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VS徳島(H)2022.5.25(Wed.)

◆パライバの決定機◆
 鮮烈なスルーパスだった。
 三平の右足から放たれたボールに須貝が抜け出し、狙いすましたクロス。
パライバが滑り込みながら左足で合わせると、ボールはポストを叩き。。

 前半6分の決定機。
 先発抜擢に応えるシャドー三平とパライバの良さが際立つシーンだった。

 さらに畳みかけるように、関口のサイドチェンジ、荒木の素晴らしい左足クロスから三平のヘッド。ペナルティエリア内でのフリーになる上手さが光るも、枠をとらえることはできなかった。
 とはいえ、前半立ち上がりに決定的なチャンスを生み出すことができるのは、最近の甲府の良いところだといえるだろう。

 だが、最近の甲府の悪いところは、前半のうちに相手にペースを明け渡すところだ。徳島の果敢な最終ラインへのプレスと、鋭い攻撃は甲府にとって脅威であった。
 ここ3試合と違いが見られたのは、浦上を中心に効果的な縦パスが多くみられたこと、中盤よりも前の選手たちが相手のボール保持者にアタックをかけたときに一歩深く、ボールを絡めとるように足をのばす場面が増えたことだろう。
 関口の動きに切れが戻ってきたことも好材料だし、小林と長谷川の呼吸まではいかないが、荒木と長谷川の組み合わせになっても左サイドの攻撃の鋭さが時間を経るごとに発揮できていたのもよかった。この左サイドはまだまだクオリティ向上の余地があり、とても楽しみなところでもある。

◆失点そしてパライバの負傷◆
 徳島の流れは続く。杉森のカットインからのシュートなどあわやゴールという場面もいくつか作られている中でのフリーキックから、甲府は失点を喫する。
 野澤陸のファールで与えたフリーキックだった。ーここでもらったイエローカードが大きく試合に影を落とすのだがーふわりとしたボールに、まず関口・カカのミスマッチで大きく制空権を取られ、浦上と内田の競り合いでも負け。ヘッドも抜群の位置に飛び、キーパーも為す術なし。高さのない甲府にとってこのような失点は100%防ぐことは厳しかった。36分のことだった。
 悪いことは重なるもので、チームの中で生かされる形がようやく見え始めていたパライバが負傷。着地の際に左足を痛めてしまったようだ。痛がり方からも腱を損傷したかのような。。今季絶望なんてことにならなければいいが。。とても心配だ。センターフォワードはセンターバック同様非常に層が薄い。チームにとってアキレス腱ともいえる場所だけに。。

 パライバに代わり、鳥海が入り、流れは変わらないまま前半が終了。後半開始と同時に三平に代わってリラ、林田に代わって石川が入る。そして、試合の流れは大きく甲府のものへとシフトしていく。

◆マエストロ石川と可能性の原石林田◆
 石川の出来は抜群だった。ボールの刈取り、パスの配給、泥臭くあり華麗。かつて林健太郎が得た称号を冠する選手が再び甲府に現れた。
 ここまでチームの心臓であり続け、絶対的なボランチである山田陸。石川俊輝は、彼と並び立つ、いや今やそれ以上の存在感を放ち始めている。柔と剛のスペシャルボランチがここからの甲府の中核となっていくだろう。
 大卒1年目でありながら、この石川と熾烈なスタメン争いを繰り広げていた林田もすさまじいポテンシャルを秘めた選手である。センターバック、ボランチ、シャドー。どこでも輝ける選手だと(個人的にはシャドー推し)思っているし、林田の成長=チームのすべてのポジションの格上げにつながると信じているので、ぜひこの2人からスタメンを再び奪取できるような活躍を見せてほしい。

◆PK獲得+同点◆
 後半開始から甲府は長谷川と荒木の左サイドを主戦場に徳島守備陣を切り裂いていく。後半開始早々、荒木からのパスを長谷川がスルーして山田の強烈なミドルショット!ここは相手キーパーの正面で大きくはじき出されてしまう。かと思えば浦上からのロングボール一発で右サイドの鳥海が抜け出す。そこを後ろからカカに倒されるがPKはなし。普通なら途切れてしまうところ、鳥海は気持ちを切らさずにプレーを続ける。
 しかし、近くにいた長谷川も関口もセルフジャッジで足を止めてしまい、ペナルティエリアに走り込むことができず、得点チャンスにつなげることはできなかった。

 だが55分、野澤陸のサイドへの開きから荒木、長谷川、再び荒木とつないで、ダイアゴナルランでペナルティーエリアへ鳥海が侵攻。新井のファールを誘い、今度こそPKを獲得する。鳥海のトリッキーな動き出しとボディバランスが生み出したビッグチャンス。これをリラが落ち着いて決めて甲府が同点に追いついた。残り時間は十分。この流れで一気に勝ち越し点を狙いたいところである。

◆長谷川元希◆
 どんなにチーム状態が悪い時でも甲府の攻撃の中心であり、キーマンであり続ける長谷川元希。裏への抜け出し、機を見たドリブル突破、芸術的かつ的確なタイミングでのパス出しはこの試合も相手の脅威であり続けた。チーム内で与えられた役割の中で葛藤が続いているという情報も聞こえてくるが、彼の中では答えが見えつつあるように感じられる。左サイドの活性化ぶりがそれを物語っているように見えた。
 だが、1つだけ状態が落ちていることを挙げるとすれば、トラップ。イメージがハイレベルだけに、その難易度はとてつもないものだろう。しかし、長谷川元希なら、それを実現できることは今までのプレーが証明してくれている。再び、イメージ通りにボールを止められる長谷川が戻ってきたとき、甲府の攻撃力はもう一段階高いレベルに昇華されることだろう。

◆届かぬ一歩と足りない思考力◆
 時間を経ることに向上する荒木と長谷川のコンビネーションの精度。連戦の中でも発揮される浦上の安定した守備と相手の急所をつくロングフィード。チームが窮地に陥るほど発揮される須貝の圧倒的な運動量と魂のこもった守備。3戦連続引き分け中の中でもチームは着実に成長をしているし、内容も、個人の質も勝利にふさわしいものへと高まりを見せている。
 前節寄せの甘さから先制点を許した鳥海は、サイドへのプレスは強度を増し、攻撃時は不安定なジャッジの中でも、常にプレーをし続ける姿を見せてくれた。セルフジャッジをせず、ファールすれすれの、いやファールを受けてすらも間髪入れずに次のプレーを選択し続けた。

 前節クロスの精彩を欠いていた関口も、この試合、体の切れや判断力の良さが光るプレーを見せ、そして、最大の見せ場がやってくる。

 70分。河田からの一発のボールだった。胸トラップ一番、完全に裏を取った関口が最高のクロスをリラに供給する。

 押し込むだけのボール。リラは左足を伸ばした。しかし、つま先をかすめただけのシュートは力なくリラをすり抜けていった。

あと半歩。走り出しが早ければ。。
押し込むように、と、体を投げ出していれば。。
勝利を逃す一因となった悔やまれるシュートだった。

 だが、それ以上に問題だったのは、野澤陸の退場である。チームはゲームの流れを完全に掌握し、宮崎、小林を投入して勝ち越しゴールを狙っていた勝負の時間帯である。

 ゲームのテンションも最大限に上がり、審判も遅延行為に対してナーバスになってくるタイミングでもあった。そして、この試合の審判はとても不安定なジャッジを行っていた。

 あのタイミングでファールをした側が、必要以上にボールを抱えて自陣に走り、雑にボールを投げ捨てたらどうなるか。2枚目のイエローカードをもらって退場である。相手のアピールもうまかったし、果たして甲府にとって遅延行為にメリットのある状況だったのか、退場に値するようなプレーだったのかは疑問だ。

 前半にも野澤は似たような行為をしており、おそらく癖。習慣。考えなしになんとなくいつもどおりやっていることをやってしまっただけなのだろう。イエローカードをもらっているにも関わらず。

 イエローカードをもらう危険性も顧みず。


結果チームは引き分けた。

◆まとめ◆
 野澤陸は、チームにとって欠かせない戦力に育ってきてくれている。空気を読まないそのプレースタイルは、主に良い意味でゴール前での常人離れした落ち着きやプレーの選択につながっている。最近は体の向きやフィードにも改善が見られ、1試合に1本はあぶなっかしいパスを出すものの、期待感をもって見られるようになってきた矢先の退場劇。悲しみと怒りと、情けなさと。言葉にならない虚無感が今も胸の中でもやもやとして消えてくれない。

 普通なら退場になるような行為ではないのかもしれない。ゲームの行方を左右するほどの重要度もなく。注意で済む程度なのだろうとも思う。でも、野澤があの場面でやる必要があった行為かというとない。全くない。ジャッジはコントロールできない。ならば、危険性を減らすことが必要だった。

 結局、失敗という経験を次に繋げていくしかない。何度繰り返そうと。

チームは確実に成長している。この4試合、なんとか引き分けだったところから勝利まであと半歩のところまで来ている。

次節は熊本。

大木監督率いる好チームを相手に、よりアラートに、より一体感をもって、勝ち点1と3の間にある壁をぶち破り、勝利を手にしよう。そこで掴んだ自信は絶対にチームを再び上昇気流に乗せてくれるはずだから。






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