人だと感じた。
当時、自分のまわりに起こった幾つかの出来事によって、深く沈みそうな心に浮き輪を投げ込まれた感じがして、気がつくと、身体も浮いてそのまま渋谷で開催中の写真展に向かっていた。
本当は身体が浮くわけはなく、息子(次男)を連れて浜松から車を運転して行った。午前6時。
写真展に来てはみたものの、
困った事に、どう観れば良いかわからない。これまでアートとか芸術とかにまともに向き合って来なかった40年。碌に本も読まず、雑誌を買う習慣もない。地方の政令指定都市の端っこで自堕落な生活をしている人間が、大都会の日本文化の発信地みたいな所でどう振る舞えば良いのかわからないのだ。
隣にいる息子にはそんな動揺を悟られない様に、肘を抱えてアゴに手を当てて、老眼を訳知り顔で近づけてみたり、腕を組んでド近眼を細めて少し離れてみたりする。
しかし親切な事に
文章があった。助かった。読めばいい。
写真を観る、文章を読むを繰り返す。段々と写真からも文章からも家族を愛する気持ちが伝わって、冷たい所から引き揚げられた心が温められる感じがした。
高名な芸術家のわけのわからない作品を見せられている訳ではなく、幡野広志という人が何をどう見て、何を思い生きているのかを見せてもらった気がした。
この人の事をもう少し知りたい。販売されていた本を買った。
同じ建物内のおしゃれなラーメン屋で身体を温めてから帰路についた。12時30分。
首都高速に乗る前に、
まだ寄り道してもいい時間だと思い立ち、以前から訪れたいと思っていた靖國神社へ向かう。中学生の息子にも勉強なればいい。
参拝して、遊就館へ入ったが資料の多さに驚いた。じっくり見ようとすると、1時間や2時間ではとても時間が足りない。今回はさらっと全体を見渡して、またの機会にしっかり時間を取って来よう。館内の喫茶店で休憩してから今度こそ帰路についた。16時。
自宅に着いてから、
息子に「今日は付き合ってくれてありがとう」と伝えた。返事は「うん」のみ。元々、会話の少ない親子だけど、中学生になってからさらに会話が減っている。けど親父の思い付きの行動に、朝から晩まで付き合ってくれた。いい息子だ。
黄色い缶のビールの様なものを飲みながら、感想などを根掘り葉掘り聞きたかったが、野暮だと思ってやめた。22時。
自分だってすぐには言葉に出来ない。 4年も経ってからこんな文章を書いている。
2024年2月。
自分はいい親では無い。
人として問題がある。自覚がある。
親になる前にこの本を読みたかったけど、自分が親になった頃、幡野さんは高校生くらいだったからまだこの本は世に無かった。
これから親になる人は勿論、すでに子供がいる人、これから孫が産まれるとか、要は全ての人にオススメです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?