鮨屋での基本的な流れとお作法について~高須賀の美食入門~

続いて日本における高額料理の代名詞でもある鮨屋へとうつります。入口から緊張感漂う高級鮨屋ですが、特段難しいテーブルマナーはありません。

かつては頑固な職人が多かったようで随分と緊張しながら食事をしなくてはいけなかったみたいですが、現在ではそういう店は稀です。せっかく高い金を出して来たのですから、めったいに味わえない高級鮨屋の雰囲気も含めて大いに楽しみましょう。

鮨屋での基本的な流れ

席に座ってから聞かれるのは基本的には2つだけです。

・飲み物は何にするのか(お茶かお酒かの選択。別に酒を飲まなくても大丈夫)

・つまみから始めるか、握りからはじめるか。

これを選び終わったら、あとは職人さんに全てを任せましょう。

鮨屋のメニューについて

回転すし屋と違って、現在の高級鮨屋は自分で食べたいネタを指定して食べるスタイルを採用している店は稀です(この自分で選ぶスタイルは「お好み」と呼ばれていますが、現在でも「お好み」を採用しているのは下北沢・小笹ぐらいです)

普通は鮨職人のオススメをいただく「おまかせ」か、予め料金が決められた「おきまり」のどちらかを選ぶ事が多いです(店によっては初めから「おまかせ」一本の事もあります)

「おまかせ」ですが、予算を含めて全て鮨職人に任せてしまう方式と初めから予算を指定してその中でやりくりしてもらう方法の2つがあります。つまみの有り無しや苦手なものを伝えたら、後は本当に「おまかせ」なわけです。

一方店によってはメニュー表が用意されている事もあります。これを業界では「おきまり」と呼んでおり、松・竹・梅コースのようにあらかじめ値段が設定されています。会計の時にドキドキしたくない人はこちらを選ぶとよいでしょう。「おきまり」は大体握りのみのパターンが多いです。つまみが欲しい人は「おきまり」に加えて何か食べたいものを伝えればいいかと思います。

いずれを選んだ場合も、一通り出し終わったら職人さんが「これで一通りになりますが、何か追加されますか?」と聞いてきてくれます。お腹と財布に余裕があるなら追加すればいいし、そうでないなら大丈夫ですとでも言ってお会計にうつりましょう。

だいたい幾らぐらい用意すればいいのか?

予算ですが握りだけならばランチで五千円~一万円。ディナーでもせいぜい一万五千円程度。つまみ~握りまで一通り頂いたとしたら、大体のお店で二万円程度が上限と思っておいて間違いないです。アワビやらウニやら大トロやらの高額ネタを追加でたくさん頼んだりしたらこの限りではありませんが。

まあ現代はお店のホームページや食べログとかである程度の予算は把握できますから、気になったら事前に調べれば大体はわかります。

食べ方

つまみではお刺身や魚を煮たり焼いたりしたものが出されます。基本的には普通に食べてもらって結構。特別な食べ方をして欲しい場合は、むこうから指定してきます。まあ食べ方がわからなかったらその都度聞けば問題ありません。

注意した方がいい事は醤油皿にワサビを溶かさない事ぐらいでしょうか。わさびの使い方は、適量を箸でつまんで刺身の上にちょこっと載せて食べるのが好ましいとされています。すりたてのわさびは家庭で使われる練りワサビと違って香りが命であり、醤油に溶かして香りを飛ばすのはタブーとされています。

握りですが回転すし屋と違い、あらかじめ味付けがなされて出されます。なので自分で醤油をつけなおさずにそのまま口に運べばOKです。

塗られるものは二種類あります。一つは煮切りと呼ばれる醤油みたいな塩っぱいもので、これは醤油に酒とみりんを加えて煮立てて作られます。もう一つは煮つめと呼ばれるアナゴなどにつけて出される甘いやつで、これは魚介類を煮込んだ煮汁に醤油、みりん、砂糖、酒を加えて再び煮立てて作られます。店により微妙にこだわりがあり、特に煮つめは結構味に違いがあります。

なお握りの食べ方ですが、寿司を180度ひっくり返してタネを舌の上に載せて食べる方法と、出された形のままシャリを舌の上に載せて食べる方法の二つがあります。いろいろ調べましたがどちらの方式が正しいといったものはないようですので、食べ方は各人の好き好きにすればよいでしょう(個人的には硬いネタはひっくり返して、柔らかいネタはそのままの形で食べてます)あと手でつまんで食べるのか、箸で食べるのかもどちらでもかまいません。

あと一部の自称食通が「寿司は握りたてが一番うまいから握られたらすぐに食え」と言っていますが、正直食べるスピードは自分の好きなペースで構わないと思います。そりゃおしゃべりに集中してずっと出された寿司を放置するのはアレですが、ポンポンだされたのを食べ続けるのもわんこそばみたいで微妙な感じがします。まあその辺の空気の読みあいもカウンターで職人と対面して飯を食う醍醐味なので、楽しめばいいかと思います。

鮨屋での過ごし方

忙しそうでなければ、職人さんに適度に話題を投げかけてみましょう。例えば「この魚の取れた場所はどこですか」なんかが無難でしょうか(こういう事を聞かれるのを嫌がる職人もいるので難しくはあるのですが)後で説明しますが魚には旬があり、さらにどこ産のものかでかなり味が変わる場合もあります(魚に限った話ではありませんが)。寿司屋に行く前に勉強して、いろいろ質問しながら食べているとそのうち結構鮨ネタについて詳しくなれます。

別に寿司に限らず、ほかの事でもいいでしょう。休日はどうしているのかとか、どういうお店で修行したのかとか、どういうお店に通っているのかなど。まあお話しはあくまで食事の潤滑油みたいなものなので、それに熱中しすぎてしまうのもなんですが。

ただ鮨屋って料理だけじゃなくて職人の人柄も楽しむ場所ではあると思いますので適切な会話がないのはちょっと寂しい。やっぱり行きつけの店の決定要素って、味+αであり、そのαが職人との会話の相性な気はします。

あ、言い忘れていましたがガリとお茶は無料でお代わり自由です。

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