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【天皇杯】VSサガン鳥栖2022.7.13(WED)

◆メンバー◆

           パライバ
       内藤        飯島
          石川  中山
       小林        関口
        レナト 野澤陸 大和
            岡西
ベンチ 山内 須貝 浦上 荒木 鳥海 松本 宮崎

 秋田戦に先発した選手は野澤陸のみ。とはいえ、リーグ戦スタメンクラスのメンバーが半数以上を占める。内藤、中山、レナト、岡西の4名がどれだけインパクトを残せるか注目したい。

◆秋田戦の炎を引き継げるか◆
 秋田戦の先制点から、闘志と自分たちのサッカーを融合させ、圧倒的なパフォーマンスを披露したリーグ戦のメンバー。あのテンションを、種火を、天皇杯のメンバーが引き継ぎ、育て、週末の水戸戦につなげることができるか。天皇杯のベスト8進出と同様に、甲府のチーム力が試される一戦となる。

◆慎重な立ち上がり◆
 序盤は、鳥栖がボールを持ち、甲府が守る展開が続いた。その中で、ボランチに入った中山が攻撃に効果的に絡む姿も見られた。
 パライバ、内藤、飯島のFW陣も流れの中でポジションを入れ替えながらチャンスを探る。前半13分には、右サイドでボールを受けたパライバがセンタリングし、内藤大和がヘディングシュートを放つ。

 関口が長い距離をドリブルでもち上がるなど局面局面で単発の見せ場を作るものの、決定的な場面を創出するには至らない。鳥栖も森谷の精度の高い右足、相良の深い切り返しを特長としたドリブルなどで甲府陣内に圧力をかけるが、甲府守備陣の集中力が勝り、最終局面まで打開することはできずにいる。

 甲府としては、ボールもたれてはね返すの繰り返しでやや劣勢のまま時間が過ぎていく。このままでは、いずれ鳥栖の圧力の前に屈することになりそうだ。そう感じ始めた前半33分のことだった。

◆先制ゴール◆
 右サイドやや絞ったところでボールを受けた関口が中山へパスを出すと、中山はダイレクトプレーで飯島陸に楔を打ち込む。飯島が左に位置どるパライバにパスを出すと、トラップで浮いたボールを右足で振り抜く。そのボールがブロックに入った相手DFの懐に当たり、コースが変わってゴールイン。劣勢をはね返す貴重な先制弾となった。

◆追加点◆
 さらに畳みかけるように追加点が生まれる。飯島陸のハイボールのナイストラップを起点に、左サイドを駆け上がる石川。完全フリーの状態で石川にボールをもたせては、ピンポイントのクロスが上がってくる。ペナルティエリア内でも内藤大和とパライバが入れ替わりながら、相手をかく乱し、フリーとなったパライバがゴールへ確実に流し込んで2-0。ストライカーとしての役割を十分に果たしてくれた。

 内藤大和もよい動き出しで、関口やパライバのパスからあわや抜け出すチャンスを作り出したが、あと一歩のところで防がれてしまう。

 キーパー岡西も安定したキックを披露。コーナーになりそうな自陣ゴール前のボールを果敢にスライディングクリアをみせるなど果敢なプレーで試合勘を取り戻してきていることを感じさせてくれた。

 2-0でリードしている状況だったが、鳥栖の個の質は高く、島川のミドルシュートや、前半終了間際の垣田のクロスバー直撃のドライブシュートなどは本当に脅威であった。

 しかし、野澤、大和、レナトの3バックは高さ対人ともに素晴らしく、鳥栖の攻撃陣の迫力に圧される場面こそあったものの、無失点で前半を折り返す原動力となった。

◆後半開始◆
 2-0のビハインドを負った鳥栖が出力を増し、ランニング、縦パスのスピードを高め、甲府ゴールをこじ開けようと圧力を強めてきた。しかし、甲府守備陣も負けてはいない。しっかりと対応し、ゴールを許さない。

◆存在感を増す飯島陸◆
 後半になると、飯島陸の存在感が急激に高まりをみせる。飯島の抜群の飛び出しにより、キーパーが飛び出してる状況でのボールキープに成功。ガラ空きのゴールに何とかボールを押し込もうと関口も果敢にフォローにまわるも、相手のファールによって止められてしまう。

 守備での圧力も増し、さらに奪いきる守備ができるようになった飯島は、相手にとって非常に恐ろしい存在だっただろう。相手最終ラインに襲い掛かり、ボールを奪いきったシーンでは、一気にパライバとキーパーの1対1の大チャンスを生み出した。パライバのループシュートはキーパーに掴まれてしまったが、その直後にも飯島の素晴らしいボール奪取からカウンターを発動させるなど、秋田戦で見られたリミッターが外れたかのような選手たちの躍動が甲府の選手全体に波及し始める。

 時折鳥栖の鋭いパス交換から突破を許し、大きなピンチを迎えるがゴールが枠を捉えず無失点をキープ。ますます鋭さを増す縦パス。だが、肝心なところはやらせない粘りは前半から引き続き維持できている。

◆石川俊輝の熱きプレーとパライバの視野の広さと意外性◆
 チームの闘う姿勢は、石川俊輝のプレーからも溢れ出していた。切り替えの早さ、体を張ったボール奪取、効果的で鋭いパス。ベテランとは思えない、山田陸をも凌駕する鋭く、ガッツ溢れるプレーぶり。

 石川が右サイドで素晴らしいボールキープを見せ、中央のパライバを狙ったクロス性のパスを出す。パライバは、ここで頭に当てるかと思わせつつ、逆サイドの上がりを感じてスルー。小林岩魚のクロスを引き出す判断力の良さを見せる。

 さらに、甲府では右サイド前方でボールを受けて、出しどころがないと後ろに戻すという定石のようなプレーがあるが、パライバは一味違った。走り込む選手を感じ取って左斜め前にパスを差し込み、チャンスを広げることに成功したのである。何気ないプレーだったが、あまりにもバックパスが当たり前になったあの場面でパライバのプレー選択は新鮮だった。ランニングの量や迫力、守備に関してはまだまだ物足りないものがあるものの、攻撃に関する視野の広さやセンスのよさが光った。そして、何より得点をとってくれたことが素晴らしかった。

◆選手交代◆
 素晴らしい出来だった飯島陸とまずまずの存在感を見せた内藤に代え、宮崎純真と荒木翔が投入される。2人ともシャドー。甲府の攻守両面の圧力を強める働きが求められる。

 荒木、宮崎の投入で機動力を増した甲府。流れるような攻撃で鳥栖ゴール前に迫るも純真のシュートがヒットしない。

71分には、中山陸に代えて、秋田戦勝利の立役者の1人、松本凪生が投入される。

75分に鳥栖に崩され、宮代にゴールを決められてしまう。2-1。暗雲立ち込めようかというそのわずか1分後にこの試合最大のドラマが待っていた。

【松本凪生】
76分。飯島同様に鳥栖の最終ラインに果敢にプレスをかける松本。そして、松本もまたボールを奪いきる。そして迷うことなく40メートル以上先にあるゴールに向かってシュート。

 ボールは美しい軌道を描いてゴールイン。最高のタイミングで最高のボール奪取とロングシュート。鳥栖の逆転への機運を完全に剝ぎ取るスーパープレーである。これを見られただけで、小瀬まで足を運んだ甲斐があった。本当に痺れる。さすが松本凪生!

 完全メンタル面で優位に立った甲府は、秋田戦で着火した闘志の炎がさらにチーム全体に伝播していく。

 85分には、石川の絶妙なスルーパスが発動。宮崎はハーフウェイラインを越えていない状態で待機しており、オフサイド対象にはならない。そのため、目の前にDFがいない状況で一気に抜け出すことに成功する。

 完全にキーパーと1対1になった宮崎純真だったが、シュートタイミングを逸し、苦しい状態でのループシュートをキーパーに弾かれてゴールに至らず。宮崎としては、ドリブルステップの細かさやボールコントロールがあと一歩。スピードやシュート力など恵まれたアスリート性を生かすための抜け目なさを向上させる必要がありそうだ。現在スタメンを張る鳥海との差はまさにそこであり、なぜスタメンを奪えずにいるのか、もう一度向き合い乗り越えるときにきているのかもしれない。そして、それを乗り越えた宮崎純真の姿を想像すると、、わくわくとぞくぞくが止まらない自分がいる。鳥海と宮崎のポジション争いはどちらにとっても成長を促進する材料に溢れている。

 試合終了に向け、ますます勢いとプレーの質を増していく甲府の選手たち。試合の中でどんどんチーム力が高まっていくのが感じられとても楽しい。プレーに思い切りがある。熱量がある。小瀬劇場で感じたあの熱量が甲府に戻ってきている。

 90分にはこぼれ球の回収から荒木翔の鋭すぎるロングドリブルカウンターが発動。独力で数十メートルを突破してシュートまで持ち込んだ姿は一本の槍のよう。

 最終盤にはレナトをセンターフォワードに上げ、須貝、野澤陸、大和の3バックに変更。レナトがヘトヘトだったため、前線からの追い込みは弱まったものの、DFラインの守備強度を須貝で高め、前線の高さ不足を補う意味で素晴らしい采配だったと思う。

 体を張ってボールをキープし時計の針を進める甲府。鳥栖も最後まであきらめず攻撃を仕掛けてくるが、甲府守備陣の集中も最後まで切れない。体を張り続け、関口がカバーに入ってボールをはね返したところでタイムアップの笛を聞くこととなった。

 天皇杯ベスト8へと駒を進めることに成功した甲府。そして、なによりリーグ戦に向けて、天皇杯のメンバーにも闘志の炎の伝播が起こったことが収穫だ。チーム全体にエネルギーが満ち始めてきている。

 この流れを手放すことなく、突き進んでいこう。週末の水戸戦が楽しみだ。

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