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TOO FAST TO LIVE,TOO YOUNG TO DIE #5

全試合終了
メインイベントを終えた選手たちが売店の席に着き始めた

「今日はサインもらうわー、TAKAKIは?」
「貴子にもらいたかったからどうしよう?」
「豊田は?」
「いやーちょっと悩みますわー」
「わかった、ほなオレもらってくるから考えときー」
「うん、わかった」

今の売店はというか実際のところhotシュシュ以外での選手がいる売店というのはわからない
プロレス観戦復帰してからそんなにいろんな団体を観てないのもあるし基本チラ見するくらいなのでよくわかっていない
でもやっぱポートレートとチェキ辺りがメインなのかな?

ただこの頃はどちらかというとサイン会という感じでスター選手の横で新人がお金の受け渡しをしそのグッズに黙々とサインしているイメージだ

サイン色紙が千円、選手の写真がパウチしてあるミニうちわが500円

「こんなん絶対うちわのが得やん!」
今思っても絶対こっちの方がお得感があると思う

自分も売店に近づいたものの誰のサインが欲しいのかはよくわかっていなかった

「うーん、まあ豊田、アジャ、京子かな?」
まあ実際この3人が実力、人気ともにトップ3だったのは間違いないのでこの3人のサインをもらおうと決めた

確かまず豊田さんにサインをもらった
淡々と黙々とサインを書いてくれた
握手もしてくれたのかな?
愛想という意味では全く無かったけど
自分なりの豊田真奈美の佇まいというか雰囲気というかそういうイメージ通りだったので感動した

そして次はアジャ選手
内心ビクビクしながらサインを頼んだ
アジャ選手も黙々とサインをしてくれた
これまたアジャ選手のイメージ通りで感動した
今はわからないがこの時のアジャ選手がニコニコ話しながらサインされていたら逆にイメージと違うと思ってたんだろうなあ
ファン心理とは複雑だ
確か握手はなかったと思う(言えばしてくれたんだろうけど)
「やっぱアジャは握手してくれないんだー」
それで逆に喜ぶんだからもうわけわからんちんどもとっちめちんである

そして最後に京子選手の所に
この時にはTAKAKIはやはり一途な想いが勝ったのか何も購入せずに自分の横にいた

「あ、すみませんうちわで、、、」
得意のTOO SHY SHY BOYからくるボソボソ声だったであろうか
それとも試合を観た後のテンションと後輩が隣にいるというなんかカッコつけたい思いで
いきがって
「あ、うちわおねしゃっす!!」
どちらだったのかは覚えてないが
考えてみたら京子選手の付き人は当時はタニーさんのはずなのでもしかしたらここで初めて会話(って言うほどのことではないが)したのかもしれない

京子選手はいつもの陽気な感じで
「はぁい!ありがとうございまーす!」
ってこの言葉のアクセントとかわかるよね?!
みんなわかるよね?!
なんか泣きそうーー

さあこのシリーズの大トリは井上京子選手

貴子選手や吉田万里子さんと同期の昭和63年組で今年デビュー35周年
全女はこれまで数々のスターを生み出してきたがビューティペアもクラッシュギャルズも極悪同盟ももの凄い華があったがその反面どこかで陰がチラついて見えていた
そこが魅力的な部分の一つには間違いないがそれをぶち壊し、完全なる陽のレスラーとして初めて出てきた(スターになった)のが井上京子選手かもしれない

新人の頃からその動きの凄さは抜きん出る者がいないほどだったが全盛期100kgの体重でも同じ動きができたことが天才性を如実に表している
そしてみんなが使う基本技ですらひとアレンジを加えオリジナル技に昇華できるというセンス
何より上記の通り誰もが笑顔になる様な圧倒的な陽のパワーで観客を魅了していた

全女退団後はネオ・レディース、NEOそしてディアナで後輩や新人も指導・育成
田村欣子やタニーマウス、元気美佐恵といった選手達は更に大きく成長
NEOを見て育ったSareee選手はWWEで活躍
ディアナの現チャンピオン梅咲遥選手は女子プロレス界の中でも若手のホープと挙げ出すとキリがない

そして現在も「プロレスラーとは?」
というものにこだわり
・プロレスラーは長袖を着ない
・プロレスラーは傘をささない
・プロレスラーは100kgないといけない
等々のこだわりを持ち実践している(流石に少し緩和されてるみたいだが)

昭和の遺産の様なプロレスラー像だが自分は逆にこういう若手選手が増えることを期待している

サインが書き終わり両手でしっかりと握手してもらった

ツーショット撮影した選手が3人だけと以前語ったがもしかすると握手したことあるレスラーもこの時の豊田さん、京子選手とアントニオ猪木さんの3人だけのような気がする

握手後に
「あ!写真撮ってもらお!!」と急に思い立った
写るんですは一回一回カリカリするのも面倒だし何より試合に夢中で数枚撮って忘れてたのだろう

恐る恐る
「写真一枚いいですか?」
「いいですよ!一緒に撮ります?」と笑顔で京子選手は答えてくれたのに
TAKAKIも横に居て撮ってもらえばいいのに急にTOO SHY SHY BOYを発症してしまい
「あ、そのままでだいじょうぶですぅ、、、」
あーイラつく!なんやねんコイツ!!
って今も変わらないけど

「??」顔の京子選手

「じゃあいきまーす!ハイ!」
でシャッターボタンを押したが「カチッ」という写るんです独特の感触が無かった
しかも新品を持ってきてたわけではなく撮りかけのやつだったのでこれが最後の一枚だった

「あ、あれ?あれ?」とキョドっている自分に
「もう一回撮りますか?」と京子選手が声をかけてくれたが何だか急に恥ずかしくなり
「あ、あ、大丈夫です。ありがとうございました」と会釈
TAKAKIも京子選手に会釈をして会場をそそくさと後にした


そしてこれがTAKAKIと一緒に観たプロレスの全てである






続く

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