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吾輩は犬である #26

吾輩は犬である。この家にやってきて、もう十年になる。朝起きて、のそのそとベッドから抜け出し、散歩をし、朝食を食べ、ばたばたと出かける家族を見送り、お昼は窓の向こうの景色などを眺めながらソファでうたた寝し、夕方ごろ家族が帰ってくるとたいへん元気よく出迎え、いっしょに夜ご飯を食べ、お酒を飲んで陽気になったひとたちに人間用のご飯をもらったり、お腹を触らせてあげたり、写真を撮らせてあげたり、愚痴などを聞いてあげたりしながら夜を過ごし、ねむくなったら「もうねむろうよ」という表情で訴え、家族と共に寝室のベッドへ戻り、たまに寝言などを言いながら、ねむる。そんな毎日を続けてきて、もう十年になる。家族の暮らしにおいて、犬は実務的にまったくの役立たずだと自覚しているのだが、どうやら最近「精神的支柱」などと呼ばれているらしい。吾輩は犬である。「精神的支柱犬」という役割は、あんがい好きだ。おはようございます。

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