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梨状筋(piriformis)

今回は股関節後面の筋肉として治療の対象ともなりやすい、
梨状筋について。

梨状筋が硬くなっている方は多いですが、すべての場合でゆるめるだけでいいかというと、そうではありません。

股関節だけでなく、仙腸関節にもかかわる梨状筋について整理していきましょう!

梨状筋の起始停止

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起始:腸骨、第2~4仙骨前面
停止:大腿骨大転子
支配神経:仙骨神経叢L(4,5)、S1
作用:股関節外旋、外転、伸展
(基礎運動学第6版)
起始:仙骨前面で第2~4前仙骨孔を挟んで起こる
停止:大腿骨大転子の尖端の後縁
支配神経:仙骨神経叢S1~2(3)
作用:股関節外旋、外転
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:第2~4仙骨前面、一部は仙結節靱帯に付着
停止:大腿骨大転子の上内側部
支配神経:仙骨神経叢L5、S1~2
作用:股関節外旋(伸展位)、内旋(屈曲位)、外転
(オーチスのキネシオロジー第2版)

梨状筋は股関節の外旋筋の1つですが、外転にも作用します。

また、仙骨の前面に付着するので仙腸関節からの影響も受けますし、
逆に仙腸関節へ影響を与えることもあります。

筋機能

梨状筋は股関節外旋6筋の1つでもあり、外旋機能を有していることは間違いありません。

しかし、股関節屈曲位では内旋作用に変わることが知られており、
約60°付近で回旋作用が入れ替わります。

いわゆるMMTの股関節外旋は座位で行うため、
梨状筋以外の外旋6筋の筋力について評価していることになります。

また座位での内旋運動では梨状筋が働くので、こちらも注意が必要です。

一方、外転作用については股関節の肢位に影響されないと報告されています。

股関節外旋筋は肩関節における腱板のように、
関節の安定性に関与していると考えられています。

骨頭を臼蓋へ引き込み、求心位を保持するための機能があると考えられています。

そのため、股関節内旋や深屈曲で前方がつまる方の場合は
外旋筋の硬さや機能不全を疑う必要があるかもしれません。

筋膜連結

外旋6筋の筋膜連結については、少し複雑になります。

外旋6筋の筋膜はディープ・フロント・ラインとして内転筋から坐骨結節へ上行し、骨盤底筋へ続きます。

ここで、坐骨結節から大殿筋やその深層の外旋筋へ筋膜の連続がある場合もあるそうですが、筋線維の走行が直角となるため、アナトミートレインとしては連続体とはみなさないようです。

梨状筋の周辺組織

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梨状筋は殿部後面にあり、多くの筋や血管が走行しています。

まずは筋から整理していきましょう。

梨状筋の浅層には大殿筋が大きく付着しています。
そして上方に中殿筋、下方に上双子筋があります。

そして梨状筋の下を坐骨神経が走行し、上双子筋の浅層を走行します。

この坐骨神経の走行にはいくつかのバリエーションが報告されています。

1つは画像通りに梨状筋の下を通過するタイプ、他にも梨状筋を貫通するタイプや、二股に分かれて1枝が梨状筋の下を、1枝が梨状筋の上を通るタイプや、1枝が貫通するタイプなどが確認されています。

報告によって割合はばらつきがあるようですが、おおむね75~85%ほどは梨状筋の下を通過するようです。

治療においてなかなか症状が改善されない場合は少し考慮してみるといいかもしれません。

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(Luis et al, 2016)


まとめ

いかがでしたでしょうか。

股関節外旋だけではない、梨状筋について少し整理が進んでくれればと思います。

それではまた来週!

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