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マトリックス新作、個人的感想戦ーー感想言ったら負け?

あけましておめでとう!タカハシタカシです。
2021年のラスト、12月31日に映画『マトリックスリザレクションズ』見て参りました。
いやー、何とも言い難い。少なくとも払った値段分ほど楽しめたとは言えない。そんな感じでした。ですので……こうしてネタにする事で昇華しようという魂胆です。
実際に観てモヤった人には共感してもらえる部分も多いと思いますので暇つぶしに一手よろしくお願いします!
(以下メモ帳からコピペ。元旦の深夜に何やってんだが……。)

・導入


初めに断っておかねばらならいが、僕はオタクでもなければマニアでもない。オタクを名乗れるほど遍く作品を網羅してもなければ、マニアほど前作や関係者らの諸々を承知しているわけでもない。精々が監督が兄弟から姉妹に変わった事くらいしか知らない。それすらだいぶ前に偶々記事で流し読みした程度だが。

要は、だ。
僕が映画を真剣に観たと言ったところで細かな引用やメッセージに気づけていない事もままあるだろうという断りだ。映画の本質は何処か遠くにあったかもしれない。ーーだけどまぁ、許してくれ。この映画をよほど深く理解している諸兄、失敬レディース&ジェントルマンボーイズアンドガールズにLGBTQその他含む各々方に至っては当然、解釈も捉え方も多様なものだ。バイナリーではない世の中だ。そうだろ?


批評も結構。けどノーサンキューだ。

No mean no.そういうことだ。


1.やり口

重ねて断っておくべきことがあった。今回のこれは感想の共有と発信を目的としている。解説でもなければ考察でもない。その要素は完全には否定できないが、少なくとも目指してはいない。

さて、目的に際してのやり口はこうだ。幾つかの立場から映画の感想を述べていく。前提知識や視座、求めている内容如何によって感想も変わる。個々人の内面でも感想は数多あるといった所だ。雑多な感想であったとしても数を突き合わせていけば自ずと解像度も上がるだろうという寸法だ。

紹介する感想の当事者は以下の通りだ。

A.前作履修済みエンジョイ勢男性

B.アクション・SF映画ファンエンジョイ勢男性

C.ジェンダー論を大学で専攻した一般男性


最後にもう一つだけ断らねばならない事があった。この先はネタバレ上等である。完全未視聴の諸兄(ry)については説明が面倒なので考慮しない。



感想A:前作履修済みエンジョイ勢男性の場合

つまらない。

前作までで「カッコいい」と感じた絵が全く感じられなかった。ストーリーも何してるのか、何をしたいのかよく分からないまま進んで退屈なまま終わった。エヴァンゲリオンQを観た時並みに置いてきぼりになった。

最後は2人して空飛んでたけど、これスーパーヒーロー物になったの?世界観が分からん。言ってる単語も分からん。内容が頭に残らん。面倒くさいし多分もう見ない。


感想B: アクション・SF映画ファンエンジョイ勢男性の場合

アクションとSFの金字塔としての『マトリックス』シリーズを期待していたが悪い意味で裏切られた。まずアクション。乱闘や揉み合いは随分あったが、ガンカタ的なスタイリッシュさや超然とした存在感は皆無で敵味方共にテンポが悪い。ネオのフォース染みたテレキネシスも何度も見れば野暮ったく感じる。退屈だった。

SFとしても美味しくはない。世界のリブートとアップデートは前3部作で機械側のテーマであり、今回の続編で順当に踏襲されていた事は評価できる。(といってもある程度安直で突っ込み所多数だ)敵キャラは随分と露悪的でトリニティと観客(特に一部の客層)に刺さる仕様になっている。この辺はまぁ、良い。

対する人間側はどうだろう。なぜネオを探していたのか?ネオを見つけてどうしたいのか?機械vs機械の戦争の動向は?今作のポストアポカリプス的世界観は?全く分からない。

恐らくはワザと描いていないのだろうが、説明不足さに割とうんざりする。今後、スターウォーズの外伝の様に様々な媒体で派生させていくのかもしれないが一観客として面白くはない。

ああ、トリニティを縛っていた規範としての家族が機械側の用意したbotであったという下りについてはかなりイイ。終盤に敵キャラをしばき倒すシーンで相手を蘇生して好き放題できる描写も仮想現実ライクでグッド。これはSFというよりは仕掛け、舞台設定か。


概して、今作は楽しみにしていた要素がすげ変わるか抜け落ちてしまっている。メタな要素はそれなりに面白く見れたし、トリニティが敵キャラをぶちのめすのは溜飲が下がったがその程度といえる。都合の良い部分だけ摘み取れば見れなくもないが単純に旨味に乏しい。そんな映画だった。
語れるだけマシと言われればそうかもしれないが、期待を外したには違いはない。



C. ジェンダー論を大学で専攻した一般男性の場合

大前提として監督を含む各々の属性について知った様な口を叩くつもりは無い。そんなつもりはないのだが、劇中の描写からはそうした属性を含む監督のメンタリティを色濃く感じざるを得ない。

序盤には非常にメタな視点で前作までの「マトリックス」が何だったのかについて語りが入るが、的外れな感想(と言っていいだろう)が方々から投げかけられる。それと共に、「マトリックス」という物語の媒体が作者から権力的に取り上げられそうになる状況が描かれる。同様に作者として登場するネオ、もとい監督の代弁者としてのキアヌはその状況において非常にやつれてしまっている。

ーー必然、こうした描写からは現実世界でギガヒットを飛ばした「マトリックス」に於いても同様の事があったのだろうと連想させられてしまう。この時点で今作は一般的なハリウッド的アクション映画ではなく、作者の心情吐露に比重が大きく置かれた作品であり事が"覚悟"される。もはやアクションもSFも今作に於いては期待するだけ的外れというわけだ。


今作では前作までの暗い画面作りから一変して全体的にカラフルで採光が良い場面が多い。そのせいか、全体的に解放的でミュージカル的な印象が強まっている。楽曲こそ流れないが、あり様としてはメッセージ性ーー自由や解放への賛歌を感じざるをえない。前作までのイメージからの脱却という訳だ。序盤にキアヌ(と監督)に投げかけられた雑多なイメージや認識を振り払い、新生を目指す。題名としての"リザレクション"とも合致すると解釈可能だ。(或いは黒澤映画やブラックレイン、攻殻機動隊辺りのオマージュからの脱却なのかもしれない)


その他に印象的なモノも幾つかの挙げておきたい。例えば鳥の群れ。鳥の群れが合流する映像が複数回挿入され、最終盤にはネオとトリニティが同様の軌道で空を飛ぶ。例えばトイレ。やつれたキアヌが便座に座り込むシーンやモーフィアスとキアヌの顔合わせ場所、ネオとして目覚めたキアヌとスミスが殴り合う場所。何かとトイレを利用している。例えば虹。「空に虹でも描くのか?」終盤、敵キャラが馬鹿にしたように問いかけるが、ネオとトリニティは「良いアイディア」と切り返す。虹といえばLGBTQを表すロゴとして最も有意なものであるし、バイナリー(二元論)へのカウンターとしてとても映える要素だ。当然、監督の在り方との関連性も見出せるだろう。

青い髪が映画「アデル、ブルーは熱い色」を思い出させるとか瑣末な要素はあるが蛇足か。


どの要素を取り上げても社会や監督と関連づけて語る事は可能だろう。メッセージ云々についても引用が容易い。例として鳥の群れからメッセージを抽出してみよう。

鳥といえば自由の象徴だ。覚醒したネオが空を飛ぶことから"覚醒"の象徴ともみれる。群れが合流することへの意味は?ある記事では鳥の群れの動きを"臨界点と相転移"で説明できるとか。(https://wired.jp/2011/11/14/美しすぎるムクドリの群れを科学する/)
最もエネルギー効率が良く、在り方として美しい象徴?付かず離れずがどうのこうのと敵キャラも語っていた気がする。キアヌとティファニー(トリニティ)のすれ違いの象徴に見えなくもない。

鳥の合流といえば、比翼連立が思い出される。男女仲睦まじい様を表す言葉だが、ネオとトリニティの関係性を表す題材としてそれなりに良い線に達している気はする。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/比翼連理/


とまぁ、題材を抽象化して解釈の幅を楽しむには中々見どころの多い作品といえる。もしかするとカルト的な人気が出るかもしれない。知ったかぶって語るには面白いが、どう語っても監督のリザレクションからは逃れられない"無理解"な気もするので腹八分に収めたいところである。そんな映画だ。



いかがだっただろうか?

何言っても叩かれそうなので飽くまで感想としての姿勢を貫いた形とした。いま出せる分の感想は出し切れた気がする。共感してもらえる部分があれば嬉しいのだが。

後半の感想につれて抽象度が上がり、文章量も増えた事が見て取れるだろう。立場を変えながら感想を組み立てていくと新たな発見があることはよくある事で今回もそんな感じだ。映画単品で価格に見合う楽しさを享受出来なかったので遊んでみた。そうした楽しみ方もあるということを発信出来たのであれば満足である。


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