見出し画像

【VFK】VSザスパクサツ群馬(A)7.30~繋続KEIZOKU~

 週末にヴァンフォーレの試合が観られることの嬉しさ。11人の陽性者が出て、けが人もいて、濃厚接触者がいて。13人のエントリー条件すら満たせずに中止となった千葉戦。自分の応援するチームと迷惑をかけてしまったチームの試合だけがない寂しさと申し訳なさをかみしめながら、待ちに待ったリーグ戦がやってきた。

 一体だれがメンバー入りしてくるのか。練習もまともにできていない状況でどれだけ戦えるのか。完全に未知数。勝つことは極めて難しい状況で、その中でも勝ち点1はもってかえりたい。

◆先発メンバー◆
    パライバ
   宮崎   鳥海
小林 山田  長谷川 荒木
 レナト 山本 浦上
     岡西

◆ベンチメンバー◆
小泉 大和 石川 中山 内藤 飯島 三平

◆ゲームプラン◆
 感染者やケガ人も徐々に戻ってきて、なんとか18人を揃えることができたが、全員が試合に出るべきコンディションにあるわけではなく、キックオフからトップギアで試合に臨むための気概や覚悟を生める状況ではない。
 使うべきエネルギーを抑えつつ、体を張るべき場面では張り、後半の最終盤に攻勢をかけて勝つ。現実的なゲームプランはこんな感じになる。それができるかどうか。それすらも困難を極めるだろう。

◆自分探し◆
 どんよりと暗雲が立ち込めるような前半の立ち上がりだった。個人としては動けてもチームとしての連動が遅く、個人の頑張りがボール奪取に繋がらない。対応が後手になり、ラフプレーに繋がる。気持ちに体がついていかない。甲府の選手たちが、甲府のサッカーを探している。その間に群馬の選手たちは傷つき、甲府は失点を喫する。

◆準備されたコーナーキック◆
ー15分ー
 群馬の右サイドからのコーナーキック。ショートコーナーで1本、2本とショートパスをつなぎ、甲府DFをつり出す群馬。ひと工夫が入ったのはここからで、細貝がさらに横パスで甲府の最終ラインのずれを生む。畑尾がダイレクトで送り込んだ低い弾道のボールを岩上が頭でフリックして勝負あり。完全にフリーでゴール前に走り込んだ平松が頭できっちりと押し込んで群馬が先制に成功する。群馬のチームとしての確かな積み上げを感じる素晴らしいゴールだった。

◆起点◆
 先制された甲府はギアが入り始め、群馬は守備意識が高まる。甲府がボールを保持して群馬ががっちりと固めて守る。ビルドアップの起点となるレナトのボールがあまりにも不安定で、左サイドのリズムが生まれない。ヘディングでは無類の強さを見せるレナトだが、持ち味であるはずの左足のキックは、入団以来精彩を欠き続けている。

 そんな中、起点となるのは山本英臣の右足である。正確な右足のロングフィードで左サイド最奥の小林岩魚へしっかりと通すと、宮崎との絡みでコーナーキックを獲得する。右サイドでも浦上が正確なパスをサイドに差し込むことができていて、レナトのキック精度という課題をより浮き彫りにする形となった。

ー20分ー
 左サイドにポジションをうつした荒木、レナト、山本のパス回し。荒木が鋭く前線の宮崎に縦パスを差すと、宮崎が早いタイミングでゴール前にクロス。これが非常に素晴らしいボールで、美しい弧を描きながらゴール前に走り込む鳥海の頭に、わずかに合わず。だが、とても可能性を感じるプレーだった。

◆流れを手繰り寄せるために◆
 ボールを握ることに成功した甲府は、流れを手繰り寄せるために試行錯誤を続ける。WBのポジションチェンジ然り、長谷川の位置取り然り。特に大切なのは、甲府の最大のストロングである長谷川元希の攻撃力を、いかに相手ゴール付近で発揮させるか。流れの悪い時間帯において、長谷川がボールを触る時間は極めて少なかった。そこでリンクマンとして大切な役割を果たしたのが鳥海芳樹だった。

 25分の鳥海が反転から力強いドリブルで前進し、パライバにスルーパスを出したシーンでは、彼の良さが非常に感じられた。ボールを受ける位置、動き出しの鋭さ、キープ力、シンプルな球出し。繋ぎ役として必要な要素を兼ね備える鳥海の存在によって甲府が本来のボール回しと組み立て形を成し始める。そして、この狙いがはまったのが35分の場面となる。

◆長谷川元希の反転シュート◆
 35分、山本英臣からの楔を受けた鳥海が反転して前進。前線の長谷川元希に縦パスを入れると、ここからが長谷川元希の面目躍如。DFを背後において、右足でボールを止め、左足裏でボールを押し出しながら反転。さらに細かく右足左足でボールを操り、シュートコースを作り出すと、左足で鋭いシュートを放つ。惜しくもサイドネットをかすめ、ゴールを奪うことはできなかったが、鳥海の良さと長谷川の凄みが溢れるシュートシーンとなった。

 中盤の底に鳥海という起点を得て、甲府の攻撃が活性化。中央に相手が集中すれば空いたサイドに甲府の最終ラインがロングフィードをサイドに展開。アタッキングサードでのボールの再回収の出足も鋭さを増し、前半終了間際には、完全に甲府がゲームのリズムを支配する。暗雲垂れ込める前半開始当初から、試合中の試行錯誤を経て、前半の間に流れを掌握した甲府。立ち上がりの悪さ、失点は悔やまれるが、非常に苦しいチーム事情の中で徐々に盛り返していくその姿には逞しさが宿っていた。

◆立て続けのチャンス◆
 後半に入っても甲府の攻勢が続く。
ー56分ー
小林のクロスから宮崎のヘディングシュートが櫛引に阻まれ、コーナーキックを得ると、変化をつけてからの長谷川のクロスをパライバが難しい態勢からバックヘッド気味にゴールを狙う。しかし、ボールは惜しくもクロスバーを叩く。さらに畳みかけるように、こぼれ球を小林岩魚が鋭いロングシュート。枠を捉えることはできなかったものの、大きなチャンスの連続。主導権を握れているだけに、この時間帯になんとか同点に追いつきたい。

◆WB宮崎◆
ー61分ー
レナトOUT飯島IN
パライバOUT三平IN
これに伴って基本ポジションが変化する。

      三平
   鳥海    飯島
荒木 長谷川 山田  宮崎
   小林 山本 浦上
      岡西

 流れの中で状況に応じて長谷川と鳥海はポジションを入れ替えながら攻撃を組み立てていく。この交代によって輝きを増したのは宮崎純真だった。相手のマークが外れやすく、前方により広大なスペースのあるウイングバックのポジションで、スピード・ドリブル・クロスという宮崎の強みが発揮された。

ー66分ー
 ボランチ長谷川の組み立てから浦上、飯島と右サイドへ展開。飯島が宮崎へボールを渡すと、宮崎のスーパーなドリブル突破が発動。相対するDFが自分よりも後方に位置どった瞬間に抜群の瞬発力で前進する。遅れて対応したDF山中もスピードが持ち味ですぐに追いつかれるも、宮崎も体の強さで譲らない。肉弾戦にも勝利した宮崎はライン際最深部へ侵攻し三平へクロス。これは城和にカットされてしまうが長らくチームがもてていなかった右サイドの鋭い突破を見せられたことは、スクランブルとはいえ、大きな収穫の一つ。宮崎の最大の魅力であるシュート力を生かすために、より角度の緩い場面においてはクロスではなく無回転シュートという選択肢があってもいい。最終的にゴールを獲れればいいわけで、クロスから決めても、シュートが決まっても、こぼれ球を押し込んでもいい。

 右サイドの制圧に関しては、新加入のフォゲッチに大きな期待が寄せられるが、クロスに特化したフォゲッチ、シュート力のある宮崎というバリエーションをもたせることができる。宮崎にとってはやるべきことが整理される分現状ではウイングバックの方が良さが発揮できるかもしれない。

◆石川投入◆
ー74分ー
 実質的なボランチとしてチームの攻撃の潤滑油として活躍した鳥海に代わって石川俊輝が投入される。コンディション面が心配されるが、現状ボランチは山田・石川・松本の3人が高レベルで遜色ないプレーができている。次の試合も見据えて石川の状態を試合を通じて高めておくことは必要という判断からの投入かもしれない。

◆荒木翔負傷交代◆
ー77分ー
 交代からわずか3分後。キャプテン荒木翔が太もも裏を痛めて、座り込む。活動期間中も体が鈍らないようにかなり体を動かしていたという荒木。その責任感の強さが感じられるエピソードだったが、やらなければいけない意識が休むべきところで休む判断につながらず、怪我を誘発してしまったのであれば残念。少なくとも1カ月は離脱することになってしまうと思うので、小林、須貝、関口に加えてフォゲッチでサイドを回していくことになりそうだ。皮肉なことにフォゲッチの獲得のタイミングが的確ということになりそうである。

ー81分ー
 荒木翔OUT中山陸IN

荒木翔のいた左WBに中山陸が入ることになる。

◆三平和司ボンバーヘッド炸裂◆
 その時は突然訪れる。中山が投入された最初の攻撃の流れからだった。最終ラインの中央に浦上、右に山本を配するなど、いるメンバーで細かいポジションの入れ替えを行って戦局の打開を図る甲府。

 最終ラインでゆっくりとパス交換を行っている。浦上、小林、山田。山田から再び浦上。山田。前方の中山へボールを預け、落として浦上。石川。浦上。ゆっくりと相手の隙を窺う甲府イレブン。そして、浦上から小林岩魚へ。小林がふと顔を上げる。

 このとき小林には、見えていた。最終ラインと駆け引きし、フリーになろうとする三平和司が。怪我をして離脱している間も、チームが活動停止している間も絶え間ないお手入れで、劇的な成長を遂げたボンバーヘッド(アフロヘア)が。クロスを上げる側からすれば、なんと見つけやすい髪型か。ピンポイントストライカーとして味方の視界に捕捉されることの大切さよ。

 相手の意表を突く早いタイミングで上げられた小林の精確なクロス。その落下点には、絶妙の走り出しと高いジャンプで頭一つ+アフロ1つ分抜け出した三平和司が空中で待っていた。バチンと!頭でとらえたボールは完璧な軌道を描いてゴールネットを揺らす。

 1-1。早い時間帯の失点が重くのしかかっていた甲府にとって起死回生の同点弾となった。

◆最終盤◆
 同点に追いついた甲府。追いつかれた群馬。どちらも勝利を目指して相手ゴールに迫る。89分。浦上のファールで与えたフリーキックから石川に競り勝った渡辺広大に頭で落とされ、抜け出した小島が右足を振り抜く。だが、ここは浦上が最後までしっかり寄せており、シュートを枠に飛ばさせない。

 対する甲府は、山本のフィードから宮崎が頭で落として、三平・飯島のあわや、という場面が生まれる。さらにこぼれ球を拾った小林の鋭い差し込みを飯島が収めて長谷川へ。長谷川からボールを受けた山田がサイドに展開。若干ボールが引っ掛かったものの宮崎がボールを回収。カットインして左足一閃もありえた場面だったが、宮崎は三平へのダイレクトクロスを選択した。

 宮崎のクロスがクリアされ、群馬にボールを拾われると左サイドに広大なスペースが広がっている。そこに走り出す山中に、正確なフィードが送り込まれる。山中の怖さはトップスピードの中でダブルタッチを繰り出す技術力の高さ。この場面でも対応する山本を得意の形で抜き去ろうとするも、なんとかファールで阻止。嫌な時間嫌な位置で群馬にフリーキックを与えてしまった。

 ここは相手のファールで事なきをえたが、攻守の切り替えが激しいスリリングな試合最終盤が展開されていった。

 非常にタフなゲーム。厳しいチーム状況。引き分けである意味御の字の試合。だが、勝利を目指し、相手の脅威となる位置で、さらに運動量を上げる男がいた。長谷川元希である。

 浮き球のパスを出すだけでなく、こぼれ球の位置を予測して素早く走り込み、拾い、クロスを打ち込む。得点の可能性をわずかでも上げる!そんな+1のプレーを最終盤になっても怠ることなくやり続けたのである。

そして、両者勝利を目指して戦うも、スコアはそのまま動くことなく1-1で試合は終了。両者勝ち点1を分け合う結果となった。

◆繋ぎ、続ける◆
 秋田戦で形になった吉田VFKの「闘う姿」それをベースに勝利を積み重ねていけると希望を胸に宿した途端にチームを襲った感染症の蔓延。最も苦しい状況で迎えた群馬戦で勝ち点を持ち帰ることができたこと。これは心から称賛したい。勝つことができれば素晴らしいエネルギーをもって次節からの試合に臨むことができただろう。それでも、この勝ち点1は大きい。

 昨年度の宮崎の言葉ではないが、「甲府はまだ死んでない」と、選手たちがその戦いぶりで示してくれたと感じている。

 直近3試合1勝ーーー2分。ーーーの中にあった大きな障害を考えたときこの2試合で負けなかったことの意義。昇格へのわずかな希望を首の皮一枚かもしれない。でも、確かに繋ぐことができた。確かな手ごたえをえた秋田戦の闘志も繋ぐことができた。あとは、コンディションを整え、本来の姿に戻って続けるだけ。

 ピッチで、誰よりも明るくふるまい、みんなの心に光を照らしてくれるあの男のゴールが、プレーオフへそしてその先へとチームが躍進したターニングポイントになったのだと語れる日が来るように。

 8月から反転攻勢といこうじゃないか!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?