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鉈ヶ岩屋のこと

2022年8月28日。
Iさんは、私の頭にハチマキをぎゅっと巻いた。
「貴子さんもね。」
え・・・という暇もなく固く巻かれたハチマキ。

まさか二年前、
夢にまで出てきたことが現実になるなんて思ってもみなかった。
興奮と嬉しさと不思議さが入り混じっていた。

「鉈ヶ岩」とは、東本願寺を創立した教如上人(1558~1614)が関ヶ原合戦(1600)時に西軍の石田三成軍から追われた際、春日の村人が上人をかくまった場所とされる岩屋である。

その場所は、かつて木製のお堂があったが、長年手入れされず、岩と岩の間には土砂が積もり、お堂は壊れてしまっていた。

そんな寂しげで、荒れ果てた岩屋を目にしたのが2020年11月だった。

綺麗にできるものなら綺麗にしたい。
そう思ったものの、ただ、そこに横たわっていた金色の「南無阿弥陀仏」と書かれたものを登山した仲間と元通りに立ててあげることしかできなかった。
思うだけは簡単だ。それを実行に移すには相当なエネルギーがいる。

その約二年後。

春日出身のKさんが、岩屋の状況を知り「なんとかしたい」と一躍発起。
新しいお堂を奉納されることになった。
故郷を愛し、故郷のためにと精力的に活動されているKさんのエネルギーは本当にすごいと思う。90歳とは思えない。


登られた地域の方とみんなで岩屋の中の土を出した。
竹で編まれたカゴに入れた土は重くて、どっと足にきた。

岩屋の中を綺麗にする作業の仲間に入れて頂けたこと。本当に貴重でありがたい経験だった。

かつて、地域の方の信仰の場所でもあり、大切にされていた場所が、また元のように人の手が入れられ、美しい場所に戻ったこと。

奇跡のようなことだと思う。

雪が溶けたら、また、鉈ヶ岩屋を訪れたいな。


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