リモートワークが中心の時代に、チームワークを発揮するコツは「独り言」である
もしもあなたの隣で仕事をしている同僚が、ぶつぶつと独り言をつぶやいていたらどう感じられますか?
「ちょっと気持ち悪い」
「気になって自分の仕事に集中できない」
...そんな意見が出てくるのではないでしょうか。
しかし、この「独り言」こそが、リモートワークでチーム作業を成功させる秘訣なのではないか、と感じたエピソードがあるので紹介させてください。
つい先日、新入社員向けにプログラミング体験研修を実施しました。これからの時代にますます重要になってくるプログラミングを全ての新入社員が体験する研修です。
講義をただ受けるだけではつまらないので、学んだことを活かして実際にプログラミングをする機会も合わせて作りました。与えられたテーマに対するアプリをチームに分かれて一日で開発し、審査員が順位を決めるコンテストです。
一日でアプリを開発するこうしたイベントは「ハッカソン」と呼ばれています。プログラマーが手を動かす「ハック(Hack)」と、それを一日続ける「マラソン(Marathon)」から「ハッカソン(Hackathon)」だそうです。
緊急事態宣言の最中でしたので、オンラインでハッカソンを開催することになりました。初めての挑戦です。色々な準備をして望んだハッカソン当日、チームメンバー同士が仲良くなれるように織り交ぜたアイスブレイクもうまく行き、ハッカソンは順調にスタートしました。
私達運営は全てのチームのビデオ会議に参加し、何か問題があった場合のフォローに備えました。全てのチーム活動を一堂に見渡すことができる貴重な立場です。私達は、時間が進むにつれチーム内の会話量が大きく変化していく様子を観察することができました。
あるチームは会話が特定のメンバーに偏っていきました。プログラミングが得意なメンバーが黙々と作業を進め、それ以外のメンバーはプログラムされた結果をウンウンうなりながら一生懸命解読しようとしています。プログラミングが得意でないメンバーは発表を頑張る、などやれることはたくさんあるのですが、何が起きているのかを理解することに一生懸命になりすぎているようでした。
別のチームは途中から分業をする作戦を取りました。分担を決めたら作業中は一切会話をせず、作業が終わり次第結果を報告していきます。効率性を重視した作戦でしたが、途中でつまづいても作業時間が終わるまで相談ができず、結局はたくさんの無駄が出てしまったのかもしれません。
最もクリエイティブだったチームは、最後まで会話量が減りませんでした。特に際立っていたのが、プログラミングを主導するメンバーの独り言です。
「ええと、今から新しいキャラクターを表示しようと思います。キャラクターを表示させる方法は、あのページに書いてあったはずなのでまずはそこを見てみますね」
「ふむふむ。このページによると、キャラクターを表示するにはスプライトっていう機能を使うといいみたいです。ソースコードも載ってるんで、それをそのままコピペして動くかどうか試してみますね。」
「うまくいった!」とつぶやけば、プログラミングが詳しくない他のメンバーも一緒に喜びます。たとえそれが小さな一歩であったとしても、チームの空気が軽くなり、盛り上がる様子が伝わってきます。
逆に、うまくいかなかった時にも、多くの独り言が聞こえてきます。「あれ?Aになると思ってたのに、Bになっちゃったなー」。期待していたことに対して、目の前で起きた事象が聞こえてきます。「もしかして、これがダメったかな?それなら、X案とY案があるんで、ちょっと試してみるか。まずはX案いきますね」。うまくいかなかった原因と、それを解消する仮説が聞こえてきます。
うまくいっていないようでも、停滞せずとにかく前進しようとしていることが伝わるので、プログラミングが得意ではない他のメンバーも安心できた様子です。
安心できると提案もしやすいようです。他のメンバーが得意なことはデザインや時間管理などバラバラなのですが、それぞれができることを上手に提案しあって、クリエイティブな成果物を生み出していました。
どのチームから出てきた成果物も素晴らしく、審査は難航しました。そして優勝を勝ち取ったのは、独り言を駆使し、最後まで会話が途切れなかったチームでした。
オフラインでは「見れば分かる」ことが、オンラインでは見えなくなります。その状況を見えるようにするのが「独り言」だと気がつけたのはとても有益でした。
リモートワークが中心となるこれからの時代、チームワークを発揮するコツは「独り言」。オフラインではちょっと気持ちが悪い独り言も、オンラインでは強力な武器になるようです。
やってみると意外に難しい独り言。ちょっとだけ試してみませんか?
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