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おっさんずラブ(劇場版含む)の感想再録

!注意!
こちらは劇場版おっさんずラブを観賞したあと、当時の感想です。
続編放送があったため「こっちにも写したいなあ~」となったので持ってきました。誤字や表現など直したいところは修正していますが、私のTwitterのアカウントと同期しているふせったーにもほぼ同じものがあります。あらかじめご了承ください。



2019/9/30 10:43

おっさんずラブの牧と春田の話をしますね。主に家庭環境とか社会性とか。
牧のターザンロープ、背後に日向紀久の幻覚をみた。


(以下追記)


映画はエンタメジェットコースターだったのでずっと忙しくて面白かった。そしてキャラクターの一貫性というか、スタッフとキャストの力がすごくって本当にハイカロリーでしたね。痩せるかと思った。

独断と偏見で書いていきます。
エンタメの話は一切ないと思ってください。


「春田は家族がほしい」

 前々から感じるとこのある春田の家庭環境。一体いつから母子家庭なのかはわからないがさておき、母との関係性について。

 母は独立した女性である。おそらく仕事は充実しており、家庭も自分で切り盛りしてめちゃくちゃパワフルな人だと思う。職場かどうかはわからないが家庭の外にも自分の居場所があったと思う。そして状況を察せられないところはほんとに春田創一の親だな…としみじみ思う。そういう突き抜けたところが母の強いところだし、やらねばならないことにはバリバリ取り組む人。

 そんな母を春田創一は愛しているし、母も息子を愛している。息子もおそらく友達が多く、学校やサークルなど家庭以外の場所に自分の居場所を作れる力を持っていた。不器用だけど素直で、状況察しができないけど他人を蔑んだりしないだろうし。

 この親子は「私たちはそれぞれの人生がある」というのをもうずっと続けてきた関係性のように見えた。それが前提にある。ある日母は出ていってしまうが、別には息子のことが嫌いになったからではない。これまで通り別々の人生を歩んでいる親子が家を離れることを決めただけだ。破綻ではない、それぞれ家庭外に心の置き所があるから。まあ「住むから」って言って突然戻ってくるところとか本当に見通しが立てられないところを持ちながらも彼女が家庭を運営できるのは本当にすごいことのように思えてきたぞ。

 多分母は必要になればなんでもする人で、息子も一人になれば自然とやっていけるだろうという見立ての甘さというか、世界の狭さがある。出来る人あるある「出来るようになるように支え、教える」より「自分でやる」方がコストはかからないのだ。



「中流階級出身、ゲイコミュニティで生きて来た牧」

 牧は先祖代々あんまり貧困層になったことがなさそうで、おじいちゃん、お父さん頑張って働いたぞ、みたいな家に暮らしている。コミュニケーションをとりにくいけどわかりやすい父、子を見て個人として接することの出来る母、人のことを信用している妹、なんともまあ経済的にも中流かその上、家族関係も良好な家庭。奨学金借りてなさそう。父がうまく思いを伝えられなくても母や牧が察し、受け流しながらやって来たんだろうなあ。あんな感じなのに夫婦仲が良好なのは精神優位的なものでない対等な関係性だからだと思う。お互いのことめっちゃ好きそうだし。

 インターン?かなにかでいきなり武川と接触し性的な関係を持てる牧はかなりゲイコミュニティに属していたのではないかと思っている。思いは二の次でも、第一にルールが守れるならセックスができる環境にそれなりにいた。牧はそれにやさぐれたりはしない。牧のいちばん安心できる環境は育ってきた家庭だから。いざとなれば男の家に転がり込めるし、だめだったら実家に帰ってこられる。居場所が壊れない限り生きていけるし、壊れるとか思ってないかもしれない。

 頭がよくて家族関係も良好だから家事も仕事も出来る無敵のハイスペックボーイ。あんな熱烈なプロポーズを受けてもどこか信じきろうとしない。多分牧は人のことを信じられる人間だけど、春田のことをまだ牧の両親や家族に肩を並べられるくらいのところに行けていないのがつらい。春田はとっくに家族と思っているけど。



「齟齬、コミュニケーションの限界」

 牧は「言わなくても察してほしい」人で、春田は対照的に「言ってくれなきゃわからない人」。そりゃあまあ、合わないわな…と思うが、私は違う社会性を持つ人間が共に生きていくことに旗を振って応援したい人間なので劇中本当に応援していた。お互いの社会性で通そうとするのはお互いの甘えなのでどっちが正しいとかそういうことはない。あとは二人が決めていかねばならない。

 春田は多分、家族に「さみしい」と言えない人間で、なんなら「おれは能天気で明るさが取り柄のやつだから」と心のどこかで思っていそう。自分の痛みに鈍感な人間だと思う。上司にストーカーされても盗撮されても後輩にキスされても生きていける鈍さ。素直で周りの状況を察せられないこと、客観的にみられないこと、苦しみながらもすべてを明るい社会性で乗りきってきた。居場所を見つけて楽しく生きて来た。母との愛情も確かにあるが、さみしいと言えるのは多分友達とか、恩師とか、そういった存在だった。

 牧は自分の痛みに敏感で怒れる人だなと思えたのがよかった。言葉やスキンシップの愛情表現はしないけど、他の人に春田の身体が触られるとマジギレしてたの本当によかった。春田からすれば「なにキレてんだよ牧ぃ~!」みたいなことも彼はちゃんと怒るのだ。ありがとう牧。大好き。

 「好きの気持ちもさみしいの気持ちも思ってます、それくらいわかれバーカ」みたいなところはまあ傲慢というか、若さかなと思うので今後のことは脳内で好きに展開するとして、私はこの牧の弱さをすっかり忘れていたなぁと劇場で思っていた。原因は絶対最終回。あんな「世界で最強のふたり」みたいな映像を見せつけられたからだと思う。まあ最終回なのでいいけど。ふたりともすっかりスパダリになったような幻想にとらわれていた。否、ふたりは未熟な人間で、仕事に疲れるしお腹も空くし病気にもなるんだった。生きているから。

 そんなわけで脳内で今後の春田と牧の物語を展開するときは題名を「ぼくたちはスパダリになれない」に設定することにした。これは自戒です。人は皆不完全なのです。



「子供がすき」

 この台詞を聞いたときの感情の洪水はすごかった。ハリケーン、ツイスター、ミラーフォース、激流葬どころではない。

 私は劇中三回泣いた記憶があるのですが本当にこれはすごかった。春田は「言ってくれなきゃわからないのに」と思っているけど、結局は相手が言うのを待っていたし(それに気づかせてくれたジャスティス本当にありがとう、君はナイスガイ)。

 個人的な話になるが、ドラマの最終回で私は家に一人でいたことを良しとし叫びながら泣きじゃくっていた。「牧おめでとう」「春田おめでとう」「みんながんばった」「間に合ってよかった」「私も好きな人と結婚したい」等々。お互いちゃんと思いあっていることを確認した最終回だったけど、映画ではどう生きていきたいのかをなにも共有していないことを取り上げた。案の定似合わないのにのせられて指輪を買う春田、背負い込みすぎな牧、やさぐれる春田、意地をはる牧、あかん…このスパイラル…危険…というシーンとエンタメショーと交互にガツガツ入ってくる。このカップルの危うさに目が覚める思いだった。さっきもこの話した?まあいいや。

 そのふたりが、よくわからない状況ではあったけど、思いを聞き合うことができたのが、まあ重たい話題。子供、「好き」って言えちゃうんだなあ春田。すごいなあ。牧はきっと考えもしなかったかもしれないし、子供と関わる春田をみて「やっぱりノンケはノンケか」みたいな心凍らすこと考えていたかもしれない。そこはさすが春田創一、「牧」と「家族」になりたい。その上で、本音も伝える。あんなに言語化苦手な春田と牧がそれを共有した瞬間があったこと、私は一生忘れたくない。法律上結婚できないこととか、なんかさー…………すごいよね。わたしが言いたいのは切なさとかじゃなくてこの現状にリンクする生きづらさですよ。ジャスティスをそのまま受け入れたあんな素敵な会社のあるあの世界でも同性婚できねえのかよ信じられねえ。うける。うけない。ふざけてやがる。



言いたいことは大体書いてしまった。

書きながら思ったんだけど黒澤部長、春田を育てたい気持ちが強すぎでは。そのお陰である程度自立できたんだけども。あれが恋愛感情かと言われればこの世は多様性に満ち溢れているので「はあ…そうですか…」しか言えないけど親としての気持ちが強そうだよなあ。そう思うと黒澤部長も家族がほしかったんかなぁ。なぁ…。あと武川さんは胃袋で掴まれるタイプなんだなと勝手に思った。黒澤部長のこれからの人生、家族の方は麿に、パートナーの方は武川さんが担う感じになっていたのも面白かった。麿はどんどんかっこよくなっていった。大好き。マイマイ、大好き。鉄平にい、大好き。ちづちゃん、応援してる、大好き。


なんだか大好きで溢れてしまったけど言いたいことはかけた気がする。楽しかった。

ゆえに次回作の話は一切しない、ということが私の回答です。

ここまで読んでくれてありがとうございました!


【ついったーからの追記】
後から改めて思ったこと。
春田がノンケの世界に戻ったなら、自分はゲイコミュニティに戻ると思ってそうなところ、残酷だ。まあ簡単には乗り越えられないしそれができない牧の気持ちが最終回だったのだけれども。人間関係を足算引算で考えるのは牧の弱さなんだろうな。結局めっちゃ傷ついてるし。

牧は精神的に、家庭からもゲイの世界からも出てきてはいなかった。がんばってほしい。みんなで。



【追記】
当時は空港でのパラレル続編が決定していたので締めの言葉がこんな感じになっています。
もちろん現在も一切視聴しておりません。


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