天皇杯2回戦VS環太平洋大学

ー8分ー
 コーナーキックから高校3年生の内藤大和が頭で決めて幸先よく先制に成功する。今シーズン最後の試合になるかもしれないという背水の陣の覚悟で臨んだ内藤にとっても、チームにとっても貴重なゴールが生まれた。

 前半から圧倒したい甲府だったが、ペースを握ったのは環太平洋大学の方だった。甲府はいつものように後方でのパス回しに終始した。ラインが非常に低く、キーパーへのバックパスも、ほぼキーパーへの横パスのようなものが頻発。レナトからのキーパーへのパスは特に多く、枠を外すという基本もあまり意識されていなくて怖いと感じる場面がたくさんあった。さらに、久々の出場となった岡西のキック精度が著しく低く、攻撃の不活性の一因となってしまっていた。

ー29分ー
 宮崎のナイスパスが内藤に通り、チャンスかと思われたが、内藤がボールを失ってしまう。相手のカウンターによってきれいに左サイドを崩されグラウンダーのクロスを入れられると、毛利選手に合わせられ同点。リーグ戦を彷彿とさせるゲーム展開。さらに、昨年の苦杯の記憶がよみがえる。

 ただし、甲府の左サイドの攻撃力は非常に高かった。特に、宮崎純真の突破やシュート、荒木翔の動き出しやクロスは何度も相手の脅威となっていたし、決定的ともいえるシーンを何度も作り出すことができていた。さすがリーグ戦の主力を張っている選手たちだな、と思わせるプレーぶりだった。宮崎はあと一歩のシュートが数多くあった。ここでたくさん外してしまったので、逆にリーグ戦でアジャストしてゴール量産につなげてくれると非常にありがたい。

 一方中山陸と大和優槻の右サイドは、相手の攻撃の質の高さもあったが、守備面で大きく崩される場面が多く、ウィークとなってしまっていた。ただ、中山に関しては、ボールを巧みにキープして相手の股間を通してパスを出したり、荒木への素晴らしいフィードで攻撃を演出したりと攻撃面で光るプレーも見られた。

 後半に入って目立ったのは、レナトのヘディングの強さ。相手が大学生ではあったが、ポジショニングの時点で完全に勝っていて、競るまでもなくボールを跳ね返す場面が多くみられた。ただし、前半にあったビルドアップの選択肢の悪さやフィードが前線と全く合わないなど、まだまだリーグ戦に起用されるには長い時間がかかりそうな印象を受けた。

ー50分ー
 レナトのロングフィードに飯島陸が抜け出す場面があったが、彼にはかつてのアライールのような弾丸フィードを期待しているので、コンディションの向上、戦術理解度の向上とともに、何とか戦力になってほしい。ただ、野澤陸や浦上のフィードも相手の急所を突くものになってきているので、やはり出番が来るのはずいぶん先になりそうである。この後、レナト→キーパー→レナト→キーパー→レナト→相手にパスという地獄絵図を見てなおさらその思いが強くなった。

ー58分ー
 右サイドでパスの息が合わずちぐはぐな攻撃を見せていた甲府だったが、ちぐはぐから一転、松本、内藤とつないで、内藤の絶好の落としから最高のポジションにいた飯島が蹴り込むだけのシュートを見事にゴール左に決め2-1。甲府が勝ちこしに成功する。内藤大和1G1Aである。

ー61分ー
 宮崎純真の一人舞台が開幕。ヘディングでボールを前に弾いて一気に左サイドを駆け上がる宮崎。抜群のスピードで左サイド最奥までドリブルを交えて侵入する。カットインを仕掛けるも一度はボールを失ってしまう。だが、すかさずそれを奪い返し、松本凪生へパス。最終的にゴールへは結び付かなかったものの、宮崎の個の能力の高さをまざまざと見せつけられたプレーであった。

ー70分ー
 右サイドの崩しには松本凪生が絡む。松本のスルーパスから右サイド最奥を陥れると、その折り返しに反応したのは再び内藤大和!3-1と環太平洋大学を突き放す。相手の運動量が落ちてきたこともあって、甲府が主導権を握り相手を押し込む時間が増え始める。だが、Jリーガーが大学生を圧倒するという展開ではなかった。あの男がピッチに登場するまでは。

◆長谷川元希投入◆
 77分に長谷川元希と鳥海芳樹が投入されると、甲府の左サイドは無敵状態に。投入直後に長谷川は左サイドを強引なドリブル突破。3・4人に体を当てられながらも強さとしなやかさをもって相手を全く寄せ付けず格の違いを見せつける。

 左サイドのパス回しも早く細かく緻密なものとなり、大学生に手に負える代物ではなくなっていた。そして長谷川のつくりから荒木あげたクロスをゴールに叩き込んだのは右ウイングバックの位置からファーサイドに走り込んだ中山陸だった。喜びを爆発させ、荒木に抱き着いた中山がしばらく荒木から離れようとしない姿はとても微笑ましかった。宮崎の攻撃力も圧巻だったが、宮崎は例えるならチームがもつ武器としての攻撃力。長谷川の攻撃力は、チームそのもののレベルを3段階高めるような、血肉そのものといった印象。チームの攻撃力の最大値を考えたとき、長谷川→宮崎という交代よりも2人の共存する時間も長く見てみたいと感じた。

 山本英臣が内藤大和に代わって投入され(44→4)3センターの中央へ。右野澤、左レナト、右WB大和、右シャドー中山、トップ鳥海へとポジションを変更する。

 ー90分ー
 5点目の起点もやはり長谷川だった。左サイドで長谷川を中心にゲームを組み立てる甲府。長谷川はいつものようにドリブルでカットインしながら、様々な選択肢を探っていく。選ばれたのは右ペナルティエリア付近まで上がってフリーとなった中山陸。

 長谷川が右足で中山にボールを流すと、迷わず左足一閃。美しい軌道を描くシュートはゴール左隅に突き刺さった。

5-1。

終わってみれば甲府の完勝であった。

普段見られない選手たちの様々なプレーが見られてとてもよかった。
良い面も悪い面もたくさんあったが、大和・飯島・中山のゴールを見られたこと、宮崎の圧倒的なパフォーマンスと荒木の安定したパフォーマンス、さらにそれを数段凌駕していた長谷川元希の凄まじい存在感にワクワクさせられた。

レジェンド山本英臣の復帰も大きい。
この勝利と新しい可能性をもった選手たちの活躍を週末のリーグ戦にいかし、再び連勝街道を走りだせるようにしていきたい。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?