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真琴vsゆづき 番外編〜タニーマウスと不殺の誓い〜


hotシュシュ首脳陣3人がしゃにむにプロレスに向かい合ってたあの頃
「るろうに剣心」という漫画が大ヒットしていた
その後の週刊少年ジャンプの絵柄を一変させたきっかけの作品とも言われ
数年前には実写映画化もされ大ヒット
所謂Z世代という人たちの間でも認知度が高い作品である

後に作者が主人公緋村剣心の武器のバージョンアップとして重要なシーンだったと語っていたがそのシーンと対になる剣心自身のバージョンアップのシーンの方が印象が強くインプットされてる方も多いと思う

その少し陰に隠れてしまっているシーンを少し語ってみようと思う


剣心はある使命を持って京へ旅立つ
その途中に敵と対峙し愛刀の逆刃刀を折られてしまう
京に着きその逆刃刀を作った刀鍛冶新井赤空を探すも彼はすでに亡くなっていた
青空という息子がいるが穏やかな性格の彼は腕は確かだが今は包丁などの生活用品を作って生計を立てており刀は作らずこのまま平穏に暮らして行きたいという
この言葉を聞いて別の方法を模索しようとする剣心

剣心が去った後、青空の妻が「赤空の最後の一振りを譲っても良かったのでは」と漏らす
それを聞いた敵が青空の息子でまだ赤ん坊の伊織を人質に赤空最後の一振りの居場所を聞き出そうとする

最後の一振りを奉納してある神社の前に敵と対峙する剣心
いくら体術に優れている剣心といえどもトリッキーな奇剣を使う敵に素手では敵わない

その時一瞬の隙をつき青空が祠から最後の一振りを取り出し剣心に託す

剣心は刀を手にするがなかなか鞘から抜くことが出来ない

この物語の主軸は明治維新の為とはいえ数えきれない人を斬ってきた剣心の贖罪が根本としてあり
せめて目の前の困っている人の為に斬れない逆刃刀でその人たちを守って行こうという不殺の誓いという信念のもとに成り立っている
敵であろうとどんな悪人であろうとも人を斬る事は絶対に許されないのである

だが剣心は柄を握り鞘から抜刀し敵を倒した
目の前の小さな命の為に、、、


急遽体調不良で欠場したゆづき選手の替わりにXとしてメインイベントで12年半振りにリングに上がった
タニーマウスSV
ゆづき選手のガウンを羽織り自分を鼓舞する様に何度も声を上げ拳を挙げた
笑顔の絶えない飄々としたいつものタニーSVではなく
プロレスラー・タニーマウスがそこに立っていた

武藤敬司引退試合後のエキシビジョン
急遽リングに上がった蝶野正洋
サングラスを外した時と同じ目だった
獣神サンダー・ライガー曰く「プロレスラーは常に己の心の中の匕首を磨いていなくてはならない」

あの時の蝶野選手同様、引退したとはいえ一度はプロレスというもので飯を食ってきたという自負がプライドになりタニーSVは自身で気付かない間にも心の匕首を磨いてきたのだろう

試合は一気に勝負を賭けないと後でスタミナに影響すると踏んだのか
ハイスピード、ハイスパートのレスリングで翻弄、往年の必殺技もほぼ的確にヒットさせていく
だがジェークのパワー、もう1人のXでほぼ同期、ネオレディース初期約1年もの間、田村SVを苦め続けた猛毒隊の生き残りでキャットファイトでも名を残したミス・モンゴルの老獪な動きと攻め
hotシュシュではエース級の活躍をしているサマスだがタッグマッチは初めてでなかなかスムーズにカットにも行けない
孤軍奮闘するもののジェークのチェーン攻撃からのモンゴルのスモールパッケージで10分55秒3カウントを聞き天井を仰ぎ見てしまう
その刹那、彼女の胸に去来してきたものは何だったのだろうか?

「私が弱いから負けた!サマスとゆづきが組んでいたらアイツらを倒してたはずだ!!」
と叫んだ

自分は言いたい
「アナタのどこが弱いんだ?!」と

全女のピストルを潜り抜け、ネオレディースでは選手とスタッフの内部のゴタゴタに巻き込まれ、辿り着いたのがNEO
だがその全盛期トップ所にいたのは井上京子、三田英津子、田村欣子、元気美佐恵といった剛の者たちだ
その剛の者たちに対抗する為、柔の力を
更に技・速・笑という力をプラスし昇華させていった
オンリーワンのプロレスラーじゃないか

心は勿論、技術という直接の殺傷能力のある匕首を常に磨き続けてた者だけが魅せれるオーラ
自分をそして仲間を鼓舞する為に挙げられた拳
ゆづき選手との友情、hotシュシュという団体を背負ったその背中
どれだけやられても立ち上がり動き続けることで勝機をそして活路を見出そうとするその精神

「アナタほど強いプロレスラーがどこにいるんだ」


hotシュシュ旗揚げ時
噂されたのは両SVの現役復帰だ
その度に復帰を否定
「復帰する人のことを否定はしないが、一度引退した人間が復帰するというのは自分の美学に反するので無い」
という趣旨の発言をしている
(試合後の囲みでも同様の発言が)

美学というのはイコール信念、
そして自分への誓いに通じていると思う

目の前にいる困っている仲間たち、
待っている観客の為に自分自身との誓いを破った
タニーマウスというプロレスラーに最大の賛辞を贈りたい



試合後、売店で声を掛けさせてもらった
最初にタニーSVから出た言葉が

「ゆづきちゃん残念でしたね。ごめんなさいね。」

その瞬間胸が詰まり目頭が熱くなるのがわかった



END

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