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TAKAKIとあの日原チャリで #6 終



とうとうアジャ・コングが観客の前にその姿を現す

会場の熱気がピークに達した

「ヤベーTAKAKI怖いんですけどー」
「震えますわー」

まだ入場曲が鳴ったばかり
昔はスーパーの屋上でよくやっていたヒーローショー
悪者が登場する時のおどろおどろしい曲がかかった時の恐怖とワクワク感が入り混ざった何とも言い表せないあの感情に似ている

伊藤選手が入場、その後に続いて京子選手が姿を見せる

そしてアジャ選手が睨みを効かせシンボルアイテム一斗缶を持って現れた

この時は少しでも近くで見てやろうと青コーナー花道の側まで移動していた

赤のベルトのチャンピオンだったがベルトは巻いてなかったような記憶がある
この頃のチャンピオンは選手権試合以外ではベルトを毎回巻いてくるというのはなかったかもしれない

地方の人間からするとベルトを巻いて登場するのを楽しみにしてるところもあるだろうが
個人的にはNOだ!
水戸黄門の印籠のようにここぞという時にキメて欲しい
どこでも見れるのはやはり価値が下がるようにも思えるので

でもまああくまでも個人的な意見に留めておこう

第一アジャ選手レベルになればベルトを巻いていなくてもベルトを巻いてる以上の貫禄とオーラを醸し出せるというもんだ

そんな王者のオーラをビンビンに立たせゆっくりと花道を歩く

そして自分達がいる方に近づいてきた

「え?、、、××××ない?」
少年の正直な気持ち

ごめんなさい
これ以上は書けません、、、

だが王者の風格は観客全てを凌駕し場内の空気を一変させた

二年にも渡るジャングル・ジャックと獄門党との抗争
憎み合い殺し合いの様な日々を経てブル中野というあまりに高すぎる壁を乗り越えた
その自信がアジャ・コングというレスラーを更に大きくみせ全ての観客の心を掴んだ


そして赤コーナー花道からは豊田真奈美、井上貴子、長谷川咲恵が入場

「わあ貴子」「わあ豊田」ときっと2人してウットリしてたのだろう

今回のこのカードを見ててこの頃の軍団(今でいうユニット)関係がごちゃっとしててよくわからない

元々獄門党のアジャと京子はJJとの抗争も終わってるのでまあ組むのはわかる
伊藤薫もJJなのでまあ
豊田と長谷川はフリーダムフォース
でも伊藤薫もフリーダムフォース
てことはこの時はJJも獄門党も解散してたのかフリーダムフォースがまだ結成されてないのか?
全女のこの辺の軍団っていつも曖昧で頭で整理できない

まあ単純に地方興行だからで済む話かな

自分わりとこういうのきっちりしいなんで気にはなる


そしてアジャ組とは違った華やかなオーラを醸し出し観客を魅了していた

それぞれがコールを受ける度に体が埋まるほどの紙テープが飛び交う


、、、ってとこまでは不明瞭ながら思い出される

21分59秒
ということはそれぞれの見せ場や場外戦と一通りの攻防はきっと観れたのだろう

残念ながら全く何も覚えていない

試合が面白くなかったから覚えてないわけでは絶対にない
このメンツが試合をして面白くならないわけがないでしょ

ピュアボーイが初めてのプロレス生観戦
スーパースター達が一堂に介したこの宴
彼女達がリングに立っている光景だけで記憶の容量がいっぱいになってしまっているのだ


試合が終わり先日亡くなった角掛留造が会場撤収のアルバイトをつのる
ギャラは選手グッズ(パンフが多かったと聞く)

そしてスター選手達は売店でのサイン会が始まる
貧乏高校生ロックンローラーの自分と貧乏チンピラヴィジュアルショッカーのTAKAKI
2人して指を咥えてうらやましそうにその光景を眺めていた

「とりあえず出てジュースでも飲もか?」
「そっすね」

会場を出てジュースを買いそのまま会場前に座り込み選手グッズを嬉しそうに抱え帰路に着く人をタバコを吸いながら見つめる

「カメラ持ってきたら良かったなー」
「ホンマっすわー」
「でもおもろかったなー」
「めっちゃ興奮しましたわ!」
「な!興奮したよな!」
「うん!」
「来年もくるやんな?」
「毎年来てるからくるんちゃいます?」
「やんな!来年も観に来よな!」
「次は貴子のサイン絶対もらいますわー」


初めてプロレスを観た日
得も云われぬ興奮と感動に包まれた

そして来年の約束をした

タバコを揉み消し立ち上がる
祭りの終わった後の侘しさに後ろ髪を引かれながら

「帰ろうぜ」






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