運転士が寝られる時間

おはようございますこんにちは。
泊まり勤務明けのRailmanです。
さてさて、今日は有名YouTuberのスーツ氏も触れていた運転士の寝られる時間についての実情を書きたいと思います。

まず初めに質問です。
あなたは通勤通学の為に朝、電車に乗りました。運転台には泊まり道具(着替えや洗面用具)が入った自前のバッグを持った運転士が座り、眠そうな顔をして座っています。

さて、何時間ぐらい寝たと思いますか?

一概には言えませんが、だいたい4時間程です。

運転士(車掌も)には「着発6時間」という基準があります。不勉強故、これが全ての会社に通じる国土交通省の基準なのか、それとも弊社独自の基準なのか明確にお答え出来ないのですが、
「宿泊を伴う勤務の場合は乗務終了から翌朝の乗務開始まで6時間は空けましょう」
というものです。

なんだ、6時間も寝れるのか、普通じゃん?
いえいえ、色々カラクリがあるのです。

この6時間には、純粋な睡眠時間の他に入浴や身支度の時間、さらには車庫での点検(出区点検)や車庫からの出し入れの時間(入換)が含まれています。
例えば、0時丁度に車庫があるA駅に着き、車庫に入って宿泊、翌朝6時丁度にA駅を発車する電車を担当する泊まり勤務(仮に101行路とします)があるとします。
0時に着いて6時に発車するので「着発6時間」となり基準はクリアします。
しかしなが、出区点検や入換の時間、そして入浴や身支度の時間は含まれていません。ちょっと様子を覗いてみましょう。

0時に定時でA駅に到着、駅さんの車内点検が終わり「識別点灯!入換進行!」とタラタラ25km/h以下で車庫に入っていきます。
短くても10分ぐらいはかかるでしょうか。
無事に留置線に止めて機器整備をして庁舎へ向かい「✖️✖️乗務区101行路です!●●M、●▲番線に入区完了異常ありませんでした!」と、車庫の当直助役と到着点呼を執ります。
すでにこの時点で20分は経過。
時刻は0時20分。

寝室に入りシーツを敷いて着替えてお風呂へGO!
古いけど広々した大浴場はなかなか快適で、ついついゆっくり浸かりたくなってしまいますが、その分睡眠時間は減ってしまいます。
カラスの行水のごとくさっと済ませて寝室に戻り起床装置をセットします。
時刻は0時45分。
翌朝の点呼は5時丁度。
身支度を整える時間を考慮して4時30分に。
あ、既に4時間も寝れません…。


この日は隣室のイビキがうるさく、なかなか寝つけません。ふと時計を見ると時刻は1時30分。おっと睡眠時間は3時間を切りそうです。そろそろヤバイので布団を頭まで被ってなんとか就寝。しかし非情にも起床装置が作動して叩き起こされました。
時刻は4時30分。
寝たのか寝てないのかよく分かりませんが、寝坊は遅刻と並ぶ禁忌なので無心で身支度を整えて部屋を出ます。

時刻は4時50分。
車庫の当直助役と起床点呼を執ります。
「おはようございます。✖️✖️乗務区101行路起床しました。●●M出区担当です」
と言い、出区票と言う番線と編成番号、出区時刻が記載された紙を貰います。とりあえず「ちゃんと起きたよ」という報告は済みましたので眠気覚ましのコーヒーを飲みトイレに寄り、いざ出区点検へ。


時刻は5時10分。
今の時期は寒いですが、晴れていれば星が綺麗だったりしてちょっとホッとする時間でもあります。10両編成の下回りや客室内、乗務員室内をゆっくりしっかり点検。最後に起動試験を行って出区点検は終了。
だいたい30分ぐらいでしょうか。


時刻は5時40分。
運転台に腰掛け、入換信号機が開通するのを待ちます。
出区票記載の出区時刻から逆算すると、間も無く目の前の入換信号機が開通するハズです。
ほどなくしてボワッと入換信号機が開通しました。
「識別点灯!入換進行!流しノッチ!」
気笛一声とともにちょっと錆び付いていたようなギシッとした音を立てて電車が進み始めました。
25km/h以下でタラタラA駅に向かいます。


最外方の入換信号機を通り、いよいよお客さんが待つホームに据え付けです。
「編成10両!」
進入時に車掌さんに手を挙げて挨拶をします。
「滅!出発停止!」
ドアが開きお客さんが乗り込んで来ました。


時刻は5時55分。
発車までの5分間、約5時間後の退勤までいかに眠気と闘うかを思案しながら短くとも長い朝が始まりました。

………

いかがでしょうか?
イメージは伝わりましたでしょうか…
結構リアルな流れだと思います。リアルって、そりゃ今朝の流れを少し時間設定をずらして書いただけなので当然です笑
ハッキリ言って基本的に睡眠不足。当然、乗務中に寝ることはありませんが、目の前に布団があったら数分もあれば寝れるぐらいには眠いです(って相当眠いんじゃ…汗
「判断鈍るなぁ」と感じる場面もありますが、そこはよく言われる使命感やらプロ意識やら、そういう類のモノで乗り切っています。あと良い意味での慣れも。

最近、初終電の繰り下げ繰り上げによって鉄道現場の労働環境を改善していこうという流れが出始めました。しかし「本当に待遇改善が目的なの?」と、単純に喜べないのが実際の感想です。「働き方改革」の名の下、名実共に進化して仕事も私生活もバランス良くなる他業界を横目にシレッとキツくなっているのが鉄道業界です。
今回は睡眠時間にのみ焦点を当てましたが、実際にはもっと沢山の要素が複雑に絡み合って現状が出来上がっています。そして、それら全てを総合的に俯瞰して論じることは、今の私では力不足です。
とりあえず、朝早くや夜遅くに電車に乗る時、こう思って頂ければ幸いです。
「あ、みんな頑張ってるんだな」
と。
ぜひぜひ、何卒宜しくお願い致します。

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